元日本代表の2人が今治に求めたもの 山田卓也×市川大祐対談 <前編>

宇都宮徹壱

この夏、今治に加入した山田卓也(左)と市川大祐。彼らは何を求めて今治にやってきたのか 【宇都宮徹壱】

 FC今治は9月20日、ホームにて高知Uトラスターとの四国リーグ頂上決戦を迎える。残り2試合となった現時点で、トラスターが勝ち点34で首位、今治が同31で2位。今治が逆転優勝するためには、まずトラスターとの直接対決を制すること。さらに最終節でも連勝し、裏の試合(アイゴッソ高知とのダービー)でトラスターが引き分け以下に終わることが条件となる。今治にとっては、今季最大の正念場と言ってよいだろう。

 こういう大一番を臨むにあたって心強い存在となり得るのが、修羅場を何度も経験してきたベテランである。この夏、今治は2人の元日本代表を加入させた。山田卓也、41歳。市川大祐、35歳。山田はヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)を振り出しに国内4つのクラブを渡り歩き、米国のタンパベイで5シーズンにわたって活躍。一方の市川は2002年のワールドカップ(W杯)出場経験を持ち、J1からJFLまでさまざまなカテゴリーでプレーしてきた。

 そんな波乱万丈のキャリアを持った2人がなぜ、J1から数えて5部リーグに相当する四国リーグでプレーする道を選んだのだろうか。今回、新天地である今治で2人の元日本代表に独占インタビューを敢行。前編となる今回は、四国リーグでの挑戦を決意するに至った経緯と近況について話を聞いた。(取材日:8月27日)

2人が考えるお互いの役割分担

山田は市川と相談し、チームへのアプローチ方法を考えているという 【宇都宮徹壱】

――山田選手と市川選手は、これまで同じクラブでプレーしたことがありませんが、過去に接点はあったんでしょうか?

市川 代表の合宿かな?

山田 (フィリップ・)トルシエ(が監督だった)時代に被っていますけれどね。

――お互いの当時の印象とか覚えていますか?

山田 特にないよね。もちろん存在は知っていたし、ポジションが右サイドで被るかなっていう意識はしていたけれど、あんまりつるむという感じではなかったよね。

市川 合宿時間も短いですし、食事や風呂で一緒になれば話すという感じでしたね。

――もちろんJリーグで対戦することはあったわけですよね?

山田 でも、オレは右サイドでイチも右サイドだから、対面になることはなかったよね。もっとも、中盤の右とかボランチもやっていたので、マッチアップすることはあったかもしれないけれど。

市川 僕はもちろん卓さんのことは知っていました。第一印象がやっぱり、この(ごつい)体ですよね(笑)。まあ、タイプ的には違うと思いますけれど。

山田 まあそんな感じで、あんまり絡むとこがないから対談は成り立たないですね(笑)。

――そこを何とか(苦笑)。そんなお二人が、今回クラブでは初めてチームメートになったわけですが、最初にそれを知ったときにどんなことを考えました?

山田 僕のほうが先に(今治への加入が)決まったんだけれど、その時からイチにオファーしていることは聞いていました。僕は5年間、日本を離れていたからイチの近況は知らなかったけれど、経験豊富な選手だから一緒にやれるんなら楽しみだと思っていたね。

市川 僕は岡田さんから声をかけていただいて、いろいろ具体的なお話をさせていただいていたときに「そういやヤマタクが今度入るんだよ」と言われて、「えっ」って思いました。僕よりも年齡が上で、しかも海外でのプレー経験があるということで、卓さんがいてくれたらいろいろな角度から若い選手に伝えることができる。それはすごく僕にとっても心強いと思いました。

――ベテランが2人もいることで、お互いの役割分担みたいなものができてくると思うんですけど、実際にそういうのってあります?

山田 この間もイチとご飯食べながら話したんだけれど、僕はうるさく嫌われる方向で言ったほうがいいから、イチはその分フォローしてくれよってね。逆にイチが優しく言っても聞かないようなら僕が強く言うし、もちろんその逆もあるし。どうアプローチすべきか、僕らもいろいろ考えてはいますね。

市川 僕もたまに、卓さんがなぜ厳しく言っているのかっていうのを説明しますけれど、みんなも卓さんなり僕なりの姿勢をしっかり見ていて、良い取り組み方をしてくれているとは思います。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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