JFAの新プログラム「JYD」とは? みんなで日本のサッカーを強くするために

平野貴也

日本を強くするためにやれること

日本サッカー界の裾野を広げるための新プログラム「JYD」が立ち上げられた 【スポーツナビ】

 日本サッカー界の裾野を広げるための新プログラム「JYD」(詳しくは後述)とは何か。概要を紹介する前に、まずは、アンバサダーの1人に就任した元サッカー日本代表MF北澤豪さんのメッセージを紹介したい。

「この記事を読んでいる人たちの存在が大事になってくる。みんな日本のサッカーを強くしたいと思っているはずだから、みんなでやろうという呼び掛けだということを知ってほしい。日本代表が負けた時に『何をやっているんだ』と言ってもいい。でも、その時に自分なりのアイデアを持っている人が増えることが大事。それが、日本のサッカーが文化というものに近付く道。誰でもサッカーの話ができる国にならないと、日本は世界のトップ10に入れない。

 トップである代表チームを強化することは当然だけれど、裾野のレベルも上げないといけない。クラブワールドカップで広島が3位になった。でも、サポーターの数では、国内開催なのに南米のリーベルプレートに負けた。サッカーを観戦して楽しんでいる人、たまにでもサッカーやフットサルを楽しんでいる人、君たちは、みんな仲間。君たちにも日本を強くするためにやれることがあるんだ。みんなで強くしよう」

 みんなで日本のサッカーを強くする――。一体、どうやって?

 日本サッカー協会(JFA)は12月22日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、サッカーの普及や次世代選手の育成推進を目的とした新プログラム「JFA Youth & Development Programme(略称JYD)」を発表した。個別に事業運営を行っていた国内競技会やトレセン活動、指導者養成事業、JFAアカデミーの活動を一手にまとめて充実を図るもの……なのだが、かしこまった説明は、分かりにくい。

 まず、国内競技会に関する部分だけを見てみると、スポンサーがつきにくい大会も含めて包括的な協賛・支援を得ることに成功し、その収入を大会のグレードアップや選手・指導者の養成に使う形が整備されたと言った方が分かりやすいだろう。天皇杯や高円宮杯U−18サッカーリーグ、全日本大学女子サッカー選手権大会、全日本フットサル選手権大会、全国ビーチサッカー大会など24の大会が共通のスポンサーによって支えられることになった。

大会の価値を高める投資が行われるようになる

 プログラムを手掛けた1人であるJFAマーケティング部部長代理の斎藤聡氏は、大会サポート面での狙いを説明する。

「構想が始まったのは2年ほど前。当時、JFAが中長期で目指す姿と現状に少なからずギャップがあり、それを解決する方法をあらゆる角度から検討しました。その中で、大会数や事業内容を大きく変えるプログラムではなく、まずはそれぞれの大会にもう少し予算をつけられるようにしようと考えました。

 例えば、シニア大会には今までスポンサーがついていなかったため、すべてを運営側が用意していましたが、これからは、運営スタッフのジャケットや大会使用球が支給されるとか、会場に看板が出て華やかになるとか、この大会を目指したいと思う人が増えるような、大会の価値を高める投資が行われるようになります」

 年明けの1月3日〜7日に行われた全日本女子ユース(U−18)サッカー選手権大会から、その変化は見られることとなった。特に、アマチュア選手が参加している大会が対象となっているのが、ポイントだ。今までスポンサーがつきにくかった大会のサポートを手厚くすることは、アマチュア選手のモチベーションを高める狙いがある。

サッカーファミリー1000万人に向けて

「JFA 2005年宣言」の中で、日本サッカー協会は2050年までに達成すべき2つの目標を掲げている 【スポーツナビ】

 日本サッカー協会は「JFA 2005年宣言」の中で、次の目標を掲げている。

2050年までに、すべての人々と喜びを分かちあうために、ふたつの目標を達成する。1.サッカーを愛する仲間=サッカーファミリーが1000万人になる。
2.FIFAワールドカップを日本で開催し、日本代表チームはその大会で優勝チームとなる。

 今回、JFAが新たな動きを見せたのは、主に1つ目の目標に関するものだ。日本代表に憧れる数多くのサッカー少年少女は、やがて競争の中で淘汰(とうた)されていく。夢との距離を知り、どこかで諦めることになる選手がほとんどだ。社会人になってもサッカーを続けている選手は、ほんの一握りとなる。

 しかし、憧れるものが日本代表やプロだけでないとしたら、どうだろうか。例えば、全国高校サッカー選手権は、中学生の時期にプロにはなれそうにないと思った選手でも、出場して活躍したいと思える大会だ。数ある注目されにくかった大会が、少しでも日の目を見るようになれば、国内の“サッカー選手”は競技を続けるようになる可能性が出てくる。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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