アントラーズアカデミーの可能性。柳沢敦、小笠原満男がかける思いとは。【未来へのキセキ-EPISODE 7】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

「トップチームの主役となる選手を輩出する」

 アントラーズアカデミーでは、今年から新たなテーマを掲げた。ユースチームを率いる柳沢敦監督は言う。

「これまではトップのレギュラーとなる選手輩出をテーマにしてきましたが、今年から主役となる選手を目標に掲げました。小さな頃からアントラーズの考え方を理解して育った選手は、トップチームに上がったときにすぐ順応できると考えています。トップチームでもそのアントラーズスピリットを持ちながら戦い、そこから世界へ羽ばたくにしても、やっぱりそのアントラーズのDNAを持ち続けて活躍してほしい。そういった選手をアカデミーで小さな頃から育て上げていければと思っています」

 柳沢監督自身は富山第一高校卒業後にアントラーズに加入し、イタリア・セリエAでもプレーした経歴を持つ。日本代表としても活躍し、W杯にも2度出場した。今では自らの経験とアントラーズのDNAをアカデミーの選手に伝える存在だ。

 そしてもう一人、選手時代にアントラーズとイタリア・セリエA、そして日本代表で戦った人物がアカデミーの指導に携わる。テクニカルアドバイザーを務める小笠原満男だ。

「アカデミーがある意味とは、やはり一人でも多くの選手をトップチームに上げること。クラブとしても、それが理想の姿だと思います。スクール、ジュニア、ジュニアユース、ユースと上がってきても、トップチームに昇格できる子がゼロだったらもったいない。今は移籍が盛んになり、一つのクラブで10年活躍する時代ではない。他の全国の選手たちとの競争が前提になるけれど、アカデミースタッフが頑張って一人でも多くのプロ選手を育て上げること、さらにはそのスピードを上げてどんどんトップに輩出していくことが、アカデミーの最重要目的だと思っています」

【©KASHIMA ANTLERS】

 土居聖真、町田浩樹、上田綺世、沖悠哉、染野唯月、山田大樹、舩橋佑。現在は7人のアカデミー出身選手がトップチームに在籍する。過去を遡れば、これまで37人の選手をトップチームに送り出してきた。曽ケ端準、野沢拓也、鈴木優磨らもアントラーズアカデミーから育った。いずれもクラブに栄光をもたらしたタレントばかりが名を連ねる。今後はその輩出スピードを上げて、海外に移籍する選手が出ても、すぐに力のあるアカデミー出身選手がスタンバイする状況を目指す。

 近年、アントラーズアカデミーでは様々な取り組みに着手している。
 タイトル獲得などの豊富な経験を持つアントラーズOBをスタッフに積極登用しているところも特長の一つだ。また「アカデミーDNA」というクラブの歴史や心持ちから、アントラーズのアイデンティティをまとめた。過去の映像を使いながらポジション別選手の特徴や質を明文化した。より低学年からアントラーズを理解することや、指導における共通理解に役立て目指す方向性を一つにした。選手個々に対するアプローチでは、「アカデミープレイヤーズチャート」を作成。出場試合や映像を含めた選手個々のデータを集約し、プロになる選手がそれぞれの成長過程において、何ができて何ができていなかったかを明確にする取り組みがスタートした。トップチームとの連携強化として、「アントラーズ技術委員会」を設置。トップチームのスタッフを含めたコーチングスタッフ陣が指導方針を議論する機会を作った。アカデミーからトップチームまで一貫した育成・強化体制を確立することを目的とするとともに、クラブ全体でサッカーの質を追求している。

  今や新型コロナウイルス感染症拡大により実施できていないが、アントラーズアカデミーでは、海外遠征を数多く行ってきた。2019年はブラジル、スペイン、イタリア、ロシア、韓国、中国、香港、タイの8カ国でアントラーズの戦いが繰り広げられた。その実績は、2016年から2019年の4年間で47回を数える。異なるサッカー文化を体感し、人種や民族の違う選手たちとしのぎを削る。選手はそんな何物にも代えがたい経験を積み重ねてきた。すべては、アントラーズのトップチームで主軸となる選手育成が目的だ。

