ハイレベルな首位攻防戦も2セットリードから悔しい逆転負け【NECレッドロケッツ】

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【NECレッドロケッツ】

 リーグ戦では昨年12月から5連勝と好調をキープするレッドロケッツ。30日に相手のホーム、ウカルちゃんアリーナに乗り込み、今季ここまで16戦負けなしで首位をひた走る東レアローズと対戦した。レギュラーラウンド終盤に迎えた1位と2位の直接対決という大一番は、無観客のリモートマッチで開催されたためにやや寂しさはあったものの、両者の意地と意地がぶつかり合う首位攻防戦にふさわしい好ゲームとなった。
 
 古賀が「東レさんには前回の対戦で悔しい思いをしている」と語ったように、昨年10月末の同じカードでは、東レがストレートで快勝。だからこそレッドロケッツ陣営の「今度こそ絶対に勝つ」という思いは強く、金子監督によれば、「順位が上にいることも選手のモチベーションになっていた」という。この一戦に向けた準備にも抜かりはなかった。

抜かりない準備で頂上決戦に挑んだ金子監督 【NECレッドロケッツ】

主導権は常に先行していたレッドロケッツ

 そうしたことをすべてひっくるめて、レッドロケッツの気迫はいつも以上だった。曽我が左手でうまく押し込んで先制すると、ネリマンや古賀が続き、山田は速攻とブロックで連続得点。終始、2、3点をリードしては東レが追いつくという展開が繰り返されたが、主導権は常に先行していたレッドロケッツにあった。

 得点後の選手たちのガッツポーズにも力強さが漲っていた。18-18から上野の速攻、小島の好守からネリマンが決めて抜け出すと、22-19からは古賀がブロックやスパイクで3連続得点を挙げ、幸先よく第1セットを先取した。

両チームトップの28得点を叩き出し、アタック決定率50%。圧巻の活躍が続く古賀紗理那 【NECレッドロケッツ】

静かに闘志を燃やしていた澤田

前回の東レ戦ではコンディション不良でベンチ外だった澤田 【NECレッドロケッツ】

 前回の東レ戦ではコンディション不良でベンチ外だった澤田は、静かに闘志を燃やしていた。「(東レは)サイドの3選手のイメージがとくに強くて、多少崩れてもその3人が打ち切って点が取れる。でも、自分たちもオフェンス面では負けていないと思うので、そこは自分がアタッカーの個性を生かして1点を取っていきたいです」
 
 さらに「相手は高いとわかっているので、トスはアタッカーの打点を生かすことを意識することと、Bパス時でもミドルやバックアタックなど、自分たちの強みを出してオフェンス展開をしていこうと考えていました」とも語っている。第1セットは概ね理想的な戦い方を披露でき、それは第2セットに入ると、さらに勢いを増した。

一気呵成の攻撃、あっという間の9連続得点で2セット連取

 0-1からの一気呵成の攻撃は、実に鮮やかだった。山田の速攻に始まり、古賀の2本のサービスエースを挟んで、再び山田が速攻とブロックを決めるまで、あっという間に9連続得点。

 曽我もブロックで仕留めて11-2とすると、相手は早くも2回のタイムアウトを行使せざるを得なかった。スタンドに観客はいなかったが、控え選手たちが声をそろえてコートのメンバーを盛り上げる。

 「いいぞ!いいぞ!ネーリ(※ネリマン)」「いいぞ!いいぞ!ハーナ(※山田二千華)」

最高のリズム、空気で1・2セットを連取したレッドロケッツ 【NECレッドロケッツ】

 それ以降も澤田の多彩なトスワークから着実に得点を重ねた。

 2回目のテクニカルタイムを過ぎて、相手のサーブミスが目立ったのは、少しでも際どい所を突いてレッドロケッツの攻撃を封じようとしたためだろう。ただ、古賀や小島が入ることが多かったサーブレシーブも安定しており、乱れることはほとんどなかった。20点以降の東レの猛追は激しかったが、それまでの大量リードにも助けられ、最後は山田が速攻とサービスエース。このセットも25-19でレッドロケッツがものにする。

ブロックもアタックも冴えわたった山田二千華 【NECレッドロケッツ】

「チームで組織的に動けていれば、どのチームにも負けない強さがある」古賀

 第2セットまでを終えて、古賀は確かな手応えを感じていた。「私自身も集中していましたが、チームで勝つということが一番大事。相手の強力なサイド陣を抑えられたのが、私たちが1セット目と2セット目を取れた要因だと思います。チームで組織的に動けていれば、どのチームにも負けない強さがあると思っています」
 
 しかし、第3セットに入ると、東レが首位チームの強さをじわじわと見せ始めてきた。レッドロケッツも澤田の右腕いっぱいに伸ばしたワンハンドトスを山田が押し込み、ネリマンのアンダーハンドパスを古賀が決め切るなど、全員によるギリギリのプレーで食らいついたが、6-8、14-16と追いつけそうで追いつけない。

