ラグビーのスカウトはどこを見るのか? リーグワン王者が重視するもの

スポーツナビ

BL東京が求める人材とは?

東芝ブレイブルーパス東京の眞野泰地はチームにとって欠かせない存在に 【写真:アフロ】

――現在、藤井さんは採用を担当されていますが、BL東京として重要にしていることはありますか?

 絶対に欠かせないのはこのチームに合うかどうかです。ラグビーが上手なだけの選手を獲得するよりも、真面目で向上心を持って、チームのためにタフに戦う選手を求めています。

 チームとして「接点無双」を掲げていますし、コンタクトを嫌がらずに痛いプレーができる選手に来てもらいたいと思っています。

――サイズよりも、そうした資質を大切にしているということでしょうか?

 今のチームではFL佐々木剛選手が身長180センチとFWとしては大きくありませんが、スピードがあってコンタクトから逃げない「東芝らしい」選手だと思います。
 CTB眞野泰地選手も身長172センチですが、コンタクトの瞬間まで自分の良い姿勢を保ち、相手の弱い部分を見極めているのでチームに欠かせない存在になっています。

 試合や練習、トレーニングはつらいこともあるので、彼らのようにハートも闘争心もあって周囲から信頼される選手がチームには必要です。

――BL東京では全国的に無名だった大野均さんが日本代表98キャップを獲得。ハンマー投げの大学王者だったPR知念雄選手(現・三菱重工相模原ダイナボアーズ)も未経験から日本代表(6キャップ)となりました。

 昔から育てる文化があることがチームの伝統なので、無名でも、他競技からの転向でも可能性を感じれば今後もスカウトすることはあると思います。
 現在もラグビー界では珍しいですが、防衛大学校出身のWTB岩渕誠選手がチャレンジしています。

情報やデータがある時代に、若い選手に望むこと

全国高校ラグビー大会は27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕した 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――日本は少子化問題が進み、経済的にも厳しい状況が続いていますが、スポーツ界では若い世代の活躍が目立っています。その理由についてはどのようにお考えでしょうか?

 スポーツについてのさまざまな知識を取り入れられる時代になっていると感じます。トレーニングや栄養についての知識やデータが広く知られるようになって、昔のように「とにかく量を食べろ!」「とにかく走れ!」という時代から大きく変わりました。

 情報があることでトレーニングが効率的になり、精度も高くなっています。また、休息の重要性が伝わっていることは成長期の選手にとって大切なことだと思います。

――インターネットや配信を含めると各競技の世界トップの映像も見られるようになっていますね。

 映像の進化も成長に役立っていると思います。ただ、簡単に情報を得るためにショートのプレー動画ばかり見ることについては気をつけないといけません。世界の一流選手は派手なプレーばかりしているように見えても、必ず基礎がしっかりしているので。
 情報が多い時代だからこそ、表面だけを真似せずに競技の本質にフォーカスしてほしいと考えています。

――27日に全国高校ラグビー大会が開幕します。将来、リーグワン入りを目指す選手たちにメッセージをお願いします。(取材日:12月17日)

 一生懸命、勝利を目指して全力を尽くしてくれると思いますが、その中でも1試合ごとに課題を持って、そこをクリアできるようにしてほしいです。自分の理想をイメージして、試合ごと、練習ごとに成長できるように。

 自分と向き合って、課題を意識していることはその姿から伝わってくるので、花園という特別な場所でさらに成長する姿を楽しみにしています。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

藤井淳/JunFujii

【写真:アフロスポーツ】

 1982年8月10日生まれ。身長170センチ、体重77キロ。愛知県出身。西陵商高‐明治大‐東芝ブレイブルーパス。

 西陵商高時代に全国大会に出場、明治大では抜群のスピードを生かして活躍した。東芝ブレイブルーパスでは強気のリードでFWをまとめ、ディフェンス面も向上。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した。2019年に現役引退。

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