小さな体に大きな使命を帯びた河村勇輝 上昇一途の司令塔がNBAで成功するために必要なものとは?

杉浦大介

フィールドゴール成功率の向上は必須

フィールドゴールの成功率が高まれば、マジカルなパスワークもさらに生きてくる。NBAでローテーション入りするためにも、改善が必要なポイントだ 【Photo by Soobum Im/Getty Images】

 このように上昇一途の河村だが、もちろんまだ「NBAで成功した」とは言えない。実績の多くはGリーグで築いたもので、NBAでの立場が確立されたわけではないのだ。出場機会も現状では大差がついたゲーム終盤に限られており、より重要な場面で起用されるようになることが今後の目標だろう。

 聡明な河村自身も、当然ながらそういった自分の立ち位置は理解している。

「NBAはずっと夢の舞台でしたし、まずそのメンバーの一員になれたことは光栄です。でもやっぱりここで終わらせてはいけない。自分の目標はコートに立ち、チームの勝利に貢献できるような選手になることです。そう簡単にはいかないと思いますけど、1日1日、コーチングスタッフやチームメイトに認めてもらいながら成長し、いつかローテーションに入って、勝利に貢献できるような選手になりたいと思っています」

 その目標に到達するためには、まずはここまでNBAでは36.4パーセント、Gリーグでは34.5パーセントというフィールドゴール成功率の向上は必須。より高確率でシュートを決められるようになったとき、“まるで魔法のよう”とも形容される河村自慢のパスワークがより生きてくる。また、ディフェンス面は前述の通り、ここまで致命的な弱点になっているわけではないものの、NBAでのローテーション入りを目論むのであればさらなる改善が必要になってくるだろう。

とにかく毎日毎日、証明し続ける

小さな体で大男たちを手玉に取る河村のプレーは、アメリカのファンにも支持されている。シンデレラストーリーは成就するのか、日米を問わず大きな関心事だ 【Photo by Justin Ford/Getty Images】

 河村なら、こうした課題もいずれ克服するに違いないが、それでも次から次へと有望株が現れるNBAでは悠長なことは言っていられない。

 大切なのは常に上昇気流に乗り続けることであり、そのためには潜在能力をフルに発揮するだけでなく、ハイレベルな適応能力も求められる。それを示し続けた先に、「現役最短躯の選手が世界最高のリーグに定着する」というシンデレラストーリーの成就が見えてくる。

「いつ(NBAロースターから)カットされるか分からない状況ではあります。とにかく毎日毎日、証明し続けること。ハッスルであれ、グリズリーズであれ、プレータイムがあるのであれば、そこでとにかく自分がプレーできることを見せないといけない。先のことを見据え過ぎずというか、今目の前にある1日、1秒を大切にしながらプレーできればいいなと思います」

 いつでも自分を客観視できる23歳の言葉は謙虚であり、同時に向上心に満ちている。日本が生んだ若き司令塔は悲願のNBAデビューを果たしても、依然として夢の途中。はたして今後、アメリカでどれだけのハイライトを生み出してくれるのか。同世代に生きる私たちは、このエキサイティングでスリリングなストーリーの同行者になれたことを喜ぶべきだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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