メダル奪還へ 新生シンクロに見た可能性=五輪銀・鈴木絵美子氏が世界水泳を総括
シンクロの日本代表は、世界水泳でリオ五輪につながる演技ができたのか。アテネ五輪銀メダリストの鈴木絵美子さんが総括した 【写真は共同】
大会を振り返って「五輪が終わってから、日本の技術が成長したところを見せられたと思います」と話すのは、アテネ五輪のチームで銀メダル、デュエットに出場した北京五輪で銅メダルを獲得した鈴木絵美子さん。ただ「もう少し審判もお客さんも驚くようなインパクトがほしかった」とも話す。
強いという印象を与えることがキーポイント
採点競技なので“印象”が強く残り、一度ついた順位は覆りにくいのも特徴。ロンドン五輪直後の今大会は、リオデジャネイロ五輪までの『新しい格付け』が行われる年でもある非常に大きな意味を持つ大会だ。
細かい点数の取りこぼしとインパクトに欠けた日本チーム
チームのTR、FR、フリーコンビネーションこそ4位だったものの、ロンドン五輪で銀メダルを獲得した中国が欠場していた。もうひとつの五輪種目であるデュエットでも5位。ソロは乾友紀子(井村シンクロク)がTR、FRともに5位という位置に甘んじた。すべての種目で1位だったロシアとは、各種目で5〜6点もの差をつけられた。その理由を鈴木さんは、こう分析する。
「『ここでそろえると高得点』というポイントで少しずれてしまって、点数を取れるはずのところでの取りこぼしがあったと思います」
特に水面に体を出す瞬間、逆に沈む瞬間がずれてしまうと、手足の動作が合っていても、全体的にそろっていない印象を受ける。この細かい動作のずれが点数の取りこぼしにつながった。これが日本チームの点数が思うように伸びなかった理由だ。
「せっかく難易度も高い演技に挑戦して、完成度も高いのに、細かい部分で減点されてしまう。もったいないな、という印象です」
難易度の高い演技であっても、技の完成度は高かった。これは日本チームが成長した証だが、演技そのものではなく、ほかの部分で減点されてしまうのはもったいない。また、全体的にそつなくこなした印象が強く、『日本が大きく変わった!』というインパクトは弱かった。
日本と対照的だったのが、ウクライナである。昨年のロンドン五輪予選で日本に敗れ、五輪に出場できなかった悔しさが、今大会の演技に表れていた。それが観客を巻き込む表現力につながり、大きなインパクトを世界に与えた。
「悔しさをバネに、今年こそ! という勢いがありましたし、前評判はあまり良くなかったスペインも、世界水泳前に行われた大会で日本に得点で並ばれたことに奮起して、絶対に負けたくない気持ちが見えました」
気持ちと演技が完全に一致して勢いとなり、結果として、ウクライナは日本を上回る演技を見せたのである。日本チームには、この勢いから生まれるインパクトを観客にも、審判にも与えることができなかった。