ロス五輪世代が直面する「歴史の力」が生み出す乾いた沼と、「やっぱりアジア」を踏みしめて

川端暁彦

世界制覇を目指す旅の過程で

先制ゴールに喜ぶU-19日本代表の選手たち 【撮影:佐藤博之】

「代表チームは常に時間がないもの」とかつて言っていたのは他ならぬ船越監督である。そもそも今回集まったメンバーで事前に遠征したり大会に出たりといった機会はないし、“ぶっつけ本番”の選手もいる。呼びたくても呼べない選手も多数いる上に、そもそも誰が来られるかもわからない。そういう中で集まった選手が“何とかする”のが代表チームである。

 逆に言えば、こうした大会を戦いながら連係を磨き、共通理解を育てていけるかがキーファクターだ。急造で周りと合わせる、周りを理解する、自分を理解してもらうといった“代表選手適性”のようなものを問われる場であり、磨かれる場でもある。

 いまA代表で戦っている選手たちも、その多くがこうした年代別日本代表の活動を通じ、問われて、試されて、磨かれてきた。その成果として「急造なのにめっちゃ連係する代表チーム」が生まれているわけだ。

【撮影:川端暁彦】

 AFC U20アジアカップ予選は中1日での3連戦となるため、「試合翌日=試合前日」となる。

 この1日を第1戦で45分以上試合に出た選手たちは休息に充て、それ以外の10人の選手だけが26日の練習場に姿を現した。

 攻守の意識付けとプレー感覚の調整、そして相互理解を少しでも進めつつ、27日に行われるミャンマーとの第2戦に向けた準備を整えていた。第1戦で出番のなかった選手たちにもチャンスがありそうだ。

「次のステージに行かなければいけないけれど、これも強化の一環」と指揮官が言うように、今回の予選は“ロス五輪世代”全体としての底上げを図っていく中に位置付けられた舞台でもある。思わぬ選手の爆発を含め、「俺もいるぞ」という姿が見られることを期待したい。

【提供:川端暁彦】

 ちなみに練習場の行き帰りには、「ヤンデックスGO」という配車アプリを利用している。ウズベキスタンやカザフスタン、そしてロシアでも使える旧ソ連圏をカバーする仕組みだ。

 近頃日本でも議論になっている、いわゆるライドシェアのシステムである。行く前に値段も通る道もわかるし、(たとえ言葉が通じなくても)いろいろ何とかなるようになっている。

“西側”ではUberが有名どころだが、中国や旧ソ連圏では使い物にならない。これが東南アジアや中東になるとまた別の枠組みがあるのだが、基本的にやっていることは同じ。GPSを使った“登録制の白タク”を配車するシステムである。

 世界を旅するのが本当に便利な時代になったとあらためて実感させられる。もちろん、キルギスに来た初日は居眠り運転をされて追突しかけたし、2日目に練習場へ向かう時は走りながら車が壊れ、先ほどは危険を顧みないアグレッシブな割り込みで存分に肝を冷やした。

 このあたりは、「やっぱりアジア」だったりもする。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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