森友哉、高卒3年目の再出発 真の“打てる捕手”へ肥やしの1年に

沢井史

345日ぶりのマスクは散々な結果に……

昨年は主に指名打者としてレギュラーの座をつかんだ森。今年は“打てる捕手”としてのレベルアップを目指す 【写真は共同】

 何度も首をかしげていた。

 2月14日。チームで初めて行われた紅白戦でのことだ。

 プロ3年目となる森友哉がこの日「3番・捕手」として345日ぶりにマスクを被った。先発投手は高卒2年目の高橋光成。3年前にU−18日本代表でもバッテリーを組んだ相手だ。

 3回まではストレートと高橋光が得意とするフォークのコンビネーションで無安打、4奪三振と好リードを見せていた。だが、4回に斉藤彰吾のレフトへの大きな当たりが強風に乗ってホームランとなると、そこからバッテリーのリズムは徐々に崩れていった。

 次打者の浅村栄斗が二塁手のエラーで出塁すると、変化球をはじいたすきに二塁進塁を許した。その後のバント処理でも目の前に飛んだ打球を高橋光とお見合いして、さらにピンチを広げてしまう。そこから再びこの日吹き荒れた強風の影響で捕手へのファウルフライを追いかけたものの目測を誤ってファウルとなり、直後にタイムリーヒットを浴びた。

 結局、この回だけで計7失点。盗塁も2個許すなど、精彩を欠いた。5回からは指名打者として試合に出場したが、打つ方でも3打数無安打。久しぶりに捕手として出場したゲームが散々の内容となってしまった。

「捕手・森友哉」へのいら立ち

 高校野球ファンからしてみれば、この日の森の姿は想像がつかないだろう。大阪桐蔭高では2年春から4度、甲子園に出場。2年時はエース藤浪晋太郎(現阪神)の女房役として春夏連覇も経験している。3年時も主将として甲子園に出場し、日本代表として2度日の丸を背負った。まさしく高校野球界のスターだった。

 ドラフト1位で埼玉西武に入団してからも、その光を失うことはなかった。1年目のシーズンは7月27日に1軍に初昇格すると、30日のオリックス戦の8回から初出場。9回に巡ってきた初打席で安打を放った。翌日のオリックス戦でもヒットを放ち、29年ぶりという高卒新人のプロ初打席からの2打席連続安打をマーク。さらに8月には3試合連続本塁打を放つなど、打席に立つたびに輝きを増していった。2年目だった昨季は主にDHで試合に出場。138試合で17本塁打、68打点を挙げるなど、文句なしの数字を残した。

 だが、やはり“本業”についてはどうなのか、気になるファンも多いはずだ。3年目となる今季は捕手としての腕を磨くため、キャンプイン前から準備はしてきたつもりだった。

「去年のシーズン前はほとんど体を動かさずキャンプから苦労したので、今年はお正月からしっかり体は動かしてきました。当たり前のことだとは思いますが、やれることはやってきたつもりです」(本人)

 昨季は打撃に専念できたから数字が残せた……、と思われるかもしれない。だが、今年はチーム事情なども踏まえると、捕手として1本立ちしてほしいという首脳陣からの期待も大きい。そんな熱い空気をよそに、マスク越しの森の表情はどこか不安にさいなまれているようにも見えた。紅白戦前の午前ブルペンでは、エース・岸孝之のボールを受けた後、森はこうつぶやいていた。

「やっぱりプロのボールを受けるのは難しいですね。どれだけ受けていっても自分に納得できなくて」

 自分自身にいら立ちを覚えているような言い方にも受け取れた。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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