メダル奪還へ 新生シンクロに見た可能性=五輪銀・鈴木絵美子氏が世界水泳を総括

田坂友暁

新たなチャレンジが確実に実を結びつつある

デュエットの乾(左)と足立組は、かねてより課題だった同調性を高めて、世界水泳では成長した姿を見せた 【写真は共同】

 しかし、鈴木さんが最初に話したとおり、日本の成長した姿も随所に見られた。
「デュエットを組んだ乾選手、足立夢実選手(東京シンクロク)は身長差がありますが、水中から見てもそれを感じさせない演技をしています」

 足立を支える、身長差をカバーできるほどの瞬発力と、乾の優雅さがうまくマッチしていた。そもそも2人ともソリストであり、デュエットのためにずっと一緒に演技を合わせてきたわけではない。その中で、五輪からの課題でもあった同調性は高くなっていた。
「ソリスト同士がデュエットを組むのは、とても難しい。日本が新しいことにチャレンジしている証拠でもあります」

 チームでは、メンバーのひとりがケガで欠場するアクシデントに見舞われた。しかし、「足場の組み方が少しでもずれてしまうと高さが出ない難しい技」というリフトも、ミスなくこなすことができた。これは控えの選手を含めた一人一人の技術の高さが、こういったアクシデントにも対応できる力となっている。
「チームの曲はロンドン五輪と同じですが、振り付けはガラッと変えている。かなり難易度の高い演技です。特に、難しい足技を増やしているにも関わらず、同調性のレベルが高くなっている。その部分でしっかりと日本の技術の高さをアピールできていたと思います」

 その象徴的な演技が、全員で扇が開いたように見える足技だ。あれほど選手が近づいた状態で体を安定させて、優雅に足を動かす演技はかなり難しい。それを見事にこなし、観客から大きな拍手を受けたことは、選手たちの自信にもつながるだろう。
 最終日に行われたフリーコンビネーションでも、同調性はかなり高いレベルで安定していた。少しずつかもしれない。だが、着実に一歩一歩成長しているのである。

目指すべき方向性は自分たちの武器を見つけること

 今大会において、日本チームは『世界第5位』という格付けがなされた。リオデジャネイロ五輪まで、あと3年。この格付けを覆すために、日本チームは何を課題とすればよいのだろうか。

「今までの日本の強みは同調性でした。しっかりと全員で足並みをそろえる演技です。ここが日本の武器であり、強みでもあり、選手たちの自信の源でもありました。ですが、今はそれだけでは世界と戦えないほど、全体のレベルが高くなっています。これからの日本に必要なのは、それぞれが稼働域を最大限に使った演技をきちっと決めること。これが、日本の武器である同調性を、さらに高いレベルで完成させることにつながると思います」

 さらに鈴木さんは、こう付け加えてくれた。
「自分たちの武器があると、誰かに言われた自信ではなく、自分の中から湧き出る自信につながります。その自信が、演技の勢いだったり、表現力につながったりする。それが足技でも、同調性でも良い。これだけは世界で誰にも負けないんだ、という武器を自分たちで見つけて、それを磨いていってほしい」
 完璧な同調性を誇った、かつての日本の強さはなくなったかもしれない。だが、その同調性を捨ててでも、今の日本チームが求めたのは、技術力の高さとスケールの大きな演技。彼女たちは、それを少しずつ自分たちのものにしつつある。技術力の完成度が上がったならば、次はレベルの高い技の同調性を高めていくことが、日本チームを飛躍させるきっかけとなるだろう。

 まだまだ荒削り。これは現時点で5位の日本に、大きな伸びしろが残されている証拠でもある。自分たちの持っている伸びしろをどう生かすことができるのか。リオデジャネイロ五輪までの道のりは険しい。しかし、それを乗り越えられるだけのポテンシャルを秘めている。もう一度、世界が感動する日本チームの演技を私たちに見せてほしい。

<了>

鈴木絵美子氏プロフィール
 1981年生まれ。埼玉県出身。小学3年生からシンクロを始めて、17歳ではじめて国際大会に出場。アテネ五輪ではチームで出場して銀メダルを獲得。さらに北京五輪では、原田早穂と組んだデュエットで同調性の高い演技で観客を魅了して銅メダルを獲得した。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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