タイトルに無頓着な大谷翔平も頬を緩めた「50-50」 A.ロッド、ケン・グリフィーJr.も“異次元”強調
「指名打者だから、では説明がつかない領域」
マリナーズ時代のケン・グリフィーJr.とイチロー 【Photo by Otto Greule Jr/Getty Images】
ともに、大谷のパフォーマンスを異次元と捉え、1998年に42本塁打、46盗塁をマークしたロドリゲスは、「スピードとパワーの両立は本当に困難だ」と実体験をもとに話し始めた。
「パワーをつけようと体を大きくすれば、スピードが失われる。そのパターンが圧倒的に多いけど、どうバランスをとるか、常にジレンマがある。でも、翔平はそれを高いレベルで両立させてみせた」
彼自身、パワーに舵を切り、禁止薬物を使用するという愚まで犯した。両立どころか、どちらかをキープしようとするだけでもプレッシャーとなり、それが選手の判断を狂わせる。
グリフィーJr.はまず、「外野を守っていないことが、『50-50』を可能にしたんじゃないかな。やはり、外野を守ることは、足への負担が大きい」と指摘した。
彼自身、50本塁打以上を2度記録。1996年から2000年まで、5シーズンの年平均は49.8本。しかし、盗塁は99年の24盗塁が最高。スピードはリーグでも屈指だったが、センターを守り、さらに彼がマリナーズでプレーしていた時代の本拠地キングドームは人工芝だった。内野手だったロドリゲスとは視点が異なるが、とはいえ、大谷の「50-50」を否定しているわけではない。
「50本、50盗塁なんて、どちらか一方を達成することも難しい。指名打者だから、という見方はあるかもしれないが、それだけでは説明のつかない領域だ」
100年を超えるMLB史を紐解いても、“スーパースター”に分類される二人。その二人をもってしても、「50-50」は越えられなかった。大谷も胸を張りたくなるわけである。
次の「50-50」候補者は?
2024年のMVP投票でア・リーグ2位となったボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)。打率.332、211安打、109打点、31盗塁、OPS.977をマークした 【Photo by William Purnell/Icon Sportswire via Getty Images】
ではいつか、大谷に肩を並べる選手が現れるのか。現役なら、昨季32本塁打、31盗塁をマークしたボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)にそのポテンシャルがありそうだが、ショートという守備の負担も加味すると「40-40」が限界か。
もちろん、遠い将来、大谷のようなモンスターが現れることは否定できない。しかし、それでも「50-50」の壁は決して低くない。跳ね返されたそのとき、再び大谷の偉業に光が当たり、評価されるのかもしれない。
※連載「独自の言葉で振り返る、大谷翔平の2024年」は、今回をもちまして終了となります。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。