FA市場最大の目玉ソトに佐々木朗希の獲得なるか 今後のドジャースの戦力補強を占う

丹羽政善

MLB挑戦を表明した佐々木朗希(ロッテ) 【写真は共同】

 シアトルで生まれ育ち、マリナーズファンだったブレーク・スネル。昨年、フリーエージェント(以下FA)になったとき、マリナーズとの契約を模索したが、叶わなかった。マリナーズの先発陣はリーグ屈指の質と量を誇る。彼らが求めていたのは野手であり、スネルに払えるような資金力もなかった。

 ということで、昨年はそのこだわりが捨てきれず、代理人のギリギリまで焦らし、複数球団を競わせて最高額を引き出す戦略が失敗し、契約が3月までずれ込んだスネル。開幕に間に合わず、急仕上げが災いして最初の3ヶ月は故障で6試合しか先発できなかった。

 その反省もあってか、今年は早々に決断。契約総額は5年で1億8,200万ドル(契約ボーナス5,200万ドル、後払い分6,600万ドル含む)と満足のいく額だったはずだが、12月3日の会見では、「This is where you want to play(誰だって、ここでプレーしたい)」と話し、“I” ではなく、“You”を使ったことに、含みが感じられた。

 ややムラがあり、制球の悪さなども考えると過大評価とも映るが、これがいまのMLBの相場か。一部ファンからはその資金をテオスカー・ヘルナンデスとの再契約に使った方が良かったのでは? との指摘もあるが、ドジャースとしては1〜2番手を任せられる先発が必要だった。

来季も悩みの種は先発投手か

ブルペンで投球練習を行う大谷翔平(ドジャース) 【写真は共同】

 来年、今年は投手として投げられなかった大谷翔平、9月に右肘の捻挫で長期離脱したタイラー・グラスノー、屈腱炎と2度目のトミー・ジョン手術により今年を棒に振ったダスティン・メイ、やはり昨年終盤にトミー・ジョン手術を受けたトニー・ゴンソリンが揃って復帰予定。しかし、開幕に間に合うのか揃って不透明。そもそも1年通して投げられる保証もない。

 大谷に関してはデイブ・ロバーツ監督が4日、日本で行った会見で、「(開幕時点での)大谷の二刀流は正直ちょっと難しい」と明かした。決して左肩脱臼の手術の影響で“間に合わない”ということではなく、来年はイニング制限が設けられるので、プレーオフで登板することを想定すれば、開幕からは投げさせられない、ということ。今年、2度目のトミー・ジョン手術からの復帰を果たしたウォーカー・ビューラーのケースでも、今季初登板は5月だった。

 他の投手に関しても、多かれ少なかれ制限が適用される見込みで、となると、FAとなったビューラー、ジャック・フラーティの移籍が濃厚の中、来年の開幕ローテーションは山本由伸ぐらいしか計算できる投手がいないという状況だったのだ。ここに佐々木朗希が加わるかどうか不明だが、クレイトン・カーショーと再契約するにしても、どこまで計算できるかわからない。ボビー・ミラーはそもそも状態が不安定。それぞれの負担を軽くする上でも、ドジャースはスネルを必要としていたのである。

ドジャースへの入団会見を行うブレーク・スネル 【Wally Skalij/Los Angeles Times via Getty Images】

 ただ、ドジャースの投手陣は、リリーフも補強が必要。ダニエル・ハドソンが引退し、ブラスダー・グラテオルは右肩の手術で、復帰は来季後半。ジョー・ケリーはFAでの移籍が濃厚。ブレーク・トライネンとの再契約に成功したところで、まだ1〜2枚足りない。

 パドレスのタナー・スコット(過去2年は146試合に登板し、防御率2.04)、フィリーズのジェフ・ホフマン(過去2年は122試合に登板し、防御率2.28)、フィリーズのカルロス・エステベス(過去2年で57セーブ)らがFAで、彼らを狙う選択肢はあるが、本命は今季49セーブを挙げたライアン・ヘルズリー(カージナルス)をトレードで獲得することか。もちろん、ガーディアンズがエマニュエル・クレースを放出するというのなら、ドジャースは動くかもしれないが、年俸の低い契約があと2年も残っているので、相当な交換要員を要求される。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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