イングランド2部に活躍の場を求める日本人選手が急増 「チャンピオンシップ」は理想の受け皿なのか
フィジカルバトルと洗練された戦術が混在
斉藤はベルギー、オランダでのプレーを経て、今シーズンからチャンピオンシップに。実際にプレーしてみると、考えていた以上に技術を要求されると語る 【Photo by MB Media/Getty Images】
「リーグ的にも決してレベルは低くないし、(昇格すれば)プレミアにもつながる。そういう部分で、自分はQPRを選ばせてもらった。他の日本人選手たちの入団経緯はあまり分からないですが、 自分の場合は、ごく普通に自分を見つけてくれてオファーをいただいた。チャンピオンシップで声をかけてくれたクラブがいくつかあったので、今、チャンピオンシップで日本人選手が注目されているように感じます」
実際にプレーしている選手は、チャンピオンシップにはどのような特徴があると考えているのか。「球際が激しく、スピーディーで、かつ荒っぽさもあるリーグに見えますが」と尋ねると、オランダ1部でのプレー経験もある斉藤は次のように説明した。
「外から見ていると、たしかにそう思います。球際はバッチバチだし、展開も速い。オランダリーグと比べてタフというイメージはすごくありますし、つなげる部分よりも、ボールをゴールに近づけるようなプレーをする。
ただ、外からは技術云々ではないように見えるかもしれないですが、ピッチに入ると全然そんなことはなくて。狭い局面でも技術は求められるし、自分らしいプレーも出せる。最初は間合いや速さに戸惑うことが多かったですが、慣れてくれば自分のプレーをもっと出せると思っています」
「フィジカルバトル」と「洗練されたモダン戦術」が混在しているとの説明は、ルートンでプレーする橋岡大樹からも聞くことができた。今シーズン、クラブの降格に伴い、プレミアリーグからチャンピオンシップに戦いの場を移した橋岡。イングランド2部の特徴について「ロングボールが多いですね。試合終盤には肉弾戦みたいになることが多い。この強度にしっかり慣れることが必要」と説明する。
ただ、チャンピオンシップで首位を走るリーズについては戦術的に洗練されているとし、「やっぱりうまい」と感心する。リーズを率いるダニエル・ファルケ監督はドイツ出身で、ドルトムントのBチームやボルシアMGを率いた経歴を持つ。橋岡は「チームとして決まり事が多く、出来上がっている」と続け、リーズのポゼッションサッカーを褒めていた。
2部といえども挑戦する価値が十二分にある
戦術のモダン化が進んでいるのは、国外から有能な指導者が流入したことが大きい。田中(左)が所属するリーズのドイツ人監督ファルケ(右)もその1人だ 【Photo by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images】
昨シーズンのチャンピオンシップでレスターを優勝に導いたエンツォ・マレスカ監督(現チェルシー)や、一昨シーズンにリーグを制したバーンリーの指揮官だったヴァンサン・コンパニ監督(現バイエルン)の存在はその好例だろう。いずれも、ポジショナルプレーを軸としたポゼッションサッカーで2部の頂点に立った。今シーズンに関しても、リーズやノリッジ、QPRのようにポゼッションスタイルでボール保持を重視するチームが増加傾向にある。また、世界最高峰のプレミアリーグから毎年3クラブが降格してくることも、チャンピオンシップのモダン化に拍車をかけている。
こうした背景のもと、日本人選手が数多く参入するようになった。もちろん、就労ビザの取得緩和という追い風もあるが、チャンピオンシップのモダン化に伴い、「勤勉で、アジリティが高い」(白石氏)日本人選手が高く評価されるようになった。
日本人選手の側からしても、イングランド2部で戦うメリットは小さくない。プレミアリーグのスカウトの目に留まりやすく、チャンピオンシップの3〜6位の4クラブが参戦できる「プレーオフ」を含めて、世界最高峰プレミアリーグへの切符をつかむチャンスが転がっている。
接触プレーの激しさや、試合展開の速さに適応する必要はあるが、チャンピオンシップは2部リーグといえども日本人選手が挑戦する価値が十二分にある。日本人選手の受け皿として、今後もイングランド2部リーグは機能していくに違いない。
(企画・編集/YOJI-GEN)