「おもてなし」精神から感じる街の誇り=ル・マンの風 現地レポートVol.2

田口浩次

王者の登場に盛り上がり見せる公開車検場

トヨタ・GAZOO・レーシングの記念撮影はスタッフも参加。チャンピオンマシン登場に、現地のファンも大いに盛り上がった 【田口浩次】

 フランスのル・マン市内中心部で行われているル・マン24時間レース公開車検2日目は、昨年のWEC(世界耐久選手権)王者であるトヨタ・GAZOO・レーシングと、ル・マンで数々の記録や記憶を刻んだポルシェが登場。その人気ぶりはさすがにすごかった。現地は月曜日とあって、周囲の店は通常営業しているし、歩く人は普通に働いているであろう人もいるのだが、それでも公開車検場があるリパブリック広場には多くの人が集まっていた。

 ポルシェは、昨年のマーク・ウェバー(元レッドブル)人気に加え、今年は現役F1ドライバーのニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)が参加。多くのメディアがこの2人を囲んでいた。

すっかり元気な様子を見せる中嶋一貴。今回、ル・マンを訪れている脇坂寿一(右)の要望にこたえて、日本のファンに動画で無事を報告 【田口浩次】

 そして、前日同様、押し気味な進行の影響で、予定の15時から少し遅れて登場したのが、昨年のWEC王者であるトヨタ・GAZOO・レーシングの面々。特に中嶋一貴は、WEC第2戦のスパ・フランコルシャンでクラッシュし、脊椎損傷という負傷を負ったが、その後の驚異的な治療と回復で、見事ル・マン復活を飾ったとあって、トークショーなどでも大いに注目を集めていた。

 そんなトヨタ・GAZOO・レーシングは、リパブリック広場での記念撮影には、チームスタッフが全員集合。カーナンバー1と2のマシンが並ぶ姿は、メディアという立場にあっても、非常に感動する。日本チーム、日本車、そして日本人ドライバーという組み合わせでの優勝はまだないだけに、チャンスがあればその姿を見てみたいと、記念撮影風景を見ながら感じていた。

他の都市とは違うル・マンの街

 さて、話は変わってル・マンに来て非常に驚いたことがあった。それは、とにかくル・マンの人は誰もが親切で、フランス語を話せない海外からの観光客に対しても、常に笑顔で接してくれるのだ。

 昔から、フランス人は少し気難しいというか、母国語にプライドがあり、観光客相手であっても、フランス語で話しかけられなければ、接する態度がずいぶんと違うと言われてきた。また、田舎では本当にフランス語以外を話せない人が多く、どうしても排他的な雰囲気になってしまう。実際、筆者もそうした体験を何度もパリや、フランスGPが開催されていたマニ・クール周辺でしたし、今回、同行していたフランス留学の経験もあるジャーナリストたちも同意見だった。しかし、ル・マンの街は何かが違う。

 日本はいま、世界から観光客が増えていている。円安以外の理由のひとつとして、日本は安全で、誰もがとても親切という点が挙げられる。まさに東京五輪誘致で語った「おもてなし」が魅力なのだと。その「おもてなし」精神がル・マンに住む人々にはあると感じられた。これは、他の日本人ジャーナリストに聞いても同じように感じていたし、フランス在住40年を超えるコーディネーターに聞いても、ル・マンは他の都市とは違うと話す。

 長く、国際的なレースを開催し続けてきたことで、毎年、世界中から多くのファンが集まり、そうした人々とのつながりを持つことで、本来の少し田舎で素朴な良さと、常に世界から注目され、世界に誇れる祭りを開催している自負からなのか、自然と人に優しくなっているのではないだろうか。

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