高校サッカー選手権、準々決勝の全試合をプレビュー 優勝候補本命vs.伏兵、プレミア対決も
全員の技術レベルが高い静岡学園。篠塚怜音(中央)は3試合連続ゴールを決めている 【写真は共同】
静岡学園vs.東福岡(4日14:10~)
共にチームスタイルははっきりしている。静岡学園は全員の技術レベルが高く、ドリブルとパスワークをかみ合わせてリズミカルに攻めてくる一方、東福岡は伝統の【4-3-3】システムで両ウイングの推進力を生かしてサイドから攻めてくる。準々決勝もこの持ち味を出し切れるかが大きなポイントとなる。
静岡学園の注目は3回戦の高川学園戦で今大会初スタメンを飾った川崎フロンターレ内定の右サイドバック・野田裕人だ。今季はけがを繰り返し、リーグ戦出場はわずか260分に留まったが、最終戦の神村学園戦で実戦復帰すると、川口修監督も「選手権にはコンディションを上げた状態で挑めるのではないか」と大きな期待を寄せていた。その言葉通り、2回戦の高知戦では、持ち前の推進力とクロスの精度、ビルドアップの要衝として安定感抜群のプレーを見せ、1アシストをマーク。高川学園戦では盤石のプレーでフル出場をした。
もちろん注目すべきは彼だけではない。岩田琉唯と関戸海凪のCBコンビはラインコントロール、ビルドアップ、そして対人も強い。安定した守備をベースに3試合連続ゴール中の2年生MF篠塚怜音をはじめ、原星也、天野太陽、佐々木雄基ら個人技を持ったアタッカーたちがゴールに迫る。3回戦ではスピードスターの加藤佑基が左MFでスタメン出場し、鮮やかなドリブルシュートを決めるなど、2列目も誰が出ても遜色がない。
対する東福岡は左の神渡寿一、右の稗田幹男の両ワイドから繰り出すサイド攻撃が武器。2回戦の正智深谷戦では左から神渡がカットインを仕掛け、ワンツーから右につなぎ、稗田が左足のコントロールショットで決勝弾をたたき出した。3回戦の阪南大高戦では神渡の左からのカットインからのパスを、180cmのセンターフォワードの伊波樹生が冷静に流し込んだ。そして今年の東福岡の最大の強みは攻撃ではなく守備にある。191cmのGK後藤洸太、185cmの大坪聖央と180cmの山禄涼平のCBコンビは、まさに中央に築く『赤い要塞』。空中戦や裏への対応も強く、シュートブロックの質も高い。3試合連続無失点のこの強固な中央の牙城に対し、静岡学園の多彩な2列目がどうこじ開けていくのか。野田と神渡のサイドのマッチアップも注目ポイントだ。
前橋育英vs.堀越(4日14:10~)
前橋育英の中心は石井陽と竹ノ谷優駕のダブルボランチ。1年の時から出番をつかんでいる石井は視野が広く正確なボールコントロールと展開力を持ち、竹ノ谷は大会前まで左サイドバックとして高いアップダウン能力と左足の正確なクロスが武器だったが、そのキックの精度とサッカーIQの高さからボランチにコンバート。石井と共に攻撃のリズムを作り出している。
前線で君臨する佐藤耕太とオノノジュ慶吏の2トップも今年の看板だ。182cmの佐藤は懐の深いボールキープからのポストプレーとシュートの正確性を持ち、オノノジュは天性のスピードとバネを生かして、昨年度の選手権同様に今大会もゴールを量産。昨年からレギュラーの左MF平林尊琉もかなりのタレントで、ダブルボランチを軸にそれぞれの個性を発揮する攻撃でここまで3試合連続複数ゴールを誇る。
一方で堀越は昨年度ベスト4のメンバーが多く残り、どこからでも崩せる力を持つ。目を引くのはJクラブのスカウトからも注目を浴びている2年生アタッカー・三鴨奏太。12月のプリンスリーグ関東参入戦では不在だったが、今大会はコンディションを上げており、初戦の津工業戦で1点、3回戦の松山北戦では4ゴールと大暴れをしている。瀬下琥太郎、渡辺冴空、森奏、竹内利樹人の4バックによる不動のDFラインも連係は抜群で、中でもCB森奏は状況によっては前線まで上がってきて、ストライカーさながらのパフォーマンスを見せる。この森奏の攻撃参加のタイミングが堀越の攻撃のポイントで、2回戦と3回戦で複数失点を喫している前橋育英守備陣が、攻撃でプラスワンをされた時にどう対応するのか。ここが勝負の分かれ目のひとつになりそうだ。