たった5人で挑むウインターカップ 和歌山南陵バスケ部、最後の挑戦
左から中村允飛、酒井珀、二宮有志、藤山凌成。もう1人のメンバー、紺野翔太はこの日、大学受験のため不在だった 【(C) 小沼克年】
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“走らないバスケ”でつかんだ夏の全国1勝
現地観戦や映像などを通して試合を見た人々の中には、勇気や感動を覚えた人もいるだろう。チームを指揮する和中裕輔コーチは「夏の1勝」を振り返り、「走らないバスケットは全国でも通用するんだなと、改めて手応えを感じましたね」と口にする。
今夏、福岡で行われたインターハイ1回戦では“6人”で戦い、強豪・延岡学園に75-67で勝利を収めた 【(C) 佐々木啓次】
「今の3年生が2年生の頃から来年はどういったバスケットをしようか考えていました。 新チームがスタートした1月の時点で、彼らには『今年は6人で、走らないバスケットをする』と伝えました」
コートを駆け回り、激しくプレーし続けることはバスケットのセオリーでもある。本当は走りたい。けれど、6人で40分間を走り抜く、ましてや連戦となるトーナメントを勝ち進んでいけば、必ずどこかでスタミナが切れてしまう。走らないバスケットについて、キャプテンの二宮有志はこう説明する。
「やっぱり走り合ってしまうと体力的に苦しいです。僕たちはスローペースを徹底して、1本1本しっかりシュートを決めていくという戦い方です」
チームは12月23日に開幕する「SoftBank ウインターカップ 2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会」への出場を決めた。ウインターカップでもこの戦術を武器に戦うことは変わらない。だが、和歌山南陵はインターハイよりも一層厳しい状況での戦いを強いられることになる。
「ウインターカップは5人で出場します」
「進路の関係で急遽ナイジェリアに帰国することになりました。ウインターカップには間に合うように日本に戻ってくる予定でしたが、実際に現地へ行ってみないとどうなるかわからないという状況でもありました。彼が帰国したあともメッセージでやり取りをしていた中で、『先生、すみません。間に合いそうにないです』という連絡が入りました。私としては選手の将来に関わることなので仕方のないことだと捉えるようにしました」
選手たちにアドバイスを送る和中裕輔コーチ 【(C) 小沼克年】
現在の部員はチームの中心を担う二宮に加え、紺野翔太、藤山凌成、酒井珀、中村允飛の5人。選手たちも初めは戸惑いを隠せなかったが、今は前だけを見据えている。
「最初は辛かったですけど、もう決まったことですし、いつまでも引きずっていても仕方がないです。すぐに気持ちを切り替えて、残った5人で前を向いて練習しています」(二宮)
「本当に急だったので最初は理解が追いつかなかったです。でも、イディが戻ってこれないことは決まってしまったので、今は5人でどれだけ通用するのかが楽しみですね」(藤山)
「イディがいないのは残念ですけど、5人でも戦えるところを全国の皆さんに見せて1勝でも多く勝ちたいです」(中村)
思わぬ事態にもくじけず、高まる気持ちを抑えきれない様子だったのは酒井。彼はチームのムードーメーカーでもある。
「僕としてはすごく楽しみですし、早く試合がやりたいって気持ちです。イディがいなくなったときはショックが大きかったんですけど、やっぱりウインターカップは僕たちにとって高校生活最後の舞台なので、ずっと楽しみにしていました。イディがいてもいなくても試合に勝ちたい。その思いは変わらないので、今は本当にワクワクしてます」