福島千里、笑顔を取り戻し新シーズンへ 目指すはアジア大会金メダル

折山淑美

初の単独海外トレーニングを実施

福島千里がシーズンインを前に心境を語った。写真は、世界選手権行きを決めた昨年の日本選手権200メートル決勝時のもの 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本女子短距離界のエース・福島千里(北海道ハイテクAC)が間もなくシーズンインを迎える。昨年の100メートルのベストは11秒38。200メートルでは、昨年6月の日本選手権決勝で23秒25をマーク。同8月の世界選手権モスクワ大会の派遣設定記録B(23秒30)を突破し、最後の最後で代表入りを決めた。しかし、その世界選手権では予選4組5位で敗退と、納得できる結果を残せなかった。

 今年は2月3日からオーストラリアのゴールドコーストに3週間滞在。ロンドン五輪100メートルハードル金メダリスト、サリー・ピアソンの元コーチであるシャロン・ハナン氏の下で練習をするという、新たな試みをしてきた。

「以前から海外の試合に出られればいいなと思っていて、(師事する)中村宏之先生たちにもよく言っていたんです。でも、私もそれをザックリとしか言っていませんでした。だから、いきなり単独で3週間の合宿になったので、最初はビックリして『そういうふうになっちゃったんだな、どうしよう?』みたいな感じでした。でも行ってみると、すべてが楽しくて良かったですね。練習自体は特別に違ったことはしなかったけれど、10人くらいの選手とみんなで一緒に練習をしていましたから」

 初めて経験した練習は、週に2回行うプールの中での腕振りや砂浜でのダッシュくらい。後はスタートダッシュをやったり、リレーで2回大会にも出たりした。
「宿泊はホテルでしたが、この期間で得たことは、3週間も海外へひとりで出かけてやってきたことだと思いますね。貴重な経験だったと思います。英語では困ったけれど、みんなやさしくてゆっくり話してくれて。本当にのびのびやれました」

驚きだった世界選手権行き

 北海道では一人で練習をすることも多くなっていたが、他の選手と一緒に楽しくやれたというのも大きな収穫だった。

「去年は散々で、正直『どうしようか』とも思わないままでシーズンが終わってしまった感じでした。日本選手権の時点では、世界選手権には行けないと思っていたのに、最後の200メートルで標準記録を突破して行けたのにビックリしたくらいで。でも1年間、世界の舞台を経験しないで過ごすことにはならなかったという点では、(世界選手権に)行けて良かったと思います。その意味でも、あの日本選手権は私にとって価値のある大会だったと思うし、ああいう気持ちで臨んで最後に記録を出せたことは、多分一生忘れないと思います。でも世界選手権では、世界で戦うにはまだ力不足で、心も体も戦えるレベルではなかったと実感しました。それで膿(うみ)を出し切ったというわけではないけれど、今年は悪くないかなという感じですね」

 今年3月末から足に痛みが出て練習を少し控える時期もあったが、それを除けば、オーストラリアから帰って来てからは、北海道でも楽しく練習ができたという。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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