ウオッカ敗れる……新女王エイジアンウインズ!=ヴィクトリアM
エイジアンウインズ(中)がウオッカ(左)を撃破、新マイル女王に 【スポーツナビ】
一方、武豊騎乗の1番人気ウオッカは追い込み届かず4分の3馬身差で2着惜敗。完全復活はならなかった。なお、3着にはインから早め先頭の3番人気ブルーメンブラット(牝5=石坂厩舎)が粘った。
作戦どおり、道中は絶好ポジションを確保
最後の直線は(左から)ウオッカ(黄帽)、エイジアンウインズ(赤帽)、ブルーメンブラット(白帽)の叩き合いに 【スポーツナビ】
「強い馬だとは思っていたけど、ウオッカを負かすまで力をつけているとはね。ビックリしましたよ」
初騎乗で殊勲の手綱をとった名手・藤田でさえ、舌を巻いた大舞台での能力開花。それほどまでに、エイジアンウインズの快走はインパクト大の勝利だった。
レースは好スタートから6番手の好位を追走。最大のライバル・ウオッカはその真後ろでレースを進めていた。この道中の位置取り、作戦について藤田が振り返る。
「レース前はハナを切るとか新聞で言われていたみたいだけど、ハナだけは絶対に行く気はなかった。馬に囲まれて競馬をしたかったんです。今後のためにもね」
藤原英調教師とこれまで以上に作戦会議を重ね、また、トレーナー自ら土曜の夕方に3〜4コーナーを歩いて芝のコンディションをチェック。調教師からの助言と、ジョッキー自身が土曜の京王杯SCで得た感触から、「内の悪いところだけは通りたくない」と判断。枠なり(3枠6番)に内ラチから6頭分外の馬場を通ることができれば……と頭に描いていた。レースはまさに、陣営が描いたドンピシャの形で進む。
「その通りになりましたね。また、スタートが上手だし、その位置が確保できるだけのスピードを持った馬。僕は誘導しただけです」
3歳時は桜花賞をパス、厩舎の我慢が生んだ勝利
GI通算10勝目となった藤田は馬上で勝利の雄たけび 【スポーツナビ】
「窮屈なところがありましたけど、すごい勝負根性で抜けてくれたし、強い競馬だったと思いますね。調教師には頭が下がる思いですし、本当に陣営の渾身の仕上げだったと思います」
そして藤田は、第一声こそ「ビックリした」だったが、「きょうは正直、自信があったんです。期待に応えてくれた馬を褒めてあげたい」と、会心のウオッカ打倒、そして2005年の安田記念(アサクサデンエン)以来となる区切りのGI10勝目に笑顔を浮かべた。
この勝利はまた、藤原英厩舎の我慢の賜物でもあった。体質面の弱さがあったエイジアンウインズは、デビューから3歳時の昨年前半はダート戦を使われ、3月に2勝目を挙げたが、そこで休養を選択。3歳牝馬なら誰もが目標にする牝馬クラシック、GI桜花賞とGIオークスをアッサリとパスした。藤原英調教師が当時を振り返る。
「桜花賞をパスしてヴィクトリアマイルを使いたいという一心でした。あの時に芝のレースを使っていたら、ダメになっていたと思いますね」
暖かい宮崎の牧場で成長を促すための放牧に出し、期待通りの成長、体質強化で栗東に帰厩。「芝もいける体の強さになったので、芝を使い始めました」と、休養明け2戦目の昨年11月宝ヶ池特別(2着)から満を持して芝路線に転向すると、素質開花とばかりにとんとん拍子で勝ち上がる。初重賞挑戦となった前走のGII阪神牝馬Sを勝利し、そしてGIヴィクトリアマイルV。期待通りの、いやそれ以上とも言える破竹の勢いで頂点に上り詰めたのだ。
最強世代にまた新たなヒロイン、秋は統一女王を目指す
まだまだ強くなる最強世代の新ヒロイン、秋にはダイワスカーレットも倒し統一女王を狙う 【スポーツナビ】
「生まれた時から期待していた馬ですから、感慨深いですね。歳もまだ若い馬ですし、牝馬路線になりますけど、これから距離の幅も広げて、また頂点を目指したい」
具体的なレース名こそ控えたものの、牡馬とのレースは避けたい意向から、今後は秋のGIエリザベス女王杯(2200メートル芝)が大きな目標となる。距離は一気に600メートルも延長されるが、進化し続けるエイジアンウインズならば克服は可能だろう。
ダイワスカーレット、ウオッカらが揃う“最強世代”に誕生した新たなヒロイン。秋は真の統一女王を目指す。