 15-18から曽我の活躍で同点としたものの、すぐに引き離されてしまった。23-25で惜しくもセットを落とすと、続く第4セットも中盤まで13-10とリードしながら、終盤に走られて22-25。セットカウントで並ばれると、ファイナルセットも相手の勢いを止められなかった。12-15で落とし、悔しい逆転負けとなった。

勝利ならずも、可能性を感じさせる内容

敗戦直後には悔し涙も。そのメンタリティがさらなる成長の糧に… 【NECレッドロケッツ】

 澤田は「終盤にかけてトス回しも偏ってきたり、自分自身が焦ってアタッカーを生かし切れなかった」と反省した。「あと1セット取れば勝てると、自分の中で勝ち急いでしまった部分が少しあったかもしれません。セットスポーツなので、1セット1セットを大事にして、最後までしっかり相手と駆け引きしながら攻め続けていかないといけませんでした」

 金子監督は、第3セット以降について、「相手をCパスにしてからのブレイクが取り切れなかった部分があった」と分析する。「サーブに関してはきちんと機能していたので、相手を苦しい状況にはできたと思いますが、その2本目と3本目の精度の違いがCパスのブレイク率が上がらなかった原因かなと。相手のサイドの選手には、やられたというよりは、やらせてしまったという印象が強いです」

 曽我は試合後、「前半のバレーができていれば…。最後までやり切ることができなかった」と悔しさをにじませた。古賀は「後半に入って集中力が切れたプレーが多かった」と口にしたが、決してそんなことはないだろう。勝利は手にできなかったが、少なくとも完膚なきまでに叩かれた前回の対戦時よりは可能性を感じさせてくれる内容だった。レッドロケッツは成長を止めないチームだ。敗戦直後、悔しさのあまり目に涙を浮かべている選手もいたが、そういうメンタリティがさらなる成長の糧になるに違いない。

決定率56.2でチームトップ。リーグ制覇には絶対に欠かせない上野香織

12月のとどろきアリーナでのホームゲーム以来、4試合ぶりにスタメン出場の上野が躍動 【NECレッドロケッツ】

Hot Topics 上野香織

 昨年12月のとどろきアリーナでのホームゲーム以来、4試合ぶりにスタメン出場を果たした。金子監督はその狙いについて、「彼女は実績もありますし、ここ数試合は途中から出て活躍してくれているということを考えて起用しました」と語ったが、上野自身の頭にあったのは、「ただ勝つのみ」というシンプルな思いだけだった。

 「今週は良い状態で準備ができていたので、それをコートで出すだけだと思っていました」
 
実際、東レアローズに対しては、アタックが16打数で9得点。決定率56.2%は、同じミドルブロッカーである山田の53.3%や曽我の51.4%、古賀の50.0%を上回り、チームトップの高水準だった。ただ、金子監督は上野の単なる得点とは別に、「高い相手に対してのワンタッチブロックで非常にプラスの働きをしていましたし、オフェンスの部分でも大きい外国人を相手にしっかり振り抜いていくというのはチームにとって大きかった」と高い評価をしている。

 それでも上野に満足感はない。コートに立つ以上、「決めてナンボ」だからだという。「たぶん満足することはありません」と口にした裏には、もっとできる、まだまだやれる、といった強い意志が感じられた。「チームに貢献できることは、探せばいくらでもあります」と淡々と語る姿からは、チーム所属年数では島村に次ぐ8年目というキャリアの長さに改めて気づかされる。

 昨季まで取り組んでいたジャンプサーブを今季からジャンプフローターに変えた。どちらのサーブもそれぞれ一長一短だが、上野は「ジャンプサーブは相手の懐に入ったらチャンスにされてしまい、ブレイクが取りにくくなる。ジャンプフローターは安定性があるので、より多くブレイクが取れるはず」との判断から決めた。この日は新サーブが必ずしも効果的ではなかったが、サーブ後にレシーブで相手の攻撃に食らいつくシーンは何度かあった。

 華麗なプレーはそれほど多くない。チームの先頭に立ってぐいぐい引っ張るような派手な存在ではないかもしれない。しかし、上野のような〝いぶし銀〟の力がレッドロケッツのリーグ制覇には絶対に欠かせない。
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著者プロフィール

V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN(V1女子) に加盟する女子バレーボールチーム。日本リーグで優勝1回、Vリーグでは優勝7回、天皇杯・皇后杯1回、黒鷲旗でも2回の優勝実績がある。2021年、これまでの歴史を継承しながら、更なる進化を遂げるためチームのリブランディングを実施し、ホームタウンを神奈川県川崎エリア、東京エリアとした。チームのエンブレムであるロケット胴体部の三層のラインは、ロケットに搭乗しているチーム、サポーター、コミュニティを表現。チームに関わるすべての皆さまに愛され、必要とされる欠かせない存在になることを目指す。

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