土井杏南、挫折乗り越え戻りつつある自信 完全復活へ「新しい自分を追求したい」
自身初の世界選手権へ走り出した19歳
次世代エースとして期待される土井杏南に、自身初の世界選手権出場に向けての思いなどを聞いた 【スポーツナビ】
雲ひとつない5月末の大東文化大陸上競技場に、一際大きな声が響いた。その声の主は、ロンドン五輪代表で同大2年の土井杏南。練習の一環で150メートルを軽やかに走り切ったところだった。本人いわく、手動計測ではあるものの記録更新は久しぶりとのこと。自身初の世界選手権(8月22日開幕、中国・北京)出場を目指す19歳は今、再び世界の舞台で戦うべく闘志を燃やしている。
関東インカレで2冠を達成するなど、少しずつ調子を上げてきている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
「織田記念から比べていくと、関東インカレではまだまだでしたが、ちょっとずつ手応えは感じています。特に関東インカレ決勝はタイムこそ悪かったんですけど、スタートは今季の中で一番、自分の中で形になったと思っています。あとはできている部分部分をしっかりつなげていくことが今後の課題ですね。悪くはないと思います」
「どん底の誕生日」から這い上がる
昨夏に全治2カ月の重傷を負った。「気持ちの切り替えはうまくやった方」と言いつつも、どん底を味わったと振り返る 【スポーツナビ】
「自分がこういうけがをしてしまって、大学のリレーチームにとても迷惑をかけてしまいましたし、アジア大会に関してもリレーに出られなくなってしまって。気持ちの切り替えはうまくやった方だと思うんですけど、周りからみたら相当(気分が)落ちていましたね」
くしくも、けがをした次の日が19歳の誕生日。「どん底の誕生日」(土井)を迎えた後は、誰に会うこともなく、何とか浮上のきっかけをつかもうと一人苦悩した。
失意に沈む土井の背中を押したのは、チームメートや日本代表で戦う仲間だった。「日本インカレの結果を見たり、アジア大会をテレビで見ていて、くよくよしていられない。ここで立ち止まっていてはいけないんだな」と自然と気持ちが奮い立った。一人思い悩んでいたスプリンターは、「本当に大きな存在」と語る戦友たちの無言のメッセージに励まされ、再び前を向いた。