早大フィギュア部門 千葉が会心の演技!笑顔あふれる滑りで自己ベスト大幅更新 全体3位でFSへ /全日本選手権女子SP

チーム・協会
全日本選手権 12月20日 東和薬品RACTABドーム
【早稲田スポーツ新聞会】記事 荘司紗奈、写真 吉本朱里

 国内最高峰の舞台である全日本選手権(全日本)がついに開幕。大会初日に行われた女子シングルショートプログラム(SP)には、前回大会銀メダルの千葉百音(木下アカデミー/人通1=宮城・東北高校)が登場した。今シーズンは、NHK杯でSPの自己ベスト更新、グランプリファイナル準優勝、など好成績を維持してきた。今大会でも勢いそのまま、パーフェクトな滑りで74・72点をたたき出し、自己ベストを大幅更新。70点越えの選手が6人いるハイレベルな試合で3位につけた。FSは22日に行われる。

笑顔で演じる千葉 【早稲田スポーツ新聞会】

 千葉の滑走順は最終グループの一人目。前のグループで好演技が続き、会場の熱気も最高潮を迎える中での演技となった。6分間練習を早めに切り上げた千葉は、濱田美栄コーチと手を取り合い、かけられる言葉に何度もうなづいていた。笑顔で送り出され、目が覚めるような鮮やかなピンク色の衣装を身にまとってリンク中央へ。落ち着いた様子に見えたが、スタートポジションを間違えるまさかのミスが発生。「自分で思ってたよりだいぶ緊張していたらしくて」と苦笑した。しかし、そのような動揺は全く感じさせず、笑顔で演技を開始した。

 片手をふわりと持ち上げて天を見上げるように滑り出す。曲は『Last Dance』。優雅なクラシック曲を得意としてきた千葉にとっては新境地となる、オシャレで明るいプログラムだ。冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループは、今朝の曲かけ練習で何度も跳んでいたジャンプ。練習時も安定感抜群だったが、本番は1・69点の出来栄え点を引き出す今日一番の完成度だった。続く2回転アクセルも滑らかに成功。氷上を歩くような仕草など、エレメンツの間にも工夫が凝らされている。

 後半は曲調ががらりと変わる。「ミラーボールに照らされているノリノリな情景が浮かび上がってくるような曲なので、自分の中の楽しい気持ちを爆発させて滑りたい」と語っていたが、今までは表情が固いことも多かった。自分自身も「ファイナルでちょっと固くなりすぎちゃった」と課題に挙げていた。しかし今回は課題を克服。弾けるような笑顔で、まさに楽しさが前面に出た演技だった。ステップシークエンスでは、首を振ってポニーテールを回す振り付けも見せ、観客を沸かせる。全身を使ったエネルギーがほとばしるような滑りに、客席からは大きな手拍子が送られた。表現力が光る演技の中でも、エレメンツは着実にこなしていき、スピンとステップはいずれもレベル4、3つのジャンプも全て加点を得た。レイバックスピンを終え、最後はビシッと指差しポーズ。会場はスタンディングオベーションとなり、大歓声が響いた。千葉自身も満足げな笑顔で演技を終えた。

『Last Dance』を披露した千葉 【早稲田スポーツ新聞会】

  2週間前のグランプリファイナルで初出場にして準優勝を果たし、大きな期待を背負っての本大会。昨年とは立ち位置も変わっていた。それでも千葉は「ファイナルまでの結果はあまり関係しない。過信せず、ほどよく信じて自分のできることを全部する」と冷静だった。連戦の疲れも懸念されたが、「パターンがだんだん掴めるようになってきた」とこちらも冷静に対応。しかし、そんな千葉でも平常心ではいられないのが全日本という大会。緊張からスタートポジションを間違えるというミスが出た。動揺はあったというが、その中でもしっかりと演技を実施できるだけの実力を今シーズンはつけてきた。結果的には先月のNHK杯で更新したばかりの自己ベストを約3点上回る74・72点をマークする会心の演技。国際スケート連盟非公認の点数とはなるもの、成長を見せつけた。

 笑顔が印象的だったSPの演技。自己ベストとなる74・72点をマークし、全体3位でFSに駒を進めた。決戦のFSが行われるのは22日。全日本女王の座をかけた戦いが決着を迎える。

結果

▽女子シングルSP

千葉百音
SP 3位 74・72点

コメント

千葉百音(人通1=宮城・東北)

※公式練習後の取材より

――滑ってみて

 滑りやすい感じでした。RACTABドームは前にも滑ったことがあるのですが、結構滑りやすい印象のリンクなので、このまましっかり調子を上げていければいいなと思います。

