福島千里、笑顔を取り戻し新シーズンへ 目指すはアジア大会金メダル

折山淑美

目指すは4年前の自分超え

前回のアジア大会では2冠を達成。今回も金メダルを目指すつもりだ 【写真:ロイター/アフロ】

 そんな福島がまず目標にするのは、4×100メートルリレーで43秒80の参加標準記録を突破して世界リレー選手権(5月、バハマ・ナッソー)に出場することだ。今年は若い選手が多いナショナルチームになっただけに、この時期に世界を経験しておけば、今後につながるという意識も強い。

「今年はマイル(リレーの選手)がいいので、4継(4×100メートルリレー)も頑張らないといけないですね。最初の段階でリレーがいい形になれば、自分の力にもなるかもしれませんし。今年のアジア大会(9〜10月、韓国・仁川)も、4年前の広州では(個人で)2冠を獲得して、その後ポンポンといったから、同じような結果を出したいというのはありますね。去年は、アジア選手権(7月、インド・プネー)で中国の選手に負けているから余計に……。自己ベストも(100メートル、200メートルとも)4年前のものだから、それを超えなければいけないというのもありますしね」

 振り返ってみれば、4年前から足踏みをしているような状況になっていた。だが、その間、いろいろなことに挑戦してきたことを後悔はしていないという。以前はできなかったことができるようになっているし、前には考えていなかったことも考えられるようになっている、と。だからこそ、今の考え方や体で、一日も早く自己ベストを更新しなければいけないと思う。そうすれば以前より、強い自分になれているはずだ。

「だから今年の最大の目標は、アジア大会で頑張って、4年前のように金メダルを取ることですね。海外の試合で走りたいというのもあるけれど、アジア大会を捨ててまでというのは無いし。ただ、アジア大会から逆算して出てみるというのはありだと思いますね。今はアジアで断然トップというわけではないし、去年は大差で負けているので、その意味で海外で走るのも貴重な体験になるとも思いますから」

今春は立て続けにレースに出場予定

 福島の心の中には、一昨年に挑戦した世界室内選手権(トルコ・イスタンブール)での悔しい思いも残っている。60メートルで予選を通過しながら、インフルエンザを発症して棄権したのだ。自分の最も得意だと思っている種目で世界と勝負してみたい。それを実現するためにも、来年までには100メートルで参加標準記録を突破しておきたいという気持ちがある。
「去年は何が自然体で、どうすれば気持ちよく走れるかが分からなくなってしまったところもありましたね。でも、納得する練習ができればというか……。気持ちも体も納得できれば、きっと走っていて体も気持ちよくなると思うんです」

 この春のレースの予定は、4月26日に日本選抜陸上和歌山で4×100メートルリレーを走った後、29日の織田記念陸上と5月3日の静岡国際陸上、6日の水戸招待陸上、11日のゴールデングランプリに出場する予定だ。
「楽しみなのは、2月にオーストラリアで11秒11を出しているメリッサ・ブリーン選手と走れることですね。これまでも毎回いい勝負をさせてもらっているので。私より前を走っているかもしれないけど、『あれが11秒1台の走りだ』と肌で感じることができるし。それをこの時期に経験できるのは貴重な事だと思います。もしかしたら、去年はダメだったから、自分の中で(100メートルの自己ベストである)11秒21で走った時の走りを美化しているかもしれないので……。早くそのタイムを出して、それが普通の記録になれば、やっと新しいものが見えてくるとも思いますね」

 昨年は表情もどこか沈んでいた福島だが、また明るい笑顔を取り戻して新たなシーズンへ向おうとしている。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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