ロンドン5年前は合唱部の女子中学生 ボート歴3年で五輪出場までの道
ロンドン五輪ボート代表の榊原に、五輪出場までの歩みと5年後に迫った東京五輪に向けての思いを聞いた 【スポーツナビ】
2012年ロンドン五輪・ボート女子シングルスカル日本代表で、現在21歳の榊原春奈(早稲田大)にとっては、メダルを狙うための重要な5年間となる。しかし、ロンドン五輪の5年前を振り返ると、彼女は競技を始めていないどころか、「スポーツに関しては劣等感の塊」と自ら振り返る少女だった。
当時13歳の榊原は、どんな歩みを経てオリンピアンとなったのか。東京五輪までの次の5年をどう進もうとしているのか。榊原に話を聞いた。
中学まで運動は苦手だった
元ボート選手だった両親もそんな娘に対して、強制的にボートやスポーツをやらせることはなかったという。小学生までは父親から「漕いでみない?」と誘われることもあったが、「お父さんがあまりにも乗りたそうにしているからしょうがなく乗ってやるか、という感じだった」と本人はさほど乗り気ではなかった。中学生になると、そういった誘いもなくなった。
しかし、心の中ではスポーツができる人への“憧れ”があった。放課後、バスケットボール部やハンドボール部の生徒が一生懸命練習している姿を見て、「やっぱりこっちの方が格好いいなあ」と羨望のまなざしを送っていたという。
力試しのつもりがロンドン五輪代表に
アジア大陸予選で優勝し、競技暦わずか3年あまりで五輪代表となった 【Getty Images Sport】
そんなボートを続けようと思わせてくれたのは、焦らず大切に育ててくれたコーチ陣のおかげと述懐する。当初は体力への不安があったものの「(コーチが)できることからやればいいよと言ってくれて。だから、1日でワーッと疲れてもうダメだと思うことは無かった」と、モチベーションを保つことができた。
また、マイナー競技ゆえにライバルが少なく、全国大会出場を現実的な目標にできたことも大きかった。
「先生にも『陸トレで全然走れなくても、地道にやっていればインターハイ入賞ぐらいいけるんじゃない?』と言われて。『えーホント、私が!?』みたいな(笑)。それも励みになっていました」
ロンドン五輪では23位。悔しさも残るが、世界トップのスピードを体感しモチベーションが高まった 【写真:ロイター/アフロ】
迎えたロンドン五輪の成績は23位。「とにかく全然歯が立たなかった」と世界の厳しさを痛感した。しかし、トップクラスの選手の速さを体感し、「あのスピードが出たら、もっとボートが楽しんだろうなと思って。悔しさもありますが、そこまでいけるならいってみたいです」と、逆に気持ちが奮い立った。
5年後もワクワクしていきたい
東京五輪までの5年間も、ロンドン五輪までのワクワクした気持ちを忘れずに歩んでいく 【スポーツナビ】
それでも次第に復調し、「この冬は大学に入ってから一番順調」と自信をのぞかせる。11月には室内ボート競漕で高校3年生以来となる自己ベストをマーク。苦しんだ2年間を乗り越え、「今はとても楽しい」と語る瞳はキラキラと輝いている。
直近の目標は16年リオデジャネイロ五輪で「この4年間で成長した」という手応えをつかむこと。そして26歳で迎える東京五輪ではメダル獲得を目指すつもりだ。
「ロンドンまでの5年間は、『自分はどこまでいけるんだろう』という可能性ですごいワクワクしながらやっていました。それはどんな時も忘れたくありません。今から(東京まで)の5年間も、自分自身がどうなるかワクワクしていきたいです。練習できついときは必ずあるんですけれど、トータルで見たら『楽しかった』と言えるようにしたいですね」
今後はレベルアップを目指し、海外に拠点を置くことも視野にいれているという榊原。ロンドンまでの5年がそうだったように、自身の未知の可能性を信じ、5年先の晴れ舞台を目指していく。
(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)
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