――試合が続いていますが、いかがですか

 結構きついかなと思っていたのですが。疲労は溜まっていく一方ではあるんですけど、精神的には意外とリズムよくいけているので、いい感じかなと思います。

――昨年とは違う立場で全日本を迎えていると思いますが

 そうですね、昨年は1カ月温めての全日本だったんですけど、今年はもうグランプリの延長線上で、あっという間に全日本みたいな感じなので。まだ言葉にはできない複雑な感じなのですが、昨年との違いはあると思うので、体の状態とかより気を使って、風邪などひかないようにというコンディションと、自分の競技力のコンディション、しっかりと両方いい状態で迎えられるように合わせていきたいです。

――滑ってみて氷の感触はどうですか

 結構いい感じでした。今日はちょっと寒かったのですが、競技前で冷やしているせいだと思われるので、明日以降どうなるかはわかりませんが良くなると思うので、それに合わせていけたらと思います。

――昨年との心境の変化は

 昨年は背水の陣で挑んだ、今年はファイナルまでの調子を維持という感じで臨もうと思います。

――ファイナルで2位に入ったことで、少しリードしているかたちになると思いますが、ご自身の立ち位置については

 そうですね。ファイナルまでは結構グランプリシリーズの予選がある中で勝ち進んできたという印象だったのですが、全日本選手権はまた違う試合というか。ファイナルまでの結果はあまり関係しないというか、みんながこの大一番に合わせてくるという試合だと思うので、そこで自分もファイナルで自信がついたところを過信せず、ほどよく信じて自分のできることを全部して、今できる一番良い演技ができるように頑張りたいです。

※SP後の取材より

――演技を振り返っていかがですか

 自分で思ってたよりだいぶ緊張していたらしくて、最初変なポジションについちゃったところで、やばいやばい、落ち着け落ち着けって感じで(笑)。結構心境としては焦ってるところからのスタートだったんですけど、ちゃんとノーミスで終えられたのが良かったかなと思います。

――その焦りというのはどういうところから

 いろんなこう不安が混じって緊張のような感じで、焦りというか。自分のいつもの流れが、他の緊張の波とかに流されそうな感じだったのが焦りになったかもしれないです。

――結果としては自己ベストでした

 自分では(3回転)ルッツ+(3回転)トーループ(のコンビネーションジャンプ)がちょっと怪しかったかなってところだったんですけど、そこも大丈夫でレベルも取れてたので、点数につながったのかなと思います。フリーではもっと1つ1つのジャンプをしっかりしっかりクリーンに跳びたいです。すごく緊張すると思うんですけど、その中でも自分の波を常に保って、波に乗って自分の演技ができればなと思います。

――グランプリファイナルから2週間でした

 今シーズンは2週間空きの試合が 4連続で、自分なりに、帰ってきて日本にいる時間が1週間で試合に行くっていうパターンがだんだん掴めるようになってきたのかなという印象です。なので、その流れで今回のどのくらいまで練習で自信がつく練習をしたらいいのかとかっていうのもだんだんわかるようになりました。 その辺りをしっかり確認するという感じでフリーも頑張りたいです。

――笑顔もみられました

 まあ、そうですね。結構緊張してるなって感じだったので、ファイナルでちょっと固くなりすぎちゃったってことを頭に焼き付けて、笑顔とか表現とか、のびのび楽しそうに踊ってるっていうところだけはしっかり表現したいなって思っていたので、そこがちゃんとできたので良かったと思います。

――今までスタートポジションを間違えたことはありますか

 初めてです(笑)。めっちゃ焦りました(笑)。

――明日はどう過ごしますか

 ファイナルの時は何もしなさすぎたので、今回はちょっと動きます。やっぱり年の瀬の大会、ちゃんと満足のいく試合で終えたいので、フリーに全集中しながら明日1日を過ごしたいです。

――オリンピックも近づいてきましたが、その中でなるべく波を作らずに試合を進めていくという長期的な視点で今考えていることはありますか

フィギュアスケートの競技は、本当にコンマ1秒のタイミングがずれただけで、転んだり降りたりする世界なので、自分の感覚に敏感になって、それに即座に対応できる実力が今以上に必要になってくると思います。本当に怪我とかも一瞬ですし、自分の今の立場がいつ落ちてもおかしくない、そういう接戦の今の日本女子の状況なので、常に抜かりなく演技することをまず第1目標にこれからも努力していきます。

――最初焦りがあった中でこれだけの演技ができたのは、これまでの大会で自信がついたのでしょうか

自分の中で毎試合毎試微妙に違う緊張の仕方をしてるので毎回ドキドキなんですけど、 その不安の乗り越え方がちょっとずつ分かってきたような、でもやっぱりわからないような、という中で耐えて演技してる感じです。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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