国境を越えた連携で費用は主催者が負担 アジアゴルフ界で急成長する東南アジアのジュニアたち

北村収

様々な国の選手と、様々な国・地域でプレーすることの重要性

トーナメントオーガナイザーであり、「UUMISM」というインターナショナルスクールのマネージングディレクターを務めるデビッド・ジョン(David Jeong)氏 【写真:北村収】

 ジュニアゴルファーの成長には、海外選手との交流や海外での試合経験が欠かせない。異なる国の選手と競い合い、様々な国や地域でプレーすることで、若手ゴルファーたちの競技力が磨かれ、国際舞台で戦うための土台が築かれる。このように話してくれたのは、「第4回セランゴール国際ジュニアゴルフ選手権2025」のトーナメントオーガナイザーであり、「UUMISM」というインターナショナルスクールのマネージングディレクターを務めるデビッド・ジョン(David Jeong)氏だ。

「私はマレーシアのジュニア選手たちに国際レベルの戦いを経験する機会を提供したいと考えています。そのために大会ではアジア各国の選手を招待しています」

 今大会にはアジア各国からチームが参加。マレーシア、タイ、フィリピン、韓国、中国、日本といった各国のジュニア選手が一堂に会し、競い合いながらスキルを磨いている。

 大会を通じて、選手たちは単に競技をするだけでなく、「選手は自国以外の友人をつくることができ、自らを成長させる」とデビッド氏は国際交流の積み重ねが、次世代のゴルファーを強くすると語る。

 なお、この大会の優勝者にはプロトーナメントであるアジアンツアーの2部ツアーに出場できる権利が与えられる。これはジュニアゴルファーにとって大きなモチベーションとなり、さらなる成長の機会をもたらすと話してくれた。

「招待し、招待される」国境を超えた連携

マレーシアゴルフ協会でナショナルジュニア育成プログラムを統括するスタンリー・ルー・スウィー・ホック(Stanley Loo Swee Hock)氏。 【写真:北村収】

 ジュニアゴルフの発展には、技術向上だけでなく、競争の場と国際経験が不可欠だ。だが、ネックとなるのはその費用。プロでもアマチュアでも、ゴルフはプレーフィーや遠征費を選手が自己負担するのが一般的だ。

 しかし、「第4回セランゴール国際ジュニアゴルフ選手権2025」では、宿泊、朝食・昼食、練習ラウンド、練習ボール、空港とホテル、ホテルとゴルフ場の移動バスまで大会側が負担。経済的な理由で国際経験を諦めていたジュニア選手にも門戸が開かれ、海外勢も参加しやすい環境が整っている。

 マレーシアゴルフ協会でナショナルジュニア育成プログラムを統括するスタンリー・ルー・スウィー・ホック(Stanley Loo Swee Hock)氏は、こうした手厚いサポートは「アジアでは一般的な慣習」と語る。

 さらに「私の夢はアジアのジュニア選手が成長すること。そのためには、各国が“相互交流プログラム”を持つことが欠かせません。ある国の大会が選手を招待し、滞在費などを負担する。次回はその招待国が大会を開催し、同様のサポートを提供する。このような招待し、招待される連携ができている」と話してくれた。選手の経済的負担を軽減する動きが、アジア地域では国を超えた連携で加速している。スタンリー氏の視線は、アジアにとどまらない。

「将来的には、ヨーロッパや中東の選手も招待できるようにしたい。できる限り多くの国々に門戸を開くことが目標です」

 ジュニアゴルフの大舞台は、いまだ欧米が中心。しかし、この流れが続けば、アジアが次世代ゴルファーの拠点になる日がくるかもしれない。

東南アジアのジュニアゴルフから見る日本の今後の展望

 東南アジアのジュニアゴルフの発展には、国や地域を超えた交流、政府や企業の積極的な支援、そして世界アマチュアランキングの対象となる競技会の充実が大きな役割を果たしている。このような環境が整備されることで、選手たちは早い段階から高いレベルの競争を経験し、着実に実力を伸ばしている。

 こうした中で、各国のジュニアゴルファーが「招待し、招待される」形で参加する、いわば国際的な交流の仕組みが東南アジアを中心に広がっている。しかし、日本のジュニア選手の参加は現時点で少なく、国際舞台での経験値を積む機会を十分に活かしきれていないのが現状だ。

 そもそも、こうした国際交流の仕組みは、ジュニアゴルファーが技術を磨くためだけのものではない。異なる文化や価値観を持つ選手たちと交流することで、多様性を理解し、国際社会で活躍できる人材として成長することも重要な目的の一つだ。競技の場を超えた人間的な成長の機会として、多くの東南アジアのジュニアゴルファーがこの経験を通じて、より広い視野を身につけている。

 日本も海外のジュニア大会との連携をさらに深め、日本のジュニア選手が招待を受ける機会を増やすとともに、海外の選手を積極的に受け入れることで、国際的な交流を一層活発にしていくべきではないだろうか。この取り組みは、日本のジュニアゴルファーの競技力向上に貢献するだけでなく、多様性を理解し、国際的な視野を持つ成熟した大人へと成長するための貴重な経験となるはずだ。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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