球場が揺れたフリーマン劇的満塁弾の裏にある、WSをめぐる忌まわしき「事件の記憶」【WS第1戦】
拙攻続きの流れを変えた、大谷の一打
八回に二塁打を打ち、エラーの間に三塁まで進んだ大谷翔平(ドジャース)。この日の大谷は5打数1安打だった 【Photo by Mary DeCicco/MLB Photos via Getty Images】
ドジャースは五回裏、ウィル・スミスのライトへの犠牲フライで先制。しかし翌六回表、ジアンカルロ・スタントン(ヤンキース)に2ランを許し、逆転された。
その裏ドジャースは、先頭のトミー・エドマンが二塁打で出塁。ここで打席に入った大谷は、ボテボテの遊ゴロに凡退したが、二塁走者を進塁させた。しかし、1死三塁でムーキー・ベッツ、フリーマンが凡退。
翌七回は、無死一、二塁でキケ・ヘルナンデスがきっちりバントを決めて1死二、三塁としたものの、そこでも無得点。この日、フリーマンの本塁打が飛び出すまで、得点圏では7打数無安打と拙攻が続いていた。
ただ、そんな流れを変えたのが、大谷だった。八回、1死走者なしで打席に立つと、痛烈なラインドライブをライトへ。トップスピンがかかりすぎて本塁打にはならなかったが、フェンス直撃の二塁打。相手のミスもあって三塁まで進むと、ベッツの犠飛で同点のホームを踏んだ。
あの一打を振り返って大谷は、「いい打席だった。1死で三塁まで行けたのは大きかった」と話したが、実際、二塁までしか進めなかったら、どうなっていたか。延長十回に勝ち越しを許すと、再び嫌な雰囲気になったが、大谷が引き込んだ流れを手放したわけではなかった。
ギブソンの本塁打を目撃した記者の記憶
一塁が空いたことでベッツが歩かされ、フリーマンと勝負。そこで彼が、ギブソンが乗り移ったかのような一打を放ったのだった。
そのギブソンのエピソードについて、聞かれたフリーマンは苦笑いしながら言った。
「自分は、1試合プレーしたけどね」
大谷は「最高の勝ち方」と話した。
「最後、ギャビン(・ラックス)の四球からつなぐ形でいい勝ち方ができた。明日も、この流れを持っていきたい」
7戦4勝先勝のプレーオフで、連勝したチームがそのまま勝ったのは、91回中76回(83.5%)。逆転したケースが15回あるが、その内の10回はワールドシリーズ。
ところで、取材を終えて帰るとき、エレベーターでバリー・ブルームというベテラン記者と一緒になった。ブルーム記者は、ギブソンのサヨナラ本塁打も目撃している。
その彼が言った。
「そうだな、あのときも記者席が揺れた」
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