ユナイテッドが続ける模索 移籍市場閉幕まで高まらないチーム力

田嶋コウスケ

最終局面で創造性を欠くユナイテッド

開幕から2試合連続で無失点勝利を収めているユナイテッドだが、「恐ろしいほど退屈──」と報道されている 【写真:ロイター/アフロ】

「2試合連続で無失点に抑えて2連勝。ケチはつけられないが、今のマンチェスター・ユナイテッドは恐ろしいほど退屈──」

 こう伝えたのは、14日に行われたプレミアリーグ第2節・アストンビラ戦後の『BBCラジオ』である。トッテナムとのシーズン開幕戦を1−0の辛勝で切り抜けると、次節アストンビラ戦も攻撃が低調で最少得点差の勝利(1−0)。2試合とも快勝と呼ぶには程遠い内容だった。

 第2節で54.5%のポゼッションを記録したように、昨シーズンに比べるとパスはスムーズに回るようにはなったが、悲しいことにファイナルサードに入ると途端にブレーキがかかってしまう。センターFW(CF)として最前線に陣取るウェイン・ルーニーが孤立するシーンも一度や二度ではなく、決定機までなかなかたどり着かないもどかしい展開が続いた。もちろん、新シーズンは始まったばかりでメディアも様子見の状況だが、英紙『デーリー・テレグラフ』が「最終局面で創造性を欠き、連動性も輝きもない」と伝えたように、現地紙の紙面ではユナイテッドの歯車が噛み合っていないことを強調する記事が目立つ。

 しかし、シーズン開幕前のユナイテッドには「不安」よりも「期待」の声の方が多かった。その理由は、今夏市場での選手補強にある。

補強費は今夏だけで8000万ポンド

セントラルMFにはシュバインシュタイガーら新戦力を補強した 【写真:ロイター/アフロ】

 昨シーズン初期の段階で、ルイ・ファン・ハール監督が「少なくともあと2人はトップクラスの選手が必要」と語っていたセントラルMFに、バイエルン・ミュンヘンを率いた際の教え子であるバスティアン・シュバインシュタイガーと、好調サウサンプトンで舵取り役を務めたモルガン・シュナイデルランを獲得した。

 ドイツ代表の前者は正確なパスでチャンスを作り出すほか、ユナイテッドに欠落していたドリブルでの推進力を注入でき、中盤の柱として活躍が期待される。一方、フランス代表の後者は長短のパスを使い分けた展開力が売り。派手さはないが英メディアの評価は極めて高く、「今夏のユナイテッドの補強選手でベストバイ」(英紙デーリー・テレグラフ)との声も聞こえる。アストンビラ戦では、両軍を通じて3位のボールタッチ数でゲームを操った。

 前線には、オランダのエールディビジで得点王に輝いたメンフィス・デパイをPSVから迎えた。鋭い突破力に加え、左サイドからカットインしてネットを揺らす高い決定力を持ち、現在の課題であるサイドアタックに大幅な改善が見込めそうだ。かたや最終ラインには、イタリア代表DFのマッテオ・ダルミアンを確保。本職が右ウインガーのルイス・アントニオ・バレンシアを起用していた右サイドバックに、ようやく守備に強い実力派を迎えた。

 投下した補強費は今夏だけで総額8000万ポンド(約155億円)で、昨シーズンの補強費と合わせると、2億3000万ポンド(約446億円)にも達する。これほどの巨費をわずか12カ月間で投じれば、むしろ期待の眼差しが向けられない方がおかしいだろう。

 しかし実際は、思うように事が進んでいない。補強の目玉とされたシュバインシュタイガーは、けがで出遅れた。プレシーズンマッチも調整不足が目立ち、ジョゼップ・グアルディオラ監督による「(膝と足首にけがを重ね)ここ3年間はフィットしていない」との発言で、英国でも体調面を不安視する声は高まっている。加えて、起爆剤として期待されたデパイもエンジン全開には至っていない。得点力を期待してか、プレシーズンマッチでは本来の「左サイド」でなく「トップ下」で起用するなど、指揮官も生かし方を模索しているようだ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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