コロンビアサポーターの災難な1日 代表チームは敗れ、デモで足止めを食らう
ベネズエラが起こしたサプライズ
このスタジアムの最大の売りは、ゴール裏に広がるアンデス山脈の景観だ。スタジアムそのものはかなり小ぶりだが、それがかえって美しい山並みのパノラマを邪魔せず、風景に迫力を与えている。試合を見ながら時おり景色に目を奪われ、熱気を帯びた試合の最中にも「ああ、空気がうまい」と感じさせてくれるのが、ランカグアのエル・テニエンテスタジアムだった。ここで現地時間6月14日、ベネズエラがコロンビアを1−0で下すサプライズを起こした。
コロンビアは今回のコパ・アメリカの優勝候補の一つである。去年のブラジルW杯ではハメス・ロドリゲスが世界のスターに仲間入りした。一方、エースストライカーのラダメル・ファルカオはW杯を負傷で欠場し、マンチェスター・ユナイテッドでは不振に終わった雪辱をこのコパ・アメリカで果たそうとしている。セビージャの一員としてヨーロッパリーグを制したカルロス・バッカ、キレのあるドリブルを見せるフアン・クアドラードら、華のある選手がそろっている。
守備も堅く、ピンチの際にはGKのダビド・オスピナの堅守が心強い。そのためサポーターの期待も大きく、今回のコパ・アメリカにはブラジル、アルゼンチンに次ぐ数のサポーターがコロンビアからチリに集まっている。エル・テニエンテは完全に彼らのホームゲームとなり、ピッチの上でもポゼッションを高めて試合を支配したかに見えたのは、コロンビアの方だった。
コロンビアの猛攻及ばず
ベネズエラは前回のコパ・アメリカで4位という健闘を見せたが、当時のチームはセンターバックのオスワルド・ビスカロンドが守備ばかりでなく、セットプレーからの攻撃でも迫力あるものを見せていた。コロンビア戦でのビスカロンドは29分にロングボールの目測を誤り、ファルカオのシュートを許すピンチを招くなど、前半は少し不安があった。それでもチーム全体としては非常にコンパクトで、守備組織が横へのスライドを繰り返しながら、コロンビアの狙うスルーパスをことごとくカットし続けた。
攻めの回数は少ないものの、ベネズエラは崩しの局面でアイデアがあった。60分には右サイドのカウンターからクロス。これをファーサイドでゲーラがひざまづくようにヘッドで折り返すと、ストライカーのサロモン・ロンドンが長身を生かしたヘディングシュートを決めて、ベネズエラが1点を奪った。
ここからコロンビアが猛反撃。79分、80分の連続チャンスを逸した後、ホセ・ペケルマン監督は82分にジャクソン・マルティネスを投入して、さらにベネズエラへのプレッシャーをかける。85分にはクアルダードの惜しいシュートが枠を外す。この猛攻を4バックから5バックにシフトして受けたベネズエラは、いったんボールを奪い返してパスをつなぎ出すと、コロンビアの焦りを逆手にとっていなすように前へボールを運んで時間を稼ぐ。5分という長いアディショナルタイムにも明確なチャンスをコロンビアに与えず、ベネズエラがしっかり試合を完封した。
もともと野球が盛んだったベネズエラは、南米勢の中で唯一W杯出場の経験を持たない。しかし、コパ・アメリカでは地元開催の2007年にベスト8、前回の11年に4位になるなど、確実に力を蓄え始めている。悲願のW杯出場を果たす日はそう遠くないかもしれない。
電車を遅らせたデモ
電車は2時間以上遅れて中央駅に着いた。どうやらわれわれは45分前後、車内に閉じ込められていたらしい。コロンビアサポーターにとって災難な1日になった。
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