日本大学×SDGs硬式野球部・ 野球体験イベントのサポート

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野球の魅力を体現する伝道師として

【子どもたちふれあう有意義な一日】

2024年11月30日(土)、一般財団法人 世界少年野球推進財団(WCBF、理事長・王貞治氏)が主催する「WCBF親子野球体験教室」(後援:習志野市教育委員会)が、本学生産工学部実籾校舎内の第一球場で開催された。同イベントが本学で開催されるのは昨年に続き2度目で、ここをホームグラウンドとする日本大学野球部は、今年も運営協力としてイベントに参加。野球普及活動に取り組む一般社団法人 全日本女子野球連盟(WBFJ)と共に、野球への興味を喚起するプログラムを提供・支援し、子どもたちや保護者とふれあう有意義な一日を経験した。

(2024年11月取材)

親子で体験することで、野球を始めるきっかけになってほしい

本イベントは、野球未経験の未就学児や低学年の児童を対象とし、WCBFが4年以上力を入れて実施してきたもの。野球人口が減少する中、幼少時から野球をする楽しさに触れる機会をつくり、裾野を広げることを目的としている。「親子で体験することで、野球を始めるきっかけになってくれれば」と、WCBF開発推進部・沖津宏之課長は考える。

硬式野球部と自治体をつなげたイベントを実施したいというWCBFからの依頼を受けて始まったこの体験教室。今回も習志野市教育委員会の後援により、市内の小学校に通う野球未経験の小学2年生とその保護者(午前・午後各回30組)が一般開放した第一球場に招かれ、WBFJから講師として派遣された女子野球4選手とアシスタントを務める本学の1年生野球部員たちの指導の下、6つの体験プログラムを通して「野球」というスポーツに触れた。

この日は陽射しが温かな小春日和。受付で配布された揃いのTシャツを着た親子がグラウンドに集合し、午前の部の開校式が始まる。昨年も司会進行役を務めた岡村遥心学生コーチ(スポーツ科学部・3年)が、自らを「おかむー」と自己紹介したり、女子野球選手たちを休日の過ごし方と共に紹介するなど砕けたトークで参加者の気持ちを和ませつつ、スタッフの指示を聞くこと、体調管理や安全への配慮を伝えた。

「今日はみんなで一つ、『日本一』という目標を掲げたいと思います!」

押切康太郎選手(法学部・1年)の元気なかけ声が、抜けるような青空に響く。それを合図に、「WCBF親子野球体験教室」がスタートした。

【昨年の経験値がある岡村コーチがまとめ役を担うためか、初参加の1年生たちもその表情には幾分か余裕が見えた。】

【受付でお揃いのTシャツが配付される】

【開始前のトーク】

【『日本一』という目標を掲げたいと思います!】

全員で軽い準備体操の後、30組の親子は3チームに分かれ、体験プログラム(1)の「キャッチボール」「野球遊び(ストラックアウト)」「バッティング(ティーボール)」をローテーションしながら取り組んだ。

「キャッチボール」で中心となって指導を行ったのは、侍ジャパンBaseball5代表メンバーで、現在は茨城ゴールデンゴールズ女子チームに所属する六角彩子選手。まずは自分の真上にボールを投げてキャッチする練習を行った後、安全素材で作られたグローブと柔らかいボールを持って親子でのキャッチボールへ。六角選手から「正面を向いて投げるのではなく、体を利き手側に向けて投げる」「投げる際、脚を上げる」などのアドバイスを受けると、子どもたちの投げるボールが真っすぐ保護者の手元に届くようになった。驚くほどの変化に思わず保護者から「投げるのが上手になったね!」と感嘆の声が漏れた。

「野球遊び(ストラックアウト)」では、バックネット前に置かれた異なるタイプの的−9枚の的を抜くもの、的が穴になっていてホールインが難しいもの、ボールが的に吸着するものなど−を目掛けてボール投げを楽しんだ。なんとか的に当てようと慎重かつ独自のフォームで投げる子や、パワーで押し切る子もいる。子どもの個性が光る中、一人ひとりの良さに注目し、盛り上げるようにして学生たちが盛んに声をかけた。キャッチボールでの六角選手のアドバイスを思い出したように投げてストライクを重ねる子もおり、イベント開始からさほど時間が経っていないにも関わらず、子どもたちの野球への熱量は上がっていったようだ。

