過去5大会の選手権を沸かせたあの逸材は、今どこに? 海外直行組、大学進学組、そして変わり種も…

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横浜FMの入団内定を解除してオランダへ

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慶応大を休学し、横浜FMの入団内定を解除する大きな決断を下して欧州へと渡る。国学院久我山で10番を背負った塩貝が、異例のキャリアを歩んでいる 【Photo by Rene Nijhuis/MB Media/Getty Images】

 ベスト4に青森山田や前橋育英といった優勝経験のあるチームが1つも残れなかった波乱の大会は、伏兵・岡山学芸館の初優勝で幕を閉じた。大会得点王に3ゴールで5人が並んだことも、抜きん出た存在が見当たらなかった今大会を象徴する。

 5人の得点王の中では、鋭い動き出しが光った岡山学芸館の今井拓人、決勝でも一度は同点に追いつくゴラッソを叩き込んだ東山の真田蓮司、そして前橋育英のFW山本颯太(現神奈川大)が大学へ進学。残る2人、日大藤沢の森重陽介、神村学園の福田師王が高卒でプロの道へと進んだ。

 Jリーグを経ずに直接ドイツへ渡った福田は、ブンデスリーガの名門ボルシアMGで今年1月にトップチーム昇格を果たしたが、2年目の24-25シーズンはBチームが主戦場。自慢のフィジカルを鍛え、トップチームでコンスタントに出番を掴みたい。一方、1メートル98センチの大型FW森重は、清水に加入するも出番に恵まれず、今年10月には規律違反を理由にクラブから契約解除を言い渡された。その後、11月にフリーでブラジル4部のシアノルテに加入。南米の地で再起を図る。

 大学進学組でも、国学院久我山で10番を背負った塩貝健人のキャリアはかなり異例だ。この選手権までは無名の存在だったためJクラブからオファーもなく、AO入試で慶応大へ進学。1年生で関東大学リーグ3部の得点王に輝くと、横浜F・マリノスから27年の入団内定を得る。大学2年になって間もない今年4月には、特別指定選手としてJ1初ゴールも奪った。

 しかし、8月には慶応大を休学、そして横浜FMの入団内定も解除して小川航基、佐野航大が所属するオランダのNECへ加入。ここまではジョーカー起用がメインだが、10月末のオランダカップ1回戦では武器であるスピードを活かして移籍後初ゴールを決めている。25年のU-20ワールドカップ出場をめざす世代のエースとして、今後の成長に期待したい。

 高卒でJリーグ入りした選手たちは、いずれもまだ周囲を納得させる結果を残せていない。高精度の左足で福田とともに神村学園の攻撃をけん引した大迫塁も、昨季はセレッソ大阪からの期限付き移籍でJ2のいわきFCでプレーしたが、思うように出番を増やせなかった。そして履正社のエースだった名願斗哉も、川崎フロンターレから期限付き移籍した昨季のJ2ベガルタ仙台でバックアッパーの域を出なかった。

難関国立大に合格した名古屋高の守護神

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怪我を抱えながら、愛知県有数の進学校・名古屋高を初出場でベスト8に導いた“傷だらけの守護神”小林は、難関国立大・広島大からのプロ入りを目指す 【写真は共同】

 選手たちの自主性を重んじる“ボトムアップ方式”のチーム作りで初のベスト4入りを果たした堀越、果敢な攻撃サッカーで旋風を巻き起こした近江など、伏兵の躍進が記憶に新しい前回大会だが、頂点に立ったのは優勝候補の筆頭格・青森山田。名将・黒田監督が去って初めて迎えた選手権だったが、2大会ぶり4度目の日本一に輝いている。

 長身センターバックの小泉佳絃、エースナンバーの10番を継承した技巧派MFの芝田玲がそろって明治大、キャプテンの山本虎が東洋大、そして得点王の米谷壮史が東海大と、青森山田の主力はいずれも卒業後、大学へ進学。堀越の右サイドで異彩を放った中村健太や昌平のボランチ・長準喜などは関東大学リーグの2部チームを進路に選んでいる。

 また、左サイドバックながら積極的な仕掛けで近江の攻撃サッカーをリードした金山耀太も、関西学院大へ。大学経由でプロ入りを目指すのは近年の傾向でもあるが、そんな中でもひと際目を引くのが、広島大教育学部に進学した名古屋高のGK小林航大だ。ビッグセーブ連発で2度のPK戦勝利をもたらし、初出場の愛知の進学校を8強に導いた守護神は、思わぬ快進撃で受験勉強の時間が削られるハンデを乗り越え、難関国立大の現役合格を勝ち取った。

 昨季、中国大学リーグ1部を26年ぶりに制し、今年度の総理大臣杯ではベスト16と近年の躍進が目覚ましい広島大では、さすがに1年生からコンスタントに出場機会を得ることはできなかったが、文武両道を地で行く小林が目標とするのは、もちろん将来のプロ入りだ。

 一方、高卒ルーキーながら昨季の清水で試合に絡んだのが、優勝した90回大会以来、12年ぶりの4強入りを果たした名門・市立船橋のFW郡司璃来だ。初戦のハットトリックを含む5ゴールで米谷とともに大会得点王に輝いた世代屈指の点取り屋は、天皇杯1回戦で1試合・4ゴールと大爆発している。

 神村学園の先輩・福田と同様、Jクラブを経由せずに海を渡った吉永夢希は、ベルギーの強豪ヘンクのセカンドチーム、ヨングヘンクで研鑽を積む。良質なクロスを武器に、すでに左サイドバックの定位置を確保。今季は2つのゴールも奪っている。トップチーム昇格も近いかもしれない。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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