ジーコTDが語る、選手育成におけるインフラの重要性。「フラメンゴがそれを証明している」【未来へのキセキ-EPISODE 16】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

 選手育成にとって、何が重要かーー。

 そんな問いに、ジーコテクニカルディレクター(TD)は9年前の話を始めた。

「2012年にフラメンゴの新しい会長を決める選挙戦があって、のちにその新会長となる人物のグループにサポートをお願いされました。そこで僕は条件として、当時はまだ作りかけだったトップチームとアカデミーのトレーニングセンターをしっかり完成させてほしいと要望したんです」

 フラメンゴの象徴的存在ともいえるジーコTDの支持を受けた人物はクラブの会長に当選し、約束どおりその要望を実現させた。すると、施設整備の効果は瞬く間に成果として表れた。

「それまではアカデミーの選手たちの着替える場所もなかったのですが、立派な施設ができて、今では素晴らしい環境が整いました。そこからルーカス・パケタ(現リヨン)、ヴィニシウス・ジュニオール(現レアル・マドリード)、ヘイニエル(現ドルトムント)といった選手も輩出されました。つまり、いかにプロチームやアカデミーのインフラとか環境をよくすることが重要なのかが証明されたわけです」

 鹿島アントラーズにとっても、ジーコTDが説く成功体験は、すでに実証済みの事実となる。顕著なのが、2011年4月に完成した「つくばアカデミーセンター」の実績だ。オープン以来、わずか10年間で6人のJリーガーを輩出し、そのうち町田浩樹、染野唯月、舩橋佑は現在トップチームに在籍。また、ジュニアユースやジュニアのチームも全国大会での優勝を勝ち取るまでになった。

 茨城県つくば市内の2万平方メートルの土地に建てられた「つくばアカデミーセンター」には、人工芝のサッカーグラウンド1面とフットサルコート3面があり、シャワールームが完備されたクラブハウスも併設されている。つくばエクスプレス線の「みどりの駅」から徒歩5分、車では常磐自動車道「矢田部IC」から5分ほどの立地に構えており、県内だけでなく都心からのアクセスも良好。茨城県南地域におけるアントラーズの拠点として、ジュニアユース、ジュニア、スクールが展開されている。

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 さらに、アントラーズの本家である鹿嶋市にも新たな施設ができた。2019年8月にユース所属選手の寮となる「アカデミーハウス」が完成。玄関上の屋根に「Football Dream」の文字があしらわれた建物の内部は豪華絢爛な作りで、メインエントランスを入れば獲得してきた数々のトロフィーが展示され、壁面にはジーコTDをはじめとする歴代名選手のシルエットが描かれている。寮生やスタッフが団らんできるラウンジや、3つの浴槽が設置された大浴場をはじめ、トレーニングルーム、食堂、会議室もあり、サッカーに集中するためのあらゆる機能が備わった施設となっている。

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 それでもなお、未来へ向けた施策は続く。アントラーズは鹿嶋市内に人工芝のアカデミー専用グラウンド建設に着工。今年12月完成予定で、建設費支援のため10月末日まで目標額3億円のふるさと納税型クラウドファンディングも実施している背景には、前述の「つくばアカデミーセンター」とは異なる「鹿島」が抱える課題があり、小笠原満男テクニカルアドバイザーは次のように言及する。

「ジュニアユースとジュニアは決まった練習場所がない状況です。ユースに限って言えば、クラブハウス内の天然芝のピッチを使っているけど、芝生の養生期間で使用できない時期があります。アカデミーで年中思いどおりに使えるようなグラウンドが1つでもあれば、とても大きいことです」

 アカデミーの選手たちにとって満足のいく環境を提供するため、新たな人工芝のグラウンド設立を目指し、アントラーズファミリーの力を結集させようとしている。

未来を作るために必要なこと

 これまでクラブ一丸となって計20の主要タイトルを獲得してきた。これからも勝ち続けていくために、育成の充実が欠かすことはできない。ジーコTDは、こう提言する。

「30年前にアントラーズが設立されたとき、僕はこのサッカー不毛地帯にまず設備の部分で種をまきました。それが約30年かかって、やっといろんな実をならすようになっています。アカデミーも同じように、種をまいて育てなくてはいけません。そのためには水や肥料を与えることが必要で、それが施設やグラウンドというものになるでしょう。各国のクラブの歴史を見ても、いかにアカデミーから育った選手が重要なのかは実証されています。その選手たちを育成し、またアントラーズが勝利を積み重ねていくために、アカデミーは非常に重要な位置づけなのです」

 創設30周年を迎えたアントラーズは今、この先の30年に向けた新たな種をまこうとしている。先人が耕してきたこの土地に、さらなる豊穣のときを迎えるために。

ふるさと納税型クラウドファンディング開催中!御礼(リターン)として12/26(日)にスペシャルマッチ開催!

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内容:アカデミー vs OBスペシャルマッチ観戦(3万円〜5万円コース)
詳細:アントラーズの伝統をつくりあげてきたOBたちが、将来、アントラーズの選手としてプレーすることを夢みるアカデミーの選手たちと対戦
※チケットの一般販売や動画配信の予定はありません。寄附者限定で観戦できるスペシャルマッチとなります。

開催日:2021年12月26日(日)予定

13:00〜13:30 U13アカデミートレセンvsOB
13:40〜14:10 U14アカデミートレセンvsOB
14:20〜14:50 U15アカデミートレセンvsOB
15:00〜15:30 U16 ユースvsOB
15:40〜16:10 U17 ユースvsOB

出場予定現役選手:土居聖真、町田浩樹、上田綺世、沖悠哉、染野唯月、山田大樹、舩橋佑
出場予定OB:本田泰人、名良橋晃、本山雅志、野沢拓也、青木剛、新井場徹、内田篤人、曽ケ端準、柳沢敦、小笠原満男、中田浩二ほか

※出場予定OBは随時発表予定
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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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