外野フェンス近くで行われた「バッティング(ティーボール)」でも、子どもたちの個性が発揮される。ティースタンドにのせたボールをとにかく遠くへ飛ばそうとバットを大振りする子、ティースタンドを叩いてボールが真下に落ちてしまう子、そもそもボールにバットを当てることに苦戦している子。上手くボールを打てた子どもには「そうそう!いいね!」と、コーチや学生たちのポジティブな声援が飛ぶ。また、バスケットの中のボールがなくなると、みんなで一斉に球拾いが始まる。先を争って1個でも多く拾おうとする子どもたち。球拾いも、ここでは遊びの1つだ。
その後は学生がティーバッティングのお手本を披露。1、2球目は凡打で笑いを誘いつつ、3球目は見事に柵越えの大飛球を放ち、歓声が上がる。子どもたちが2度目のバッティングを楽しんだ後は、続いて保護者もバットを握って挑戦。中には見事なスイングでフェンスオーバーの一打を放った父親もいて、喝采を浴びるその姿を、子どもが手を叩きながら誇らしげに見つめていた。

【キャッチボールの指導】

【野球遊び(ストラックアウト)】

【キャッチボール】

【バッティング(ティーボール)】

【バッティング(ティーボール)】

【チームに分かれて】

各チームが巡回して3つのプログラムを体験し終えたところで水分補給タイムを挟み、後半の体験プログラム(2)へ突入。前半よりさらに野球の醍醐味が感じられる「ピッチング見学・豪速球体験」「遠投チャレンジ」「ベースボール5」だ。

開校式では保護者と手をつないで少し不安そうだった子どもたちも、気づけばすでに子ども同士で集まり、学生に積極的に話しかけるなど距離感がグッと縮まっていた。

室内練習場での「ピッチング見学・豪速球体験」では、始めにキャッチャーの背面からネット越しにピッチャーの投球を見学。140km/hに迫る速球や鋭く曲がる変化球に、親子から「速い!」「曲がった!」と声が上がる。

続いて交代で保護者とともにバッターボックスに立ち、さらに間近で豪速球を体感。怖れを感じるほどの球速に、思わず保護者にしがみつく子も。「大谷選手って、これより30km/hも速いんだね……」という声もどこからか聞こえてくる。

興奮冷めやらぬまに、今度は子どもたちが「自分の投球スピードを計測する」体験に挑む。学生発案の新たな企画で、デジタル表示計を準備し、球速を目で見て分かるようにした。近距離からスピードガンに向かって力いっぱい投げるが、なかなか思うような球速が出ない。保護者も子どもたちも、学生の投げる140km/hの速さを改めて実感する。

計測が1巡したところで、学生が投げ方のコツを子どもたちに伝授。すると、2巡目の計測では1投目から10km/hもアップした61 km/hの表示に大喜びする男の子や、女の子でも48km/hを出す子が現れ、見守る保護者や学生たちも驚いた様子だった。

別のグループでは「遠投チャレンジ」に取り組んでいた。初めて握る硬式球に「重いなぁ」とつぶやく子もいる。また、最初に見本を見せた埼玉西武ライオンズ・レディースの村上奈名選手が65mを投げると、「すごい!」と子どもたちは目を丸くした。

岡村コーチがトークで盛り上げる中、ホームベース付近から投げる子どもたちの投球は、その多くが数m先までしか届かない。投げ終えて拍手を浴びる子どもたちは照れ笑いをしたり、悔しそうだったりとさまざまだが、岡村コーチが「もっと遠くに飛ばしたい人!」と呼びかけると、子どもたち一斉に「やりたい!」と手を挙げた。「正面の大きな木。次はあのてっぺんを狙って投げてみて」とコーチングしての再チャレンジでは、多くの子どもたちが自己記録を更新し、笑顔を見せた。

ライト側に移動したグループは、国際大会も行われているアーバンスポーツ「ベースボール5」を体験。同種目の日本代表でもある六角選手らが、自分でトスしたボールを手で打って一塁ベースへ走るという基本的なルールを紹介。その後、子どもチームと保護者チームに分かれて対戦。この日が初めての野球体験という子どもたちだが、ゴロの捕球から一塁への送球はすでにサマになっている。「三遊間に打つぞ!」と予告しながらライト方向へ打つ父親に、子どもたちが翻弄されると、「大人にだまされちゃだめだぞー」と声が飛び、ベースボール5の小さなダイヤモンドに笑いが起こった。

