またも速攻KO劇を見せた井上尚弥 長いブランクで体得した“新たな武器”
ガードの上からでもダウンを奪う
1年前と同様2RKOで初防衛に成功した井上尚弥 【写真:ロイター/アフロ】
WBO世界スーパー・フライ級王者の井上尚弥(大橋)は、29日に東京・有明コロシアムで同級1位のワルリト・パレナス(フィリピン)を2ラウンド1分20秒TKOで葬り、初防衛に成功した。昨年末、王者のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)を破ってベルトを奪った試合も2ラウンドでKO勝ち。内容面でも、相手のガードの上から強烈な右ストレートを打ち込んでダメージを与えるという同じ展開を見せた。
1ラウンド、開始早々に「相手はハードパンチャーなので、勢い付かせないようにまずは止めようと思った」と鋭いステップインから4連打のコンビネーションを見せ、さらに左のジャブというよりはストレートのような打ち込みで挑戦者の顔を何度も弾いた。速くて強い左ジャブが、相手との格の違いを示していた。「まともに当たったのはリードだけ。でも、ゴツ、ゴツと当たって、効くなと思った」と井上自身も手ごたえを得ていた。
そして、様子見が終わった2ラウンド、前に出てプレッシャーをかけようとしたパレナスをステップワークであっさりとかわして力強いリードブローで反撃。さらに左フックからワンツーを打ち込み、ガードを固めた相手に左右の強打を見舞うと、右ストレートをブロックの上からたたき込んでダウンを奪った。
さらに、立ち上がったパレナスに対して圧力をかけ、左フックからの連打で2度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。
「ジャブでダウンが取れる感じ」
右の拳が使えなかった分、左の強化をおこなったことで「ジャブでダウンがとれるんじゃないか」と攻撃のバリエーションを広げた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
その間に徹底的に鍛えた左が新たな武器だ。進化した点を聞かれると「やっぱり、左のコンビネーション。右はまともに一発も当たっていない。当たっていたとしても、ガードの上。左のパンチで効かせた。打っている感覚としては、ジャブでダウンが取れるんじゃないかという感じ。コンビネーションもスムーズに出たし、(左のパンチを練習したことで)多彩さと本番でしっかり出し切れるというところが違う」と話した。
右に関しては、打ちどころに気を使いながら打っていたという。ガードの上から強烈な右。隙間からは、スピーディーな左。世界ランク1位の指名挑戦者があっという間にキャンバスをなめたのも無理はない。元々、フットワークによる距離のコントロールがうまく、バリエーション豊富なブローを持つ井上は長期戦でじっくりと相手を攻略することができるタイプだが、展開を短縮してKOに結び付ける力を身につけつつあるように映る。2戦連続の瞬殺KOは見事だが、さらに強い相手との対戦が期待される。
ナルバエスとの再戦、“最強王者”への挑戦も
2016年は4月に防衛戦を行う予定。さらにその先には海外進出なども見えてくる 【田栗かおる】
試合後のリング上で「誰からの挑戦も受けるし、ファンの皆さんが望む試合をしていきたい」と話した井上は、全階級を通じて最強とも言われるWBC世界フライ級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との対戦も期待されている。
次戦は未定だが、大橋秀行会長は、来春4月頃に国内で防衛戦を行う可能性が高いことを明かした。前王者ナルバエスと再戦する可能性もあるという。2度目の防衛に成功すれば、ボクシングの本場である米国・ラスベガスへの進出プランも現実味を帯びて来る。強烈な右と、力を増した左を携え、2016年は階級や国を超えて名を轟かせる“スーパーチャンピオン”への道のりを進む1年となる。
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