伏見工業の赤黒ジャージーが、懐かしくも新しい「京都工学院」として再び花園に!【第104回全国高校ラグビー大会・注目校紹介】
現在、部員数は公立高校としては多い106名、ほとんどが京都市出身者だという 【写真/斉藤健仁】
9年ぶりにライバルを下し、現校名では初の「花園」へ
1984年から85年に放送されたドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとなったことで全国的に知られる京都・伏見工業を前身に持つのが京都市立京都工学院だ。京都府予選決勝では、8年連続でライバル・京都成章に敗れていたが、今年は10-8で制して優勝。9大会ぶり21回目の「花園」こと全国高校ラグビー大会の切符を手にした。
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OBの大島淳史監督が、就任6年目で悲願達成 【写真/斉藤健仁】
そう話すのは2000年度、3度目の花園優勝時のキャプテンでFLだった大島淳史監督だ。「タイトな試合になると生徒には言っていました。後半最後は、成章さんの意地やった」という猛攻をしのぎきっての歓喜だった。
5月に京都成章に59-8で快勝していたが、今季のチームの転機は2月にあった。近畿大会の準々決勝で京都成章に22-27で敗れて選抜大会の出場を逃していたのだ。「勝てる試合でした。僕のミスだった。自分の目線が低かった。長年、越えなければいけない壁である京都成章を意識し過ぎていた。京都成章はこうしてくるから、こうしないと勝てないと指導していた。そういった僕のマインド、指導が生徒を萎縮させて、生徒の力を引き出せていなかった」と猛省した。
強豪校の胸を借りて、「京都で勝つ」から「全国で勝つ」を目標に
エースでキャプテンを務める高校日本代表候補FB広川陽翔(3年)を筆頭に、U-17日本代表のSO杉山祐太朗、CTB林宙(ともに2年)らのBK陣にタレントがおり、伝統の展開ラグビーができる素地はもともとあった。
だが2月の敗戦から、全国で勝てるチームを目指してフィジカルトレーニングはもちろん、タックル、接点、さらにU-17日本代表のPR春名倖志郎(2年)もおり、スクラム、ラインアウトといったセットプレーにもこだわり続けた。「接点やタックルが重要ということは生徒も理解してくれましたし、FWを鍛え上げました(大島監督)」。選手によればディフェンス練習が全体の7割ほどを占めていたという。また3月からはほぼ毎週末、全国の強豪校や大学の胸を借りた。今大会にも出場する大阪桐蔭(大阪第1)、桐蔭学園(神奈川)、石見智翠館(島根)、東海大大阪仰星(大阪第3)、中部大春日丘(愛知)……と全国の強豪との対戦を繰り返した。実際に取材日の前の週末は光泉カトリック(滋賀)と練習試合をし、2日ほど前にも大阪桐蔭に出稽古に行っていた。
練習試合では、大阪桐蔭・桐蔭学園にこそ勝つことはできなかったが、他のチームには勝利したり、負けたとしても内容的に互角だったりなど大きな成長を遂げていた。「本気で全国で勝っていくために、花園で優勝するために、強豪校と対戦して自分たちを高めることにフォーカスできた。大崩れするチームではなくなっていたし、(京都成章との)決勝戦でも要所では勝っていた」と指揮官は語気を強めた。京都でライバルに勝つという心構えから、全国で勝つ・日本一になるというマインドセットの変化が大きかったというわけだ。キャプテンの広川は「僕らの代は一番弱いと言われていたので、1年生のときは花園に出られるとは正直思っていなかったです。この1年で、監督らコーチ陣の指導もあり一気に伸びましたね」と胸を張った。
練習前に気合いを入れる選手たち 【写真/斉藤健仁】