川崎市立橘高校が考える。U等々力のごみ問題解決案

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

夏休み前、川崎市立橘高校の2、3年生547人が脱炭素社会の実現を目指した探究学習の発表会を実施した。主な内容はSDGs実現に向けた視点で興味や関心があるテーマについて考えるというもの。川崎市のプラスチック資源循環を目指す「かわさきプラスチック循環プロジェクト(かわプラ)」に参画しているフロンターレを含めた7社が抱える課題をそれぞれのクラスが調査し、資源循環をより活性化するためのアイデアを発表してくれた。

現場で感じた課題

【© KAWASAKI FRONTALE】

川崎フロンターレをテーマに選んだクラスでは、気候変動の影響で2018年を境に試合の中止や延期される試合数が5倍も増えていることに着目。将来に向けてサッカーを続けられる社会にするために、CO2排出を削減する気候変動アクションの1つであるゴミの分別を行う大切さを訴えた。

その発表を前に生徒たちはフロンターレがJ1第17節の名古屋戦でゴミの分別を呼びかけるために初めてゴミの分別を呼びかけるエリアとして設置された「エコステーション」にて実際に出るゴミや、どれだけ分別されているのかを目で見て体感してしてもらった。そこで生徒たちは衝撃を受けたという。

「スタジアムに行く前までは、しっかり分別されているのが当たり前だろうと思っていたのですが、実際はビニール袋に可燃ごみとペットボトルをまとめて捨てている人も多くて…。思っていた以上に分別ができていないことに驚きました。あのときから僕たちも分別への意識が高まりました」(生徒)

名古屋戦の来場者は19,463名に加えてスタッフ・イベント業者の約500名が集まり、可燃ごみ(プラごみ含む)1790kg、ペットボトル140kg、カン90kg、ビン5kg、段ボール230kgという大量のゴミのほとんどが分別されていない状況には危機感を覚えた。だからこそ真剣に生徒たちが考えて「どうしたら分別してもらえるのだろうか」と提案したアイデアは熱意が伝わってきたのだろう。

生徒たちの提案

生徒が提案したゴミ箱のイメージ図 【© KAWASAKI FRONTALE】

様々な意見があるなかで最も多かったのが正しくゴミを捨てるとポイントが貯まってグッズと交換できるシステムを導入すること。分別をしたら景品をもらえるのであれば意識的に分別に取り組むようにもなるだろう。なんと言ってもゴミ箱のイメージ図も面白いし、シュール。1度見たら忘れられないデザインだった。これが実現するとしたらU等々力の名スポットになりそうだ。

またゴミの素材は様々であるため、屋台の容器などを紙製かプラスチック製のどちらかに統一するべきでは?といった意見も出た。たしかに最近では今までプラスチック製だったストローが紙製になるなど何かと紙製が多くなってきている印象だ。ただ生徒たちは逆の発想を持っていた。

「プラスチックに統一したほうがいいと思います」

その言葉を教室で聞いたときにハッとした。なんとなくプラスチックは悪というイメージを持ちがちだが、リサイクルをして再利用できるメリットがあるため最も効率的なのではないかと考えさせられた。まさに大人からは簡単に浮かばない発想の1つだった。

「小さい子から大人まで親しみやすいというのをテーマに色んな議論をしました。僕たち高校生と大人の目線は変わってくると思うし、僕たちだからこそ浮かんでくる発想をフロンターレのスタッフの前で発表できたことが嬉しかったです。それにポイ捨てとかがなくなれば人々にメリットがあるし、気候変動も抑えられる。そこに積極的に取り組んでいけばフロンターレをもっと好きになってくれるし、世界も変わっていくと思います。そうしたら僕らも世界もフロンターレもwin-winです!」(生徒)

発表会では様々な提案が生まれた 【© KAWASAKI FRONTALE】

発表をしてくれたクラスの担任の先生も、今回の活動への手応えを感じた。

「フロンターレさんと一緒に活動ができたからこそゴミへの意識を高められましたし、3年間のなかで最もSDGsに踏み込んだ授業ができました。環境問題はハードルが高いように感じますが、実際に肌で感じたことが発表につながりました。本当にフロンターレさんが実現してくれると思って提案してくれたと思います。単純に話し合って考えるだけではなんとなくのアイデアにしかならないですが、実際にフロンターレの試合会場に行って学んだことが多くありました。できると思ったこともあればできないなと感じたものもあったと思います。私も実際に体験して探求することが大事なんだと改めて気付かされました。今後、彼らは色んな進路を考えていますが、どこへ行っても探求し続けてほしいですね」(担任の先生)

生徒たちの提案を実現するストーリーを

充実した学習の場に 【© KAWASAKI FRONTALE】

今回の発表や活動にゴミのデータ化や今後の課題改善におけるアドバイザーという立ち位置で参加してくれた資源循環の領域で事業をしている株式会社RECOTECH(レコテック)執行役員の大村拓輝さんと、クラブスタッフの黒木透も「面白い発想ばかりでした」と舌を巻いていた。

「現場で感じた課題に対してのロジックがしっかりしていた印象です。フロンターレさんにとっても、すぐに取り組めるような提案がたくさんありました。今できることをキッカケに生徒たちの提案を遂行するストーリーができればいいなと思います」(大村さん)

「エコステーションには生徒たちに現場で色々と体感してほしくて来ていただきました。
現状の課題として分別の重要性やフードロスが多いというものがあります。そのなかで生徒たちからどうしたら分別しやすくなるのかという観点で様々なアイデアをいただけました。生徒の発表にもあったように選手が映像や音声などで分別を呼びかけるのはすぐにできることでもあると思うので、これからも生徒たちの意見を生かしながら無理せず地球環境を考えていきたいです」(黒木)

生徒にとってフロンターレにとっても未来につながる発表の場となった。こうした大人たちだけでは浮かばなかった貴重な提案をフロンターレが生かしていくのが次のフェーズ。U等々力が抱えるゴミの課題を解決させるためにも生徒たちの思いを実現し、より良いスタジアムを創り出していってほしい。

(取材:高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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