福原と石川の「フォー・ザ・チーム」 出会いから10年目の世界卓球団体戦

月刊『卓球王国』

モスクワ大会を境に変化した立場

初めて言葉を交わしてから10年。福原(左)と石川はマレーシアで行われる世界選手権団体戦で頂点を目指す 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 福原愛(ANA)と石川佳純(全農)。

 今や卓球日本女子チームの両輪として、押しも押されぬ2人が初めて会話を交わしたのは、2006年のアジアジュニア選手権の時だ。「佳純ちゃんは(代表の)ユニホームを忘れて、私のを着てました(笑)」。かつて福原はインタビューで、4歳年下の石川との出会いを語っている。かくいう福原も、小学生で初めてワールドツアーに出場した時、卓球場の靴箱から自分の右靴と先輩選手の右靴を持ってきてしまい、卓球シューズの代わりにバスケットボールシューズを買ってもらってプレーしたという。大物とはかくのごとし。

 そして今年。マレーシアの首都クアラルンプールで行われる世界選手権団体戦で、福原と石川は頂点を目指す戦いに臨む。

 前回の14年東京大会では、福原を故障で欠きながら、31年ぶりの決勝進出。福原は「東京大会に出られなかったことは今でもショック。その悔しさを今大会にぶつけたい」と例年にも増して気合いが入っている。

 福原と石川が初めて世界選手権団体戦を共に戦ったのは、08年広州大会。将来性を買われて代表入りした15歳の石川に対し、福原はすでにチームの大黒柱。10年のモスクワ大会でも、その構図に大きな変化はなかった。5番ラストの勝負所に起用され、激戦を制して日本にメダルをもたらしたのは福原だ。

 しかし、モスクワ大会を境に、2人の「天才少女」を取り巻く状況は変化していく。ロンドン五輪の出場権をつかみ取ることを心に誓った石川は、国際大会に積極的に参戦。世界ランキングを急激に上げ、それまでの福原2世という肩書きを脱し、福原と対等な立場のライバルとなっていく。

最大のライバルだからこそ頼もしい

2人の対戦は互いの成長を知るバロメーターでもある。最大のライバルだからこそチームメートになった時は、その存在が頼もしい 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2人の対戦は、互いの成長を知るバロメーターでもあった。13年1月の全日本選手権で2連覇を飾った福原は、決勝での石川戦を振り返り、「佳純ちゃんと試合をするのは嫌じゃない。勝っても負けても自分がどれだけの状態なのかを測れるし、自分のやっている練習が正しいかどうかを測れる」と語っている。同等の実力を持つ相手と認めているからこその発言だ。

 昨年、熾烈(しれつ)を極めたリオデジャネイロ五輪の選考レースを戦ううえでは、互いの対策練習も十分に積んだ。特に、ワールドツアーで福原に3連勝した石川のプレーは、入念な「福原対策」を感じさせた。共に多くのスポンサーと契約を結び、コーチや練習パートナー、フィジカルトレーナーまで含めた「チーム福原」「チーム石川」を結成して、強化を進めてきた2人。両陣営の散らす火花は、決して小さくない。

 そして、最大のライバルであるからこそ、団体戦でチームメートになった時は、これほど頼もしい存在はない。

 福原の2大会ぶりの世界選手権団体戦出場について、感想を求められた石川は、開口一番「やっぱり心強いですね」と語った。「仲良し集団」ではなくとも、団体戦になればチームの勝利のために全力を尽くし、「フォー・ザ・チーム」に徹する。そんな2人の姿勢は、日本選手特有のメンタリティーと言えるかもしれない。一部のヨーロッパ選手には、チームのことはお構いなしで、すぐに試合を捨てたり、ベンチでふてくされる選手もいる。日本選手は決してそういうことはしない。

「試合する時は1人ですけど、団体戦では応援やベンチの雰囲気が、必ずプレーにつながってくる。ベンチを盛り上げていくことができれば、プレーする選手のパフォーマンスは絶対に上がります。応援だったり、声を掛け合うことだったり、ベンチのチームワークはすごく大事なんです」

 世界選手権団体戦を直前に控えた2月22日の公開練習で、石川はそう語っている。

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