新大会方式のACLエリートで突破に必要な勝点は? 世界のサッカーに精通した2人が語る
ACLの中継でおなじみの水沼貴史氏(右)と野村明弘氏(左) 【(c) J.LEAGUE】
そんな疑問を持つサッカーファンも少なくないかもしれない。AFC(アジアサッカー連盟は今季、アジア王者を決める大会を再編。ACLはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)とAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)の2つの大会に分かれる形となった。
再編によって大会方式も大きく変わったが、特に大きな変化があったのが現在行われているリーグステージ。前回大会までのグループステージから名称以外にも大きく変化した。
あらためて新ACLの大会方式や楽しみ方を理解すべく、大会方式からここまでの日本勢の戦いぶり、リーグステージの予想突破ラインや後半戦の重要カードなどについて、ACL中継でもおなじみのコンビであり、世界のサッカーに精通する2人、サッカー解説者・指導者の水沼貴史氏とフリーアナウンサーの野村明弘氏に語り尽くしてもらった。
――AFCチャンピオンズエリートもMD4を終えてリーグステージを折り返しましたが、今大会は名称だけではなく大会方式も変わりました。
水沼 前回大会まではグループステージを4クラブで争い、6試合をホーム&アウェイで戦っていたのが、12クラブになってその中の8クラブと戦う。同国のクラブ同士は戦わない。東と西で8クラブずつが突破して、ラウンド16を戦うことになるんですよね。
野村 ラウンド16は同地区同士がホーム&アウェイを戦い、準々決勝以降は東と西をあわせてトーナメントを戦うんですよね。
ACLエリートに出場するJクラブの対戦日程 【(c) J.LEAGUE】
水沼 ないから難しいんですよね。勝点の計算が難しい。こことここが当たるけど、俺たちは当たらないし…みたいなことですよね。今までは『俺たちが勝てば向こうにはプラスにならない』などと考えられたけど、全然関係ないこともある。
野村 ただクラブ数が増えたのなら、12クラブ中6クラブが上がるということになりますが、今回は8クラブなのでこれまでの計算からはズレていきますよね。上がるクラブが今までは50%だったのが、今回は66%。
水沼 .6666666…ね(笑)
野村 はい(笑)。ただ、スイス方式は日本では実はおなじみなんですよ。大相撲がそうです。必ず戦わない人がいます」
水沼 同じ部屋の力士とは戦わない。
野村 ACLEのリーグステージも同国同士は戦わないですし、1回ずつしか対戦しない。ただ、ACLEはホームなのかアウェイなのかが一つ重要な要素ですよね。
水沼 そこは違うね。相撲は九州場所だったら九州場所、(両国)国技館だったら国技館だからね。
野村 集中開催ですね(笑)
水沼 名古屋場所は来年から(愛知県体育館から愛知国際アリーナに)場所が変わるんですよ。
――大相撲のお話はさておき(笑)、同じクラブとホーム&アウェイで戦わないということは前回大会までとの大きな変化ですよね。
野村 前回大会までは平等でしたよね。どのクラブとも必ずホーム&アウェイで戦う。
水沼 アウェイで対戦したくないクラブもあるじゃないですか。すごく熱狂的だったり。ここまでは韓国クラブとの対戦でそこまで『うわっ』という感じは受けないけど、中国はすごいですね。音ってすごく影響あるんですよね。サポーターの声は。でも1回ずつしか戦わないということは、たとえばアウェイでやられて『帰ってきたらやり返してやる』みたいなことにはならない。それも運。
――これまで4試合を戦い、リーグステージを折り返しましたが、ヴィッセル神戸が勝点10で首位、横浜F・マリノスが勝点7で3位、川崎フロンターレが勝点6で8位となっています。日本勢の戦いぶりをどうご覧になっていますか?
水沼 神戸はうまく戦っていると思います。ターンオーバーをしっかりしている。モチベーションを高めながら戦っているのがすごい。Jリーグの優勝争いもあるし、ACLEが入ってくるし、天皇杯もある。かなり過密日程だから選手を入れ替えなければいけないんだけど、それを吉田(孝行)監督はすごくうまくやっていると思います。ケガ人も出ながら、Jリーグでも大迫(勇也)や酒井高徳が出なかったりすることもあったけど、ACLEで結果を出している選手たちをうまく使いながら戦っている印象を受けます。昨年Jリーグで優勝して今年もいい形で来ているけど、2022年は残留争いをしていた。すごく苦しんだけど、それも経験になる。苦しい時期から自分たちが今いる立場とか今の状況を『ここにいたい』と、頂点を取って山の上にいてそこから落ちかけたとしても、『もう1回頂点を見ようよ』という気持ちは強いと思うんだよね。JリーグもACLEも天皇杯もどうなるかわからないけど、それだけの経験を3年で積んでいる雰囲気はあります。
これまでACLEに4試合出場した鍬先祐弥(くわさき ゆうや)は、Jリーグや天皇杯でも出場機会を増やしている 【(c) J.LEAGUE】
水沼 フィジカル的なところで川崎Fや横浜FMとは違う。ダイレクトにゴールに向かっていくし、当然強度も上がってきているし、ベースが違うチームと対戦したときに『ん?』ってなっちゃったんだろうね。横浜FMは過密日程で15連戦もありましたけど、うまくターンオーバーを使えていない印象もあります。神戸とは違って、後ろは替えるけど前は固定することが多いので、全体的な疲労感は否めない。川崎Fはなかなかうまくスタートが切れていないけど、難しい時期というか、鬼木(達)監督の今季限りでの退任が決定したり、今大会はそういうことも絡んできているという印象があります。