リーガの主役はアトレティコ・マドリー? さらなる高みへ、シメオネが築く黄金期

見え始めた首位争いの構図

リーガ開幕2連勝のアトレティコ・マドリー。積極補強で戦力を整えており、主役に躍り出る可能性が漂う 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 まだ2節しか消化していないリーガ・エスパニョーラだが、早くもアトレティコ・マドリーとバルセロナが首位に並び、少し後方からレアル・マドリーが追うという首位争いの構図が見え始めている。他にもセルタ、エイバル、ビジャレアルらが上位につけているが、それは戦力、経済力に適した位置へと落ち着くまでの一時的な健闘にとどまるはずだ。

 2011−12シーズンの半ばにディエゴ・シメオネ監督が就任して以降、アトレティコは数々のタイトルを獲得してきただけでなく、過去にないほど2大勢力のレアル・マドリーとバルセロナに肩を並べるレベルにまでチーム力を高めてきた。

 平行してシメオネはクラブ内での影響力を年々増しており、今やほとんどスポーツディレクターを兼任するような存在となった。95−96シーズンにリーガとコパ・デルレイ(国王杯)の二冠を獲得した際に中心選手として活躍した彼は、監督としてクラブに復帰して以降、選手時代を上回る黄金期を築いている。

 シメオネ就任の半年後に勝ち獲った11−12シーズンのヨーロッパリーグ(EL)に始まり、12−13シーズンには決勝で宿敵レアル・マドリーを下してコパ・デルレイを獲得。13−14シーズンには長らく続いた2強の独占時代に風穴を空けるリーガ・エスパニョーラ制覇も成し遂げ、決勝まで勝ち上がったチャンピオンズリーグ(CL)では後半アディショナルタイムまでレアル・マドリーを追いつめた(結果は1−4)。

 これだけの成功を手にしたにもかかわらず、シメオネとアトレティコはさらなる高みを目指して成長し続けている。黄金期を謳歌している現状に満足することなく、現有戦力を維持するだけにとどまらず、今季をさらなる成功のシーズンにしようと強化に努めているのだ。

積極補強でかつてない選手層を誇る

ポルトからポルトガルリーグで3シーズン連続得点王に輝いたジャクソン・マルティネスを獲得した 【写真:ロイター/アフロ】

 今夏の移籍市場の動向を振り返れば、アトレティコほど充実した補強を行ったクラブはほとんど見つからないことが分かる。テレビ放映権収入の格差が、2大メガクラブとアトレティコ、バレンシア、セビージャ、ビジャレアルら“中流階級”の間に埋め難い経済格差をもたらして以降、アトレティコが補強に費やした資金の総額でレアル・マドリーとバルセロナを上回ったのは初めてのことである。

 バルセロナはそのアトレティコから買い取ったアルダ・トゥランとアレイクス・ビダルを補強したものの、FIFA(国際サッカー連盟)から補強禁止の制裁を受けているため、来年1月まで彼らを登録することができない。レアル・マドリーもダニーロ、キコ・カシージャ、マテオ・コバチッチの獲得以外に大きな動きがないまま、移籍期間の最終日を迎えた挙げ句、必要書類の送付が間に合わなかったという信じられない理由でダビド・デヘアの獲得に失敗した。

 そんな2強を尻目に、アトレティコの前線にはモナコのヤニック・フェレイラ・カラスコ、ビジャレアルのルシアーノ・ビエット、ポルトのジャクソン・マルティネスら優秀なアタッカーが加入。最終ラインにはフィオレンティーナのステファン・サビッチ、チェルシーから復帰したフィリペ・ルイスが加わり、中盤には1年の期限付き移籍を経て大きく成長した若き司令塔のオリベル・トーレスが復帰した。

 これだけ充実した戦力を手にした今季、はたしてシメオネは彼らをどのように生かし、どんなプレーを見せてくれるのか。それは今季における大きな見どころの1つである。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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