全世代を「侍ジャパン」のもとに、ひとつに――行動でけん引する監督・井端弘和が見据える、球界の未来

西尾典文

MLBで活躍する日本人選手とも接触

2023年に行われたWBCを制した日本代表。26年に開催予定の次回大会にも、大谷翔平(ドジャース)やダルビッシュ有(パドレス)ら、MLBで活躍する日本人選手は招集されるのだろうか 【写真は共同】

 3月に行われた強化試合の後にも選抜高校野球、4月に行われたU18侍ジャパン候補の強化合宿を視察し、寶馨(たから・かおる)日本高野連会長とも話をしたという。また、若い世代だけでなく、7月には渡米してメジャーでプレーする日本人選手とも接触するなど、実績のある選手ともコミュニケーションを図っている。

 井端は常々、単純に野球を見るのが好きだと話しているが、もちろんそれだけが原動力ではない。このような行動も日本の野球界全体を考えてのことであり、侍ジャパンの存在意義についても以前の取材で以下のように話している。

「管轄している組織は違いますけど、侍ジャパンという名前で代表チームを統一して、同じユニフォームで戦っているという意義は大きいと思いますね。自分たちがプロに入った時はまだ代表チームはアマチュアのものという意識でしたし、プロとアマチュアの混成チームとか色々あって、自分も呼んでもらった試合もありましたけど、そこに対する強いモチベーションみたいなのは正直なかったですね。そんな自分の若い時と比べると、今はどの年代も代表チームを意識してプレーしている選手が増えていると思いますし、それは凄く良いことですよね。

ただ1回選ばれて満足しているようじゃダメだというのは選手に対しては言っていますし、常に代表に呼ばれる選手というのを目指してもらいたいですよね。最近は高校時代や大学時代にその年代の侍ジャパンに選ばれたことのある選手も増えています。やっぱりそういう選手はトップチームに呼ばれた時にもすんなりチームに入りやすいですよね。それでWBCとかオリンピックに出て活躍できれば自信にもなるし、意識もまた一段階高くなると思います」

井端弘和 西尾典文著『日本野球の現在地、そして未来』(東京ニュース通信社)より引用

今年2月に沖縄・宜野座で行われた阪神のキャンプを視察し、岡田彰布前監督と談笑する井端弘和監督 【写真は共同】

 井端が各世代の侍ジャパンの強化合宿に足を運んでいるのも、こういった思いを伝えるという狙いもあり、カテゴリーによって組織が分かれている日本の野球界を侍ジャパンによって繋ぎたいという思いの表れではないだろうか。

 現在行われているプレミア12や、2026年に開催予定のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも、結果を出すために監督としてあらゆる手を尽くしているのはもちろんだが、井端が見据えているのは、そんな直近のことだけではないはずだ。そして、ただ考えを持っているだけではなく、自らが行動しているという点では、まさに日本野球界のリーダーにふさわしいと言えるだろう。

 先日、ドラフト会議が終わった時に直接話を聞いた時にも、プレミア12だけではなく来年以降に考えていることについて語ってくれた。前述したように、今年も2月に大学生4人をトップチームに招集し、自らあらゆる現場に顔を出すなどの行動を見せているが、来年についてはそれ以上のことも色々と準備しているとのことで、26年まで契約が延長されたことで中長期的な展望も立てやすくなっていることは間違いないだろう。プレミア12での結果はもちろんだが、それ以上に今後井端が侍ジャパンと日本の野球界をさらにけん引する動きを見せてくれることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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