山口すず夏、政田夢乃ら今季注目の若手プロを数多く輩出 中嶋常幸プロ主宰“トミーアカデミー”の指導とは

北村収

トミーアカデミー生の練習を見守る中嶋常幸プロ 【写真提供:森ビルゴルフリゾート株式会社】

 日本ツアー48勝を誇り、全米プロ3位、マスターズ8位など世界の舞台でも活躍してきた日本ゴルフ界のレジェンド、中嶋常幸プロが主宰する「ヒルズゴルフトミーアカデミー(以下「トミーアカデミー」)」。米国女子ツアー6勝の畑岡奈紗、国内男子ツアー2勝の河本力、国内女子ツアーで1勝を挙げた蛭田みな美、小滝水音など、数多くのトッププロを輩出してきた。

 2012年にスタートして今年で14年目となるが、昨秋の女子プロテストでは出身若手選手の7名が合格。今シーズンは、レギュラーツアーやステップ・アップ・ツアーでの活躍が期待されている。

技術だけでなく、フィジカルとメンタルを鍛える

 トミーアカデミーの生徒たちが口を揃えて語るのが「トレーニングの重要性に気づけたこと」だ。それまでスイングやコースマネジメント中心の練習をしてきた生徒たちも、中嶋プロの指導のもとで、フィジカルの強化に取り組むようになる。

「打つ技術も大事だが、それを支える体、その両方を統括する心が必要」と語る中嶋プロ。アカデミーの合宿には松山英樹プロのトレーナーでもある飯田光輝氏も帯同。「みんなと一緒にやるから自分を追い込める」とアカデミーの合宿では体づくりのトレーニングが徹底的に行われる。

 トミーアカデミーの生徒は日本全国、さらには海外から合宿に参加する生徒もいるが、地元に戻ってからも自分でできるトレーニングを続けている。

 そしてなんといっても中嶋プロならではの指導の真骨頂は、世界の強豪選手を相手にトッププロとして戦ってきた経験を踏まえた様々な話だ。優勝争いのプレッシャー、極度の緊張で食事が喉を通らなかった経験など、リアルな経験を包み隠さず生徒たちに話す。ただし、中嶋プロは「答え」を与えない。「ヒントを生徒に与え、自分で咀嚼し、自分のものにすることが大切」と語る。そして、強くなる生徒は積極的に質問をしてくる傾向があるという。受け身ではなく、自ら考え、行動することが、ゴルファーとしての成長につながる。

アカデミー生に様々な話をする中嶋常幸プロ 【写真:北村収】

世界で戦った中嶋常幸プロならではの座学とは

 筆者は長年にわたりトミーアカデミーを取材してきた。生徒たちに話を聞くと、世界で活躍してきた中嶋プロからしか学べないことが数多くあるという。

 現在、男子アマチュアランキングで日本人最上位につける隅内雅人も、その一人だ。「中嶋プロの教えには、自分が考えていることとは全く異なる視点が多いんです。例えばスイングに関して、一般的には部分的に修正しがちですが、中嶋プロはライや状況を作ったうえで自然と体の動きがそうなるんだというような指導をされます。視点や着目するポイントが、他とは大きく違っています」と語る。

 また、昨秋のプロテストに合格し、QT(クォリファイングトーナメント)でも上位に入り、今季レギュラーツアーの開幕を迎える入谷響も、中嶋プロの言葉が大きな支えになっているという。「『チャンスをつかむ』という話をされたことがあり、とても参考になりました。優勝した時、一度流れが切れてしまったかと思いましたが、我慢を重ねるうちにバーディが再び取れるようになり、結果として優勝につながりました。その時、中嶋プロの言う『チャンスをつかむ』ことの大切さを実感しました」と振り返っていた。

 中嶋プロの全ての話を、アカデミー生たちは咀嚼し、考え、さらに分からない時は中嶋プロ本人に質問をして、自分のものにしていく。中嶋プロの言葉一つひとつが、生徒たちの血肉となっている。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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