「おもてなし」精神から感じる街の誇り=ル・マンの風 現地レポートVol.2

田口浩次

日本も見習いたい譲り合いの精神

リパブリック広場近くにあった「Le BAR a VIN」のフィリップさんは、雰囲気のある店内撮影も笑顔で対応。ル・マンに住む人々の優しさを感じる場面がたくさんあった 【田口浩次】

 それを実感する出来事があった。ル・マンの街中を歩くと、店のディスプレーがレーシングな雰囲気でまとめられたワインショップをたまたま見つけたのだが、その店内も非常に素敵な雰囲気で、どうしても写真に収めたくなった。そこで、ワインを買うわけじゃないけれど、店内を撮影して良いかと尋ねると、店主のフィリップ・ドレイユさんは、「まったくかまわないよ。レーシングな雰囲気のディスプレーなのは、ル・マンだからね。私が特別レースファンってわけじゃないんだ。でも、この街を訪れてくれた人は、こうしたル・マンらしさを出した方が喜んでくれるだろう。せっかく、ここまで来たのだからね。そうそう、奥は小さいけどワインバーになっているんだ。別にル・マン特別メニューがあるわけじゃないけれど、ワインに合わせた料理も自慢なんだ。このル・マン開催期間中にいるなら遊びにおいで。ただし、月曜日は定休日だから、他の日にね」と笑顔、そして英語で対応してくれた。

 さらにル・マン郊外をクルマで移動していると、このあたりのドライバーは運転も優しく、譲り合いの精神が浸透している。正直、日本の方が運転マナーが悪いと感じるほどだ。しかし、これもル・マン独特じゃないかと、皆が口をそろえる。どうやら、ル・マン24時間レースという街の誇りが、自然と住む人々の雰囲気も変えていったのかもしれない。

「F1より洗練されている」

金曜日のドライバーズパレードスタート地点となる大聖堂前広場。ここがマシンで埋まる姿は圧巻だという 【田口浩次】

 そんなル・マンは、2007年の路面電車開通後に街全体がどんどん奇麗になっているそうで、レース前の金曜日に開催されるドライバーズパレードのスタート地点となる大聖堂前の広場あたりも、昔を知る人から言わせると、本当に奇麗に整備されたのだという。しかも、すべてをスクラップ&ビルドするのではなく、古い部分を奇麗に残して、そこに現代を組み合わせることで、街の雰囲気を壊さない配慮がされている。

 今回、初めて来たル・マンでは、各チームスタッフなどにも、数多くの元F1組がいて、久しぶりの再開を楽しんだのだが、彼らと話したときにも、ル・マンの特別な雰囲気は話題となった。

「ル・マンで洗練されている部分はF1より洗練されている。なのに、それが嫌味にならず、温かい雰囲気というか、ゆったりしている部分はゆったりしている。そこは本当にル・マンだけの独特な空気で、特別なレースなんだなって、何度来ても実感するよ」と口をそろえていた。

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