ベトナムスクール生が日本へやってくる! YOUは何しに川崎へ?
【©KAWASAKI FRONTALE】
フロンターレベトナムスクールの独自性
スクール会場となっている「SORA gardens Links」。フットサルコート4面分のうち、2面が屋根に覆われている 【© KAWASAKI FRONTALE】
朝なら「おはよう!」 昼なら「こんにちは!」 夜なら「こんばんは!」。お別れするときに「さようなら」と使えるベトナム語の挨拶である。この言葉からほとんどのコミュニケーションが生まれ、ベトナムスクールも地元の方々と距離を縮めながら多くの方々に認知されていった。
ベトナムスクールは2021年の開校から毎週約200名の5歳から15歳までのスクール生が参加し、その数字を維持して今年で4年目。ベトナムでは小学校から留年の制度があり、学業に重きを置く文化があるため、習い事が長続きするケースは珍しい。そのなかでも約200名というスクール生を維持できているのは、日本の文化やサッカーの技術を日本人コーチから学べるという独自性があるからこそだろう。
さらに特筆すべきは国内トップクラスの施設。ベトナムスクールを共同運営するベカメックス東急による複合施設「SORA gardens Links」が昨年6月に開業。施設内にはベトナム南部初の本格的な屋根付き人工芝フットサル場が整備されており、5月から10月の雨季には毎日のように夕方から雨が降るビンズンでも濡れずにサッカーができるトップクラスの環境が整っているのも魅力の1つだ。
スクールを支える2人の現地スタッフ
ベトナムスクールの様子 【©KAWASAKI FRONTALE】
吉田は高校卒業後、新潟県にあるJAPANサッカーカレッジというサッカー専門学校に進学。3年間、サッカーコーチに特化した学部で徹底的にコーチングを学んで卒業したのち、2012年からフロンターレのスクールコーチを務めた。もちろんフロンターレスクールでの指導は楽しかった。ただ、専門学校のインターンシップでシンガポールリーグに所属しているアルビレックス新潟シンガポールへ行ったときのことを忘れられない自分がいた。
「シンガポールにインターンシップで行ったときが初めての東南アジアでの指導だったのですが、環境面を含めて東南アジアでサッカーを教えるのがすごく楽しかったんです。だから、また東南アジアでやりたいなって」
ベトナムスクールでコーチを務める吉田健太郎さん 【© KAWASAKI FRONTALE】
「またフロンターレで働けるということが嬉しかったです。いざベトナムで指導をしてみると子どもたちは心を開いてくれたら仲良くなれるけど、シャイで心を開きにくい性格でした。でも、どんな国でも同じでサッカーは一緒にボールを蹴ると楽しくなるんですよ。現地の言葉は難しくてスラスラと喋ることはできないですが、ジェスチャーで仲良くなることもできます。言葉を使わなくてもボールを蹴る楽しさを知ってもらえるように。それが僕の大事にしていることでもあります」
言葉が通じなくても一緒にサッカーボールを蹴れば心は通じ合える。海外でコーチ業をしてきたからこそ如実に感じられるものだった。そのうえで吉田を支えるベトナム人のナム通訳兼アシスタントコーチがいるからこそ、より言語の壁がない指導ができているのだろう。
通訳兼アシスタントコーチを務めるナムさん 【© KAWASAKI FRONTALE】
「僕はベトナムにいたころから、日本語や日本の文化について学んで、日本で仕事をしたいと思っていました。その目標は叶って日本で仕事をできたのは、とてもいい経験になりました。それから妻と相談してベトナムに帰ってからはベカメックス東急で働くことになりました。でもベトナムスクールで働くまでサッカーに関わった仕事はしたことなかったし、指導者もしたことはなかったんです。もちろんサッカーは好きでゴールキーパーをやっていた経験はありますが」
ベトナムスクール開校にあたり、サッカーができて日本語を話せるスタッフをリサーチしているなかで、適任のナムにオファー。それ以来、吉田を含めた日本人スタッフのサポートをしている。
ナムさんが日本留学中に訪れた富山での思い出の写真 【© KAWASAKI FRONTALE】
話を聞いて分かるように吉田やナムだけではなく、日本人スタッフとベトナム人スタッフが協力し合えているからこそ、ベトナムスクールが成り立ち、フロンターレというブランドもベトナム国内で広まっているのだろう。
日本遠征を楽しめ!
昨年の麻生グラウンド訪問時の様子 【© KAWASAKI FRONTALE】
ここで6月28日(金)から7月3日(水)まで滞在する遠征の主な内容を紹介したい。1つ目は川崎スクール、生田スクールとの合同練習。同年代のスクール生同士が国際交流できる機会になるため、お互いに刺激を受けられる時間となる。2つ目に末長事務所の近くに本社がある縁からベトナムスクールをサポートしている株式会社ミツトヨへの表敬訪問に足を運ぶ。「こういった会社が自分たちの活動を支えてもらっているんだ」と小学生年代で感じられるのは、貴重な経験である。3つ目はメインイベントと言っても過言ではない6月29日(土)にU等々力にて開催される広島戦の試合観戦。昨年もスクール生が目を輝かせていただけに、今年も興奮してくれるはずだ。
昨年のトップチーム試合観戦の様子 【© KAWASAKI FRONTALE】
ナムも日本遠征への思いを続けて語ってくれた。
「僕は日本がゴミの落ちていない綺麗な街だということを知ってほしいなあ。あと電車を含めたさまざまな設備に優れている国でもあるので、いろんな勉強ができるんじゃないかなと思う。特にベトナムには電車がないし、バイク移動がほとんどだから電車に乗ったら興奮してくれるんじゃないかなと。基本的にはフロンターレのトップチームバスをお借りして移動する予定ですが、タイミングを見ながら公共交通機関を使えるようにしたいですね。個人としては指導者目線でフロンターレのコーチがどんな仕事をしているのかをしっかり学びたい気持ちもあります。とにかく日本には行くのは5年ぶりだから楽しみ。回らないお寿司屋さんに行きたいなあ」
最後は少し冗談気味にも話してくれたナム。対して吉田が「ダメですよ。回らないお寿司屋さんに行くと予算オーバーです(笑)」と言われて少しガッカリした様子のナムさんはなんだかかわいらしかった。
「気軽に交流をしていただけたら嬉しい」(吉田)
昨年はスクール生がGゾーンに 【© KAWASAKI FRONTALE】
「今回初めて日本に来るスクール生も多いので、僕たちスタッフが少しでも日本の素晴らしさを伝えたい思いでいます。フロンターレサポーターはすごく温かい印象があり、どんな結果でもどんな内容だとしても最後は次に向けてのメッセージを送ってくれる存在だと認識しています。だから勝利に向かって一生懸命応援している姿を子どもたちに見てほしいです。そんなサポーターの皆さんに知っていただきたいのが、私たちのスクール生のなかにもフロンターレのことが好きな子、興味をもっている子がたくさんいるということ。だからスタジアムで見かけたら声をかけてください。英語であれば話せる子も多いので、気軽に交流をしていただけたら嬉しいです」(吉田)
ベトナムでもフロンターレのエンブレムを胸にサッカーをしている。そんな私たちの仲間が今回は日本へ、川崎へワクワクした思いでやってくる。なかにはフロンターレへの憧れを抱いている子もいる。だから声をかけて温かく迎え入れよう。冒頭でも記した挨拶を笑顔で。
「Xin chào!(シンチャオ)」と。
(取材:高澤真輝)
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