復活を期すマーメイド、アジアに挑む! 金子・井村体制で望むシンクロ日本代表

沢田聡子

強い日本を取り戻すため名伯楽が復帰

復活の兆しが見えていなかったシンクロ日本代表「マーメイドジャパン」だったが、再び名伯楽2人が復活。新体制で世界に挑む 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2016年リオデジャネイロ五輪での復活を期し、黄金期を知るコーチングスタッフが戻ってきたシンクロナイズドスイミング日本代表『マーメイドジャパン』。新体制で初めて臨む大きな国際試合が、アジア大会(韓国・仁川、シンクロ競技は9月20〜23日)である。

 12年ロンドン五輪でシンクロ日本代表はメダルを獲得できず、シンクロが正式種目となった1984年ロサンゼルス五輪からすべての大会で表彰台に上がり続けてきた日本の栄光の歴史は途絶えた。
 更に、昨年スペイン・バルセロナで開催された世界選手権では、ロンドン五輪予選では出場権を巡る死闘の末に抑えたライバル・ウクライナに対しことごとく敗れ、メダル圏外のままで終わっている。

 復活の兆しすら見えない状況に、08年北京五輪までシンクロ委員長として日本を支えてきた金子正子氏に白羽の矢が立った。金子氏は強かった日本を共に率いてきた井村雅代氏に声をかけ、井村氏も04年アテネ五輪以来離れていた日本のコーチングスタッフに復帰。強い日本を取り戻すため、黄金期を共に築いてきた金子チームリーダーと井村コーチによる指導体制が、今年の4月初めから始動したのだ。

精神面向上のため生活態度の改善も

再びマーメイドの指揮を取ることになった金子正子氏(左)と井村雅代氏(右)。そのスタートは「想像以上に足りないものばかり」だった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

「私たちが想像する以上に足りないものばかりのところから出発しました」(金子チームリーダー)「マイナスからのスタート」(井村コーチ)と2人が振り返っているように、新体制のスタートは代表選手を心身の両面で基本から鍛え直すところから始まる厳しいものだった。

 身体面では筋肉の質を改善するための陸上トレーニングが急務で、選手が涙するような厳しいトレーニングを4〜6月は特に重点的に行ったという。栄養士の指導も仰ぎながら食事も改善し、選手たちは自分の体と向き合ってきた。
 それに加え、精神面でも日常生活での気構えから鍛え直す取り組みがされた。「整理整頓ができないようでは、整然と隊列を組んで泳ぐことはできない」という考えのもと、金子チームリーダーと井村コーチは連日選手に生活態度の改善を促してきた。

「メダルを取れるチームになるには、一人一人の体と精神を変えていかなくてはいけない。強い個人の選手をつくるために時間を割きました。まだ私たちが目指しているものには到達していませんけれども、少なくとも選手たちは『こんなにしなきゃならないのか』とか『こんな辛い練習があるんだ』ということは感じたと思います」(金子チームリーダー)

 また、新体制で初めて臨んだ試合であるジャパンオープン(6月/兵庫・尼崎)で、井村コーチは試合に臨む選手の意識について「ぎりぎりの、追い詰められた気持ちでやるという経験もなかった」と指摘している。
 緊張から逃げようとして集中力を欠くような状態の選手らに、大会最終日の演技前、井村コーチは「今、私たちの精いっぱいはこれです、というのを絶対に見せてきなさい」と言って送り出したという。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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