土井杏南、挫折乗り越え戻りつつある自信 完全復活へ「新しい自分を追求したい」

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リラックスした走りを身に付ける

今季は力みのないフォームの習得に力を入れている 【スポーツナビ】

 練習に復帰したのは11月の半ば。指導する佐藤真太郎コーチが「自分で考えて、『こういう練習をしたい』と積極的に言ってくるタイプ」と語るように、自ら「(冬季練習では)ちょっと長めの距離からスタートして、リラックスした走りを身に付けよう」と決めた。少しでも速くなるためには、“力の抜き方”を覚える必要があると考えたからだ。

「今まではどちらかというと短い距離を何本もやっていたんですけど、そうすると気持ち的にもガツガツいってしまったりすることがあって、フォームも力んでしまう部分がありました。300メートルや250メートルになると、ずっと力んだまま走っても(良い)タイムは出ません。短い距離であれば、ある程度力んで走っていてもそんなに支障はないんですけど、300メートルをずっと力んでいると全然走れませんから」

 リラックスした走りを体に刷り込ませようと、これまではあまり行ってこなかった250〜300メートル走といった、長めの距離を何本も走りこんだ。また、ハイハードルを両足ジャンプで連続して飛び越えるなどして、接地の感覚やタイミングをつかむトレーニングも取り入れ、技術面にも磨きをかけた。その結果、少しずつストライドが伸び、「一歩一歩、力強く地面に対して蹴れるようになった」という。「練習に関して言えば(調子は)上向き」と、新しい取り組みに好感触を得ている。

「日本一は取らないといけない」

日本選手権では結果とともに記録も求められるが「絶対に達成できる目標」と自信をのぞかせる 【スポーツナビ】

 練習は順調なものの、本番レースではその成果を出し切れていない。「自分の中ではうまく走れている時と比べると、全然まだまだ」という思いもある。それでも、「ストライドが伸びてきたり、リラックスもして走れている。あとはスピードを上げた中でいかにうまく走るかがポイント」と今後の課題は明確だ。

 今月末には世界選手権の選考を兼ねた日本選手権(26〜28日、新潟・デンカビッグスワンスタジアム)が控える。北京行きをつかむには、今大会で参加標準記録(100メートル11秒33、200メートル23秒20)を突破するのが最低条件となるが、「絶対に達成できる目標。ずっと目指している日本一というのはやっぱり取らないといけない」と決意は固い。「自分にすごく自信があって、周りよりも自分が自分に期待していていた」というロンドン五輪のころのように、少しずつ「いける、やれる」という自信も取り戻しつつある。本番に向けては「(コンディションを)100パーセントに仕上げて、気持ち的にも150パーセント」まで上げて臨むつもりだ。

 復活の先に見据えるのは“進化した走り”だ。 伸び盛りだった3年前のような走りに戻すのではなく、「新しい自分をもっともっと追求していきたい」と力を込める。

「どん底の誕生日」から10カ月。積み重ねた努力や挑戦が結実した時、ひと皮向けた次世代スプリンターの姿を見ることができるだろう。

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)

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