漫画「灼熱カバディ」感謝祭をリアル競技者が開催、普及貢献に感謝
選手を代表して手紙を読んだのは、同作品をきっかけに競技を始めた選手として、初めて日本代表入りを果たした倉嶋彪真。高校時代に友人の勧めで漫画を読んで競技を知って熱中。それまでに経験した他競技にはなかった自身の活躍できる可能性を感じ、初めて本気で打ち込めるものを見つけたという。以降、2023年アジア大会に出場するなど日本の主力として活躍。壇上では「人の人生を変えるほど熱いスポーツを、漫画という大衆に伝わる形で描いていただけたことを、ありがたく思います。灼熱カバディは、私の原点であり、人生です」と熱のこもったメッセージを届けた。
イベントを通じ、多くの選手から感謝を伝えられるだけでなく、作品の感想や続編熱望の声を聞いた武蔵野さんは「本当に、ただただ感謝。漫画として面白くしようとするため、リアリティを欠く部分もある。(実際の競技者に)配慮はしているけど、嫌だと言われたら少しショック。でも、安心した。この漫画があって良かったと思ってくれる人が(競技者の世界に)こんなにいると分かって、とても嬉しかった」と喜んだ。
普及状況が激変、「地方とスポーツ初心者」を巻き込んだ漫画の力
カバディは、インド発祥のスポーツ。同国ではプロリーグが行われており、南アジアの隣国でも人気競技だ。日本で競技が行われるようになったのは、インド仏教とのつながりが強い大正大学に愛好会が発足した1989年頃。93年に部活動に昇格した同チームの現役学生とOBが日本の主軸を担う時代が長く続いた。日本は、2010年のアジア大会で銅メダルを獲得したことがあるが、国内における環境は、マイナー競技の域を出ない。翌11年に埼玉県の自由の森学園(中学・高校)に、日本で唯一となる高校部活動が誕生するなど、関東にいくつかの大学、社会人チームが誕生したが、普及活動をする余裕はなく、地方では時折カバディ教室を行う程度で競技の普及に苦しんでいた。
状況を大きく変えたのが「灼熱カバディ」の連載開始だった。北は北海道、南は鹿児島まで、若者が漫画を通して競技を知り、独自の練習で活動する素人の集団が続々と誕生した。既存チームの活動や体験会も参加者が増加。日本カバディ協会による講習や、チーム交流戦などを通じて本格的に競技に参加するチームや選手が増えた。全日本カバディ選手権は、連載開始前の14年は11チームの参加だったが、24年には全国から37チームが参加した。
かつては、進学先の部活動や愛好会で競技を知る選手が主だったが、いまや漫画をきっかけに競技を知った選手が大半となった。男子日本代表を率いる新田晃千監督は「漫画の影響で、スポーツ経験のない人でも競技を始めてくれるようになった。連載が始まったときは、第1話でカバディに興味を示さず、動画配信者を目指す主人公を見て不安になった(笑)。でも、選手個人にも、チームにも焦点を当て、競技の魅力も伝わる熱い内容にしてくれた。自分も連載が楽しみで最後まで作品を読みました」と現場への好影響を認め、感謝を示した。