ブラジル遠征でサントスと対戦するアントラーズジュニアユース 【©KASHIMA ANTLERS】

 アントラーズアカデミー全体では、実に2680人(2021年2月時点)の子どもたちがサッカーに打ち込んでいる。スタッフによる指導理念も一貫して、「献身」「誠実」「尊重」から成るジーコスピリットを継承。勝者のメンタリティーを兼ね備えた個性ある選手の育成と、“生活のなかにアントラーズがある”をテーマに普及を目的としている。

 アカデミーの存在はヒエラルキーのように示されることがある。アントラーズの場合はトップチームが頂点に君臨し、その下にユース(高校生)、ジュニアユース(鹿島・ノルテ・つくば/中学生)、ジュニア(鹿島・ノルテ・つくば/小学生)、スクール(鹿島・神栖・行方・鉾田・美浦・銚子・ひたちなか・日立・日立折笠・高萩・常陸大宮・内原・つくば・土浦・常総・下妻・結城/小学生・幼稚園児)と続く。各カテゴリーの人数は裾野になるほど多くなる。この裾野を大きく広げることは、より大きな礎を築くことにもつながり、スクールの拡大も目指すところの一つ。裾野からじっくりと未来に向けた取り組みを続けている一面も持ち合わせるのがアカデミーの存在でもある。トップチームを支えクラブの未来を築いていると言っても過言ではない。

 アカデミーチーム・マネージャーの高島雄大は、未来への手応えを持つ。
「この10年でつくばアカデミーセンターの新設、折笠スポーツ広場の整備協力、寮の新設、今はクラウドファンディングで鹿島のグラウンドを作り始めてハード面が充実してきました。またソフト面としては、プロの選手に求められることから逆算して、個別アプローチを重視。小笠原TAや柳沢ユース監督らOBを中心としたテクニカルスタッフが、特徴ある選手育成に注力してくれています。アントラーズのサッカーを知り尽くしていて、現役時代に感じたユースから上げる選手はこうあるべきというものに対して、一番強い思いや危機感を持って取り組んでくれています。ハード面とソフト面が充実してきたことで、サッカー面でもやれることが増えてきました。今後に向けて期待が持てるし、すごく可能性があると感じています」

 すべては、トップチームの主役となる選手を育てるために。未来のアントラーズを背負いし者が育まれる土壌は、鹿島、つくば、ノルテの3拠点を中心にホームタウン各地で着実に耕されている。

「アントラーズの未来をみんなで」申込受付中!

【©KASHIMA ANTLERS】

■企画名
クラウドファンディングプロジェクト「アントラーズの未来をみんなで」
■特設ページURL
クラブ特設サイト:https://www.antlers.co.jp/lp/crowdfunding_2021
申込サイト:https://readyfor.jp/projects/antlers_GCF2021
■実行者
鹿島アントラーズ×鹿嶋市
■目標金額
3億円 ※10月7日現在、26%達成中
■公開期間
2021年9月3日(金)〜10月31日(日)23:00
■形式
寄付型 / ALL-IN形式 
※目標金額の達成の有無に関わらず、集まった寄付金を受け取ることができる形式。
■詳細
READYFOR株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役CEO:米良はるか)が運営する日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を活用したふるさと納税型クラウドファンディングとなります。「READYFOR ふるさと納税」の仕組みを使い、プロジェクトへの寄付は税制優遇の対象となります。本プロジェクトは鹿嶋市ふるさと納税のため、ふるさと納税の制度上、鹿嶋市民の皆様が寄付をする際は提供できる御礼(リターン)に制限がございますので、あらかじめご了承ください。
■御礼(リターン)の一例
内容:アカデミー vs OBスペシャルマッチ観戦(3万円〜5万円コース)
詳細:アントラーズの伝統をつくりあげてきたOBたちが、将来、アントラーズの選手としてプレーすることを夢みるアカデミーの選手たちと対戦
開催日:2021年12月26日(日)予定
出場予定OB:本田泰人、名良橋晃、本山雅志、野沢拓也、青木剛、柳沢敦、小笠原満男、曽ケ端準、中田浩二、新井場徹
※出場予定OBは随時発表、アカデミー出身の現役選手も出場予定
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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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