B1初昇格・越谷が今季2勝目で得た収穫 “最強外国籍”への巧みな守備を見せた長崎戦

大島和人

四家魁人(中央)は攻守で今季2勝目の立役者になった 【(C)B.LEAGUE】

 越谷アルファーズは「B1の壁」に苦しんでいる。11月6日の長崎ヴェルカ戦を前にした戦績は1勝10敗の東地区最下位。1試合平均得点、3ポイントシュート成功率、ターンオーバー(シュート以外のミス、ルール違反で相手に攻撃権が移ったプレー)といった攻撃のスタッツはB1全体(24チーム)でもっとも悪かった。

 越谷の安齋竜三ヘッドコーチ(HC)は2021-22シーズンに宇都宮ブレックスをB1制覇に導いた指揮官だ。そもそも昨季のB1昇格は十分に素晴らしい功績で、チーム初のB1となれば適応に時間がかかることも当然だ。とはいえここまでの戦績、データはチームとして危機感を持って然るべきだろう。

 そんなチームが長崎戦は守備面の強みを出しつつ、新加入の若手選手がステップアップを見せ、80-67の快勝を遂げている。10月19日の島根スサノオマジック戦(88◯81)に続く、今季2勝目だった。

長崎の狙いを封じた守備

越谷はマーク・スミス(写真左)に「1対1」で対応した 【(C)B.LEAGUE】

 今季の長崎はモーディ・マオール新HCのもと、新たなスタイルの習得に取り組んでいる。攻撃は「24秒」をしっかり使ってボールを動かし、守備を崩し切ってからシュートを放つマインドが強い。攻撃の中心はポイントガード(PG)のマーク・スミスだ。初来日でまだB1への適応はまだ不十分だが、個人の打開力や得点力を見る限りではD.J・ニュービル(宇都宮)やペリン・ビュフォード(信州ブレイブウォリアーズ/B2)と並ぶ「最強外国籍」の一人だろう。実際に出場9試合で、リーグ最多となる1試合平均21.7点を挙げている。

 越谷も6日の試合はスミスに32点を許した。ただ、それでも長崎を67点に封じたのだから、チームの対応としては大成功だった。

 越谷のPG四家魁人はこう振り返る。

「僕たちのビッグマンは大きいので、マーク・スミスみたいな(インサイドへの)ドライブの得意な選手はヘルプに寄らず、スイッチをして対応しました。あと(長崎の)ビッグマンはダイブが上手で、それをされたくなかった。ガード陣がビッグマンにダイブされないように抑えることも、HCのプランだったと思います」

 マーク・スミスは193センチ・102キロと屈強で、それでいてクイックネス、スキルもレベルが高い。相手がスモールだろうとビッグだろうと「1対1」ならば自力でズレを作り、フィニッシュに持ち込める。それを止めようと2人目の守備が寄れば他の誰かが必ずオープンになり、ボールを動かしやすい状況が生まれる。長崎はジャレル・ブラントリーのような機動力が高いビッグマンがいて、ゴール下に飛び込んで(ダイブして)パスを受ける形も成功しやすくなる。

 越谷はマーク・スミスに対応する選手を、可能な限り一人にとどめていた。また越谷は220センチのカイ・ソットを筆頭に、ゴール下の高さを強みにできる外国籍ビッグマンがいる。インサイドにドライブをさせても、上から封じる手があった。

 ただマーク・スミスに楽をさせていたわけではない。越谷の選手はかなりしつこく彼にまとわりつき、ストレスを掛けた。結果として一人に対して11回のファウルを犯し、10本のフリースローを許している。

 それでもボールムーブメントを封じ、チームのアシストを「10」にとどめた。長崎は馬場雄大の負傷欠場があったにせよ、攻撃のリズムを出せなかった。

ターンオーバーが減少した長崎戦

越谷は四家(写真左)以外も若手のプレータイムが多い 【(C)B.LEAGUE】

 越谷もPG松山駿が長崎戦は体調不良で欠場をしていた。試合のスタートはLJ・ピークをPGに起用したが、途中出場の四家魁人、橋本竜馬が素晴らしいプレーを見せた。

 安齋HCはこう振り返る。

「松山が体調不良で昨日の練習に来ていなかったので、メンバーから外しました。LJ(・ピーク)にPGをやってもらったのですが、この何試合か不甲斐ないゲームばかりで、その後に出てきたメンバーの『自分たちが奮起しなければいけない』というところが、いいように出た部分もあったかなと思います。今日は(四家)魁人と(橋本)竜馬の2人を後ろに回しましたけど、特にしっかりと役割を果たしてくれたというか、役割以上の活躍をしてくれた。そこはすごく大きかったです」

 越谷は特に第4クォーターの勝負どころを四家、橋本を併用するツーガードで乗り切った。指揮官はその意図をこう説明する。

「ゲームコントロールですね。長崎がトラップ(ハンドラーに複数が詰めてくる守備)に来ると思っていたので、ボールを運べる選手を増やしました。魁人は出だしからしっかり自分のプレーを出してくれていて、ああいう場面も落ち着いてボールハンドリングをしたり、相手が来たらパスをさばいたりできたところは本当に助かった部分です。本人も自信になったのかなと思います」

 四家はプロ2季目で、23歳の若手だ。福島南高を卒業後はアメリカのプレップスクールや大学でプレーし、昨季は宇都宮ブレックスに在籍していた。長崎戦は出場時間、得点ともキャリアハイで、21分19秒のプレータイムで12点を決めている。最後は5ファウルで退場になったが、守備面でもエナジーを出し「マーク・スミス封じ」に貢献していた。

 チームとして「10くらいにしたい」(安齋HC)というターゲットを置いていたターンオーバーの数も、長崎戦は「9」にとどまった。攻撃を落ち着かせる、ゲームをコントロールする部分ではっきり成果が出ていた。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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