【ピッチング見学】

【投球スピードを計測】

【遠投チャレンジ】

【遠投チャレンジ】

【ベースボール5】

【ベースボール5】

プログラムの最後は、「シートノック見学」。ベンチで子どもたちが見守る中、アシスタントのお兄さんから野球選手に戻った学生たちが、内野で華麗なダブルプレーを披露し、外野からは見事なバックホームで魅せる。力強くスピード感あふれる“スーパープレー”に、ベンチから大きな拍手が湧き起こった。

「今日は楽しかったですか?」

閉校式での岡村コーチの問いかけに、口を揃えて「楽しかった!」と答える子どもたちの声は、心なしか開会式の時よりも大きく、元気よく聞こえた。全員での記念撮影を経て、イベントは大団円のうちに終了した。

球場出口では、学生たちが子どもの背丈に合わせた小さなアーチをつくり、開会式で昌和したイベントの合言葉「日本一!」と声かけしながら、ハイタッチでお見送り。この場所で見送ることも、学生たちが考えて昨年とは変えた点だという。90分間の短い交流ではあったが、子どもたちの顔には一様に、学生たちへの親愛と憧れが見て取れた。



午後から行われた体験教室も、午前同様のプログラムを実施。参加親子を迎える学生たちも子どもたちとのふれあいにいくらか慣れた様子で、積極的に子どもたちに声かけを行っていた。こちらも終始笑いが絶えない楽しい回となった。

家路に着く親子に今日の感想をたずねると、みなさん「参加して良かった」と好評価。「ボール投げが一番楽しかった」という男児の父親は、これまで子どもがボールに触れる機会がなかったことから参加しようと思ったと言い、「子どもの新たな可能性を見出すきっかけになる。継続して企画してほしい」とコメント。

また「元々、子どもが野球をやりたいと言っていた」という母親は、実際にプレーしている姿を見て、野球に向いているかもしれないと感じたという。「あと1年くらい様子を見て、地域のチームに入ってもよいかと考えています」

本イベントの取り組みは確実に、野球人口の裾野を広げるという目的に向かって結実しつつある。

【キャッチボール】

【バッティング(ティーボール)】

【ピッチング見学】

【シートノック見学】

【ハイタッチでお見送り】

【ハイタッチでお見送り】

昨年の経験を活かし さらに楽しい「体験」に

年続けて体験教室の進行役を務めた岡村コーチは、昨年の経験を踏まえて子どもとの接し方を工夫したと話す。「前回は子どもたちとのコミュニケーションを難しく考えすぎていました。昨年の経験から、このようにやれば笑ってくれるとか、こういうふうに伝えれば動いてくれるというのがわかっていたので、今年は気負わずにできました」

また、指導の仕方にも昨年の経験を活かしたという。プログラム(1)では、体験がより実感できるように、最初に子どもたちに自由にやらせ、その後に具体的な指導を行った上で再度やらせるようにし変えてみたが、子どもたちの反応に、手ごたえをつかんだという。

「今後もイベントに参加できるなら、進行役として話す時間を短縮して体験時間を増やしたり、保護者の参加をより促進する環境づくりに努めたい」と語った岡村コーチ。今年初めて参加した1年生たちについても「満点に近い」と言葉を継ぎ、前日までの合宿練習を終えた休日にも関わらず、楽しんでイベントに参加し、子どもたちと積極的にコミュニケーションしていた後輩たちを称賛していた。

岡村コーチとともにイベントを盛り上げた齋藤善マネージャー(スポーツ科学部・2年)は、2年目の今年は子どもたちへの接し方に課題をもって臨んだと語る。「質問を投げかけて返答してもらうようにするなど、こちらからすべて指示するのではなく、子どもたち自身に考えさせる機会をつくるようにしました」

また自身が担当した「ピッチング見学・豪速球体験」では、単に見るだけでなく、子どもたちが投げて球速を測るプログラムを採り入れた。「子どもたちが生き生きしていましたよね。130km/h台を実際に目で見る機会は多くないので、貴重な経験になったと思いますし、小学生が50km/h台を出したことや、お父さんが100km/h台を出して喜んでいる姿がとても印象に残っています」

