“地方のJ2クラブ”が3年連続の試合を主催する意義…清水エスパルスと国立競技場
清水エスパルスの山室晋也代表取締役社長 【©S-PULSE】
そのクラブの名とは、清水エスパルス。ホームタウンを静岡県静岡市に構えており、Jリーグ発足時から加盟している“オリジナル10”の名門クラブだ。長い歴史のほとんどをJ1で過ごしてきたものの、直近の2シーズンはJ2に低迷している。
今シーズンのJリーグにおいて、国立競技場で開催される試合数は「13」。そのうち、関東圏外のクラブで“THE国立DAY”を主催するのは清水エスパルスとヴィッセル神戸のみ。首都圏のクラブと比較した時、立地の面では決して国立競技場との親和性が高いとは言えない。加えて、J2では清水エスパルスが唯一の“THE国立DAY”を主催するクラブだ。
そんな“地方のJ2クラブ”が、なぜ3年連続で国立競技場にてホームゲームを開催するに至ったのか。その意義を、クラブの山室晋也社長に伺った。
山室社長 かねてより国立競技場は、サッカーファンにとって特別な場所であったと認識しています。今から2年前の2022年は、東京オリンピックが終わった翌年だったこともあり、“新・国立競技場”に対する興味が高まっている時期でした。1度行ってみたいと思う人がたくさんいる中で、我々がクラブとして創設30周年の節目を迎えたことが、開催を検討するようになった理由の1つです。
少なからず全国にファン・サポーターが存在しているのであれば、創設30周年の”お祭り”は、静岡に住む方々はもちろんのこと、全国のファン・サポーターの方々にも駆けつけていただきやすい場所で実施したかった。クラブ内で“打って出よう”という機運が高まったことが、“新・国立競技場”で初めてのホームゲーム開催に至った背景です。
実際に試合を開催してみると、「国立競技場」を目当てとして来場される方の数はかなり多かったです。静岡県のクラブが国立競技場でホームゲームをやるということで、物珍しさのようなものもあったのかもしれません。正直、クラブとして相当数のプロモーションを打っていたこともあり、2022シーズンのJリーグにおける最多入場者数(※56,131名)を記録することができました。
Q:クラブとしても大成功だったということですよね。この経験を踏まえて挑んだ2年目はどうだったのでしょうか?
山室社長 クラブ内で「J2でも国立でやるのか」という話題が挙がりました。我々は1回きりで終わるのはもったいないと感じていましたし、このクラブを、全国的なブランドとしてさらに飛躍させていきたいという野望があります。
清水エスパルスというクラブは、”オリジナル10”のなかで唯一の市民クラブとしてJリーグに加盟したという歴史があります。遡ってみると、クラブのルーツでもある「清水FC」という、全国でも顕著な実績を残した(市民/少年サッカー)クラブの創設からちょうど55周年という記念すべき年だったこともあって、我々としてはその側面を強く発信したかった。清水サッカーの起源とも言えるクラブが、ここまで市民に愛されて育ってきた。クラブのルーツを知ってもらうため、新たな祭り(※S-PULSE SINCE 1968-SHIMIZU FC 55TH-というイベント)を国立で開催することにしました。
※川淵初代チェアマンや野々村現チェアマンも国立に来場し、記念トークショーを実施
Q:国立競技場の収容人数はおよそ6万8000席ですが、約2万人収容のアイスタと比較した時に、素直に3倍近い観客が観戦可能です。単純に、より多くの方々に試合を見ていただける環境の中で、清水エスパルスというクラブが持つ全国的なプレゼンスの高さを実感できたのですね。
山室社長 まさにその通りで、直近2年間の国立競技場でのホームゲームを経て、“オリジナル10”のクラブが持つブランド力の大きさを再認識できたことは大きかったです。日本を代表する、オリンピックを開催するスタジアムを埋めるような力があるクラブだと改めて実感することができました。