B1初昇格・越谷が今季2勝目で得た収穫 “最強外国籍”への巧みな守備を見せた長崎戦

大島和人

勝って得られる自信と好循環

安齋HCの要求と選手のレベルにはまだギャップがある 【(C)B.LEAGUE】

 安齋HCはアシスタントコーチ時代も含めて宇都宮に長く関わってきた指導者だ。越谷とB1トップレベルのチームとはギャップもあるだろう。越谷は大まかに言うと「大ベテランと若手」の両極に選手が別れている。四家や星川賢信、カイ・ソットと言った面々は主力ながら22~23歳で、よくいえば伸びしろのある状況だ。

 安齋HCはブレックス時代から選手に対する「愛のある辛口コメント」が多い指揮官だが、6日の記者会見でもこう語っていた。

「昨日の練習もいつもと同じ感じだったので、また僕も厳しく言いました。でもそろそろ、僕も言うのが嫌になってきています。『もう俺に言わせないで』という、同じことをずっと言っています。僕の振る舞いを変えなければいけないのかなとも思いましたけど、そこを変えてしまうとレベルがどんどん落ちていくだけです」

 1試合の結果で過去の敗戦が消えるわけではないし、チームの課題も引き続いてある。ただ安齋HCは選手への要求レベルを下げず、選手たちはようやくそれに応えて守備の見事な遂行を見せた。越谷にとっては残り48試合に向けた「自信」「気付き」になり得る長崎戦だった。

 43歳らしからぬ貫録を漂わせる名将は言う。

「島根戦もそうですし、今日もそうですけど、勝って自信をつけていく部分はあります。僕に言われていることから逃げずに立ち向かっていくと、今日みたいなゲームになる。今までそこから逃げていこうみたいな姿勢が、僕にも見えていました。今日それが変わったことは、チームにとってすごくプラスです。僕も変えないところは変えず、要求するところは要求し続けるべきだなと分かりました」

 チームの伸びしろについてはこう口にしていた。

「ディフェンスの質もそうだし、遂行力はオフェンスもですけど、全ての部分であると思いますね。今朝の練習でフォーメーションの確認をさせたら、全くできてない選手もいたのが現状です。それを当たり前にできるのがプロで、そういう部分も含めてやっていけるようになれば、ゲームで結果が出て自信になって『もっとやらなければいけない』となっていきます」

不調のチームが平日に集めた大観衆

家族連れの多さも印象的だった 【(C)B.LEAGUE】

 越谷市立総合体育館には、平日開催にも関わらず3691名の観客が集まっていた。越谷駅からシャトルバスが用意されているとはいえ、決して集客が容易な立地ではない。そこまで1勝10敗だったチームが満員の観客を集め、さらに「ホームのいい雰囲気」を作れていたことは、試合内容以上の驚きだった。

 越谷の平均観客数は2021-22シーズンの952人から1645人、2267人と右肩上がりで増えている。コート内外の成長に新アリーナの整備が追いつかず、2026年に開幕する「Bプレミア」入りは逃した。資本政策、行政との調整はそれなりに高い壁だろう。とはいえ越谷はオフコートでも、エクスパンション(リーグ拡大)のタイミングで昇格を十分に狙えるポテンシャルを見せている。

 B1「2勝目」がこのクラブにとって大きな一歩になるかもしれない――。そんな期待を感じた、越谷の戦いだった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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