たった5人で挑むウインターカップ 和歌山南陵バスケ部、最後の挑戦

勝利へのカギを握るのはシュート力

 205センチのイディを除けば、チームで最もサイズのある選手は180センチの紺野。リバウンドで後手に回ることを考えると、インターハイよりも高確率でシュートを沈めなければならない。

「シュートの部分はずっとフォーカスして練習してます」。指揮官が言うように、取材に訪れた日も1時間以上を3ポイント、中距離からのミドルシュート、そしてフリースローといったシュート練習に割いていた。

 アウトサイドシュートを得意とする藤山は、「やっぱり勝つためにはシュート力が大事ですし、ウインターカップでは自分が打つ機会が多くなると思います。シューターとしての役割をしっかり果たしたいです」と意気込む。

シュート練習に余念がない藤山凌成 【(C) 小沼克年】

 今までベンチスタートだった中村も、ウインターカップでは試合開始からコートに立つ。「インターハイが終わってからはシュートの確率を上げることと、ターンオーバーを減らすことを意識して練習してきました。今までよりもリバウンドが取れなくなると思うので、 なおさらシュート確率は大事になってくると思います」と語り、本戦までスキルを磨き続ける。

 チームの得点源は背番号4を背負う二宮。和中コーチは「彼には2、30点くらいとってほしい」と大きな期待を寄せつつも、「フォーメーションを使いながら全員がシュートを決めなければ厳しい試合になる」と気を引き締めた。

たくさんの方々へ“恩返しの1勝”を誓う

 予期せぬ困難に直面しながらも、4年連続となるウインターカップに立てるところまできた。今こうして活動ができているのは、選手一人ひとりの強い気持ちや努力のみならず、たくさんの人々に支えられたからである。

 今年の春、活動費の支援を募った「クラウドファンディング」には1000人以上の支援者が集まった。このプロジェクトを立ち上げたのは酒井の母・恵さん。酒井は「僕のお母さんが始めたんです」と話し始め、「僕は『絶対に集まらないよ』って言ったんですけど、いろんなご縁のおかげでたくさんの支援をいただきました。本当に嬉しかったですし、感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝を述べた。

 当初50万円に設定した支援金の目標金額は、思わぬ反響を呼び750万円を超えた。支援金は県外のチームと5対5の実践練習を行う遠征費をはじめ、ケガの予防や体調管理のためのサプリメントなどにも使用させてもらっているという。和中コーチは感慨深げに口を開いた。

「お金の面で不安がなくなったことは本当にありがたいことでした。人数が少ないのでケガや体調にも、ものすごく気を遣わないといけない中で、体のケアをするための費用も補えるようになりました。そのおかげで6人全員が大きなケガをすることなく1年間やってこれました。最終的に全国の1000人近くの方々からご支援いただいて、ものすごく助けられましたし、本当に感謝しています。クラウドファンディングのコメント欄でもすごく温かいコメントをいただいたことで、子どもたちだけじゃなくて僕としても励みになりました。ウインターカップでは5人での最後の勇姿を見せて、皆さんの心に刺さるものを届けたいと思いますので、最後まで応援よろしくお願いします」

支援してくれた人たちに感謝の言葉を述べた二宮有志 【(C) 小沼克年】

 12月23日のウインターカップ1回戦の相手は県立長崎工業高校。コートに立つのは5人だが、応援席を見れば一番身近で支え続けてくれた両親がいる。ナイジェリアから見守るイディ、そして、自分たちをここまで連れてきてくれたたくさんの人たちと一緒に戦い、和歌山南陵は歴史に残る1勝をつかみにいく。

(構成=バスケットボールキング、文・取材=小沼克年)

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