リーガの主役はアトレティコ・マドリー? さらなる高みへ、シメオネが築く黄金期

基本コンセプトは変わらず

シメオネが築き上げたチームコンセプトは変わらない。豊富な戦力をどう生かすのか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 偉大な目標に挑み続けているシメオネだが、そのチーム作りは常にリスク回避を優先した保守的なチームマネジメントを貫いている。選手の入れ替えでディティールを修正することはあっても、ドラスティックなチーム改造を行うようなタイプではない。

 リーガの2試合を見た限り、チームの戦い方という点では昨季までの特徴だったハードワーク、高いインテンシティー(プレー強度)といったメンタリティーの部分、そしてコンパクトにまとまるプレーシステムはそのまま継続しているように見える。変わった点と言えば、アルダに代わって右サイドの先発に据えられたオリベル・トーレスがより中央でゲームメイクに関わっていること、そして何よりベンチに強力な切り札を何人も擁していることだ。

 守護神のヤン・オブラク、ホセ・マリア・ヒメネスとディエゴ・ゴディンがセンターバックコンビを組む鉄壁の最終ライン、そしてラウール・ガルシアが移籍したもののガビ、コケ、チアゴらハードワーカーが健在の中盤が今季もアトレティコのベースとなることは変わらない。

 豊富な選択肢を得た前線については、これまでのところ使い慣れた選手を優先して起用する傾向が見られる。アントワーヌ・グリースマンを先発に固定し、ラス・パルマスとの開幕戦では新加入のジャクソン・マルティネスが、ウナイ・エメリの指揮下でEL2連覇を成し遂げた難敵セビージャとのアウェー戦ではフェルナンド・トーレスが相方役に選ばれている。

CLの組み合わせも追い風

ポルトへの期限付き移籍を経てチームに復帰したオリベル・トーレス。週末のバルセロナ戦で輝きを放つことができるか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 2戦2勝の好スタートを切ったのもつかの間、中断明けの日本時間13日に行われる第3節には、ホームのビセンテ・カルデロンにバルセロナを迎える大一番が待っている。今季のすう勢に大きな影響を与えかねないこの一戦でアトレティコが勝利を手にすれば、早くも優勝候補の筆頭に躍り出ることになるかもしれない。

 ポルトガルのベンフィカ、トルコのガラタサライ、初出場となるカザフスタンのアスタナと同組に入ったCLの組み合わせも追い風となりそうだ。ライバルとの力関係を考慮すれば決勝トーナメント進出に支障はなく、他のグループと比べて大きな消耗を強いられることもないはずだ。なおレアル・マドリーはパリ・サンジェルマンとシャフタール・ドネツク、バルセロナはローマとレバークーゼン、バレンシアはゼニトとリヨンが最大のライバルとなりそうだ。ユベントス、ゼニト、ボルシアMGとの対戦を強いられたセビージャの不運は言うまでもないだろう。

 今季は再びアトレティコが主役のシーズンとなるのだろうか? 少なくともそう予想するのに十分な要素はそろっている。それが正しい見解かどうかは、これからの数カ月で明らかになっていくはずだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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