伏見工業の赤黒ジャージーが、懐かしくも新しい「京都工学院」として再び花園に!【第104回全国高校ラグビー大会・注目校紹介】
OB会とも協力し、強化・サポート体制を構築
人工芝のグラウンド、ラックが15台もある大きなウェイトトレーニング場など施設面では私立の強豪校と比べてもまったく遜色ないものになった。ただ、大島監督は「当時は学校が新しくなり、校名だけでなくコーチ陣も変わったばかりで、いろいろと重なって大変でしたね」と正直に吐露する。その後、大島監督は京都市やOB会のサポートを受けながら、ラグビー面はもちろんのこと、強化体制、環境整備を一歩ずつ進めていった。
広々とした自慢のトレーニング施設には、ラックが15台も揃う 【写真/斉藤健仁】
さらにOB会とともに3年前から「FOXプロジェクト」も立ち上げた。狐は伏見工業時代から続くエンブレムであり、「FOX」はOBチームの名だ。OBの三宅敬さん(元日本代表/埼玉パナソニックワイルドナイツ)を中心に、現役引退したばかりの内田啓介さん(元日本代表/埼玉パナソニックワイルドナイツ)、SO松田力也選手(日本代表/トヨタヴェルブリッツ)といったOBたちに指導を受ける体制も整えた。
ほかにも京都で小学校の教諭を務めている安岡忠和コーチ(元福岡サニックスブルース)にスポットでスクラムを指導してもらい、工業科の教諭として赴任してきた吉永怜史先生(日本文理大ラグビー部出身)もコーチングスタッフに招き入れた。S&Cトレーナーはもちろんのこと、京都市内のドクター、最寄り駅の整形外科に勤めるトレーナー2人などもチームをサポートしてくれている。
大島監督の下には、中学教諭時代のつながりで、京都の有望な選手が集まるようにもなっていた。現在も106名の部員のうち大半は京都市出身だという。ハード面、ソフト面が整備されたこともあり、2022年には春の選抜大会に出場。今年、打倒・京都成章を成し遂げるまで復活したというわけだ。
受け継ぐ「信は力なり」と赤黒ジャージーで、ノーシードから目指す栄冠
伏見工業時代に山口監督が掲げた「信は力なり」というスローガンは、京都工学院になっても不変である。副キャプテンのCTB木村航(3年)は「出られへん仲間の分まで、出ている選手が一生懸命頑張る。そして出られへん仲間も出ている選手に向かって精一杯応援するのが『信は力なり』だと思います」。自分たちがやってきたことはもちろん、一緒に戦ってきた仲間を信じることが勝利につながるということはチームの信念となっている。またチームには「シンチカタックル」という言葉も定着している。大島監督は、かつて伏見工業が花園で優勝したときの映像をよく生徒に見せている。「仲間のために、体を張ったタックルのことをそう呼んでいます」とSO杉山が言うように、ディフェンス、タックルもチームの伝統であり、大きな拠りどころとなっている。
練習で鍛えてきた接点・タックル。スローガンからとった「シンチカタックル」はチームの伝統 【写真/斉藤健仁】
またOBである元日本代表の名選手になぞらえて「平尾誠二2世」との呼び声が高い2年生のSO杉山は「一戦一戦大切にして頑張っていきたい。個人としてはSOなので、ゲームコントロールしてチームの勝利に貢献したい」と前を向いた。
伝統校を率いる写真左から木村航(副キャプテン)・広川陽翔(キャプテン)・羽田匠之介(副キャプテン)。 【写真/斉藤健仁】
京都工学院はノーシード校ながら台風の目となるだけのポテンシャルを十分に持ったチームである。校名は変わったものの、赤黒ジャージーが花園で旋風を巻き起こし、かつての輝きを取り戻すことができるか。
U-17日本代表の2年生トリオ。写真左からPR春名倖志郎・SO杉山祐太朗・CTB林宙 【写真/斉藤健仁】