男女セブンズはリオでどこまでいく? 両ヘッドコーチが語る現実と可能性
11月の五輪予選でリオ行きを決めた女子代表 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
五輪切符獲得の裏側
時折、冗談を交えながら五輪切符獲得の裏側を語った瀬川HC 【スポーツナビ】
女子は11月29日に秩父宮ラグビー場で行われた日本大会で出場権を獲得した。男子と異なり、なかなか秩父宮でプレーできない女子代表だが、男子の試合開催日にエキシビジョンマッチとしてオランダ代表と対戦するなど、会場に慣れるための準備も怠っていなかった。また、女子は年間約240日の合宿を行い、技術、体力の向上に努めた。選手たちの熱心さについては「子どものときから続けている選手は、本当にうれしくて仕方がなさそうに練習を続け、他競技からの選手はもっと自分たちはボールを触って、もっと練習しないとついていけないという(意識が)根底にはあります」と浅見HCは述べ、飽くなき向上心があったことを明かした。
タックル専門コーチが発見した弱点
練習や試合の動画を交えながら女子チームの進化を解説した浅見HC 【スポーツナビ】
この傾向は海外のチームと比べると異なっており、世界ランキング1位のフィジーは「90%近くがブレークダウンを作らずにトライを取っていて、パスの回数も3回以内でのトライが一番多いです」(瀬川HC)という。だが、瀬川HCは「勝つには粘り勝ちしかありません。アタックもディフェンスも粘り強くして、最終的には接戦を制したいです」と、“ジャパンウェイ”の方針を述べた。
浅見HCは練習や試合の映像を披露した。女子は課題のタックルを強化すべくレスリング出身のコーチを招き、宿舎などでも強化に取り組んだという。さらにタックル専門のコーチが発見した「左肩からのタックルが苦手」という課題を克服すべく、足の運び方を重点的に強化した。
これについては瀬川HCも「右肩でタックルするときは、右足を前に出し、左肩の時は左足を前に出しますが、この時に足を合わせられないケースが多いです」と解説。強豪ニュージーランドでは、この練習をジュニア世代から取り入れているとことを紹介した。
予選を通じて成長した選手は?
瀬川HCもその俊足を高く評価する松井千士 【写真:ロイター/アフロ】
この村上さんからの問い掛けに瀬川HCは松井千士と後藤輝也の名前を挙げた。松井について瀬川HCは「(チームで)1番速い、強みは速いスピードを繰り返しできるところにあります」と紹介し、その走力を賞賛。後藤に対しては「非常に野性的な走りをして、腰の強さは圧倒的なものを持っています」と述べ、リオ五輪切符を獲得した香港大会の決勝で松井ではなく後藤を起用した理由については、「タックルができること」と「相手ディフェンスがそろった状態でもトライを奪える強さ」を挙げ、今後に期待を寄せた。
浅見HCは主将を務めた中村知春と大黒田裕芽を挙げた。中村は手首の負傷を抱え、9月の中国・青島大会は欠場したもののワールドシリーズ、五輪予選を戦い抜いた。豊富な運動量を誇り、チームが掲げる粘り強い戦いにも貢献。また、大学まではバスケットボールの選手だったにもかかわらず、キッカーや、ラインアウトのスローを務めるなどプレーの引き出しも多い。瀬川HCも中村については「男女のセブンズを通じて1番メンタルが強いです」と語り、他の選手にも手本とするように指導していることを明かした。
大黒田は14年7月に左膝の前十字靭帯(じんたい)を断裂、リハビリを経て15年7月のジャパンセブンズから復帰した。浅見HCはそのキック力と性格を高評価。「ラグビーが本当に好きな選手で、うまくなりたい気持ちが強い。その雰囲気がチームに伝染しています。とにかくトレーニングもして、ラグビーの話ばかりしています」と語った。