さらにWCBFの沖津氏とはすでに来年のことについても話し合っているという齋藤マネージャー。「地元のスポーツ少年団とも連携して、野球の発展につながる活動をしていきたい」と抱負を語った。

【常に子どもの目線にまで下がり、笑顔で語りかけていた岡村コーチ。イベントの間中、子どもたちに囲まれ大人気だった。】

【時に子どもに寄り添い、時にユーモアたっぷりだった齋藤マネージャー。子ども自身に考えさせる声かけを心がけたとのこと。】

一方、講師を務めた女子野球の選手たちは、このイベントをどう感じたのか。

2回目の参加となったリーダー格の六角選手は「昨年も参加していた学生さんがいて、流れを理解してくれていたのでスムーズに運営でき、良い体験教室になったと思う」と評価する。それぞれの学生についても、「子どもたちと遊ぶのが上手。話す時も低く屈んで同じ目線で自然に接していたし、実際のプレーを見せることで憧れの存在としても良い影響を与えていたと思います。今後も、そうした姿勢を続けていき、子どもたちのめざす目標となってほしい」と、期待を口にした。

また、昨年に続いて参加した、本学国際関係学部の出身で共に埼玉西武ライオンズ・レディース所属の村上奈名選手と池内遥香選手は、「親子がいっしょに外で遊ぶ機会が少なくなっている中、“親子で参加できて楽しかった”という感想をもらえ、うれしかった」(村上選手)、「最初は引っ込み思案だった子どもたちが、徐々に自ら進んでプレーする姿を見ることができ、学生と子どもたちのいい関係性をつくれる野球っていいなと思いました」と、改めてスポーツと野球がつなぐリレーションシップを実感していた。

さらに今回初参加の數田彩乃選手(茨城ゴールデンゴールズ女子チーム所属)も、「六角選手のように自分からも発信していきたいし、教えるということを学んでいきたい」と話し、「野球をやりたいと思う子を1人でも増やしたい」と野球普及への意欲を口にした。

【講師を務めた女子野球の池内選手、數田選手、六角選手、村上選手(左から)】

地域、大学が連携し、成果を上げる関係性をつくりたい

2年目のイベントを終え、WCBF・沖津氏は、学生の成長を感じたという。

「子どもたちを誘導してくれた学生さんが、『怪我はないですか、痛いところがあったら言ってください』と、参加者の皆さんに声かけを行っていて、とても気を遣っているのをうれしく思ったと同時に、彼らにとっても勉強になっていると感じました。プログラムの進化もあり、現在の2年生が昨年やったことをきちんと1年生に引き継いでくれていたのも好印象。運営としては自主的に動いて準備もしていただけて非常にやりやすかったですね。安全面にもかなり配慮し、当方のリクエストに十分応えていただけていると満足しています。昨年も保護者の方から好評で、子どもに野球やらせてみたいという声がありましたが、今年も何人かはいるだろうと期待しています」

また、「今回のような野球教室を、参加人数を増やして開催したい。学生さんの間で引き継ぎが上手くいっているので、参加人数を増やしても安全面を担保できると感じています」と話す沖津氏は、野球部とのコラボで新たな展開も検討していると話す。

「習志野市の少年野球連盟と連携し、低学年の子どもたちの野球教室をやりたいと考えています。これには、今年経験を積んだ学生さんと、新しく参加する来年の1年生が一緒になって取り組んでもらいたいと思っており、より多くの方に参加してもらえるように盛り上がる教室にしたいですね」

さらに、「こうしたイベントを地域、大学にご協力いただいて継続していくことで、WCBFが運営から外れても、地域で成果を上げていけるようになることをめざしています」と、目標を語った。


午後の部の閉校式、最後に学生を代表して川原崎太一選手(経済学部・1年)が挨拶。

「昨日まで冬練でキツかったのですが、今日、子どもたちと一緒にプレーできて、野球の楽しさを改めて思い出すことができました。ありがとうございました」と感謝を語り、参加者からも大きな感謝の拍手が贈られた。

支援することで、受け取れるものがある。このふれあいは学生たちにも確実に、プラスの経験となっているはずだ。

【WCBF開発推進部・沖津宏之課長。期待以上の学生の活躍に、今後も新しい施策を計画中という。】

【記念撮影(午前の部)】

【記念撮影(午後の部)】

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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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