MLBポストシーズンレポート2024

「通算打率.125」大谷翔平を翻弄し続ける、ダルビッシュ有の高度な駆け引きと観察眼【地区シリーズ第2戦】

丹羽政善

10月5日に行われたドジャースとパドレスによる地区シリーズ第2戦、パドレス先発のダルビッシュ有は7回1失点に抑える快投を披露した 【写真は共同】

 すでにシャワーを浴び、上半身裸のままサンディエゴ遠征の荷物をカバンに詰めていた大谷翔平(ドジャース)は、淡々とその作業に没頭していた。

 9月16日(現地時間、以下同)以来、14試合ぶりの無安打。大谷に対する相手の徹底した対策が垣間見える中、どう頭の中を整理していたのだろう。

 勝負の世界にタラレバはない。

 しかし、ドジャースファンにしてみれば、あの初回のムーキー・ベッツの左翼への大きな当たりが、あと50センチ遠くへ飛んでいれば……。二回、1点を返してなおも1死一、二塁の場面でトミー・エドマンが放った一塁への痛烈なライナーが、あと1メートル、左右どちらかにずれていれば……。いずれもその後の展開に影響を与えていたのでは、と思わずにいられないのではないか。

 テオスカー・ヘルナンデス(ドジャース)は、曖昧に答えた。

「どうだろう。でも、我々に得点するチャンスがあったことは確かだ」

試合中断の真相と、両チームの因縁

初回、ドジャースのムーキー・ベッツが放ったホームラン性の打球を、パドレスのジュリクソン・プロファーがスーパーキャッチ。無失点で切り抜けた 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 ベッツの一打はその後も尾を引いた。フェンス際で本塁打をもぎ取ったジュリクソン・プロファー(パドレス)が二回、三回、客席に向かって跳ねた。それは挑発行為とも受け取れ、それが実際、七回のトラブルの引き金になった。

 プロファーは、ドジャースの七回の攻撃が始まる前、キャッチボールを終えたボールをスタンドに投げ入れた。あくまでもファンサービスである。

 ところが、そのボールが投げ返された。そのボールを拾ったプロファーは、もう一度客席にボールを投げている。しかし、今度はボールだけではなく、ゴミまで飛んできて、試合が中断される事態となった。

 因縁はしかし、これが初めてではない。4月14日に行われたパドレスとドジャースの試合では、プロファーに対する内角球を巡って、一悶着あった。マニー・マチャド(パドレス)ほどではないにしても、プロファーが打席に入るたびブーイングが飛ぶのはそのためだ。

 その七回が終わると、パドレスはベンチ内で、マチャドが音頭をとって円陣を組んだ。八回、パドレスは2本塁打で3点を追加し、九回にも2本塁打が飛び出すと、七回まで緊迫した展開だった試合が、一気に壊れた。

初回と九回に本塁打を放ったフェルナンド・タティスJr.(パドレス)。四回には好守でチームを盛り立てた 【Photo by Harry How/Getty